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#ファンタジー
柘榴とAI

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#ファンタジー
成瀬りん
19,622
「はわわ……」
夕飯の時間、食堂に集まったみんなを見て、セミラミスさんは目をぐるぐるさせ始めた。
確かに昼よりも人数は多いけど、そんなに……かなぁ。
「――というわけで、これからこのお屋敷に暮らすことになったセミラミスさんです。
みんな、仲良くしてあげてくださいね」
明るい雰囲気の中、しかしグリゼルダが注意を促す。
「皆で一斉に話し掛けると、すぐに死んでしまうからな。注意するんじゃぞ」
「あはは。グリゼルダ、さすがにすぐ死ぬだなんて――」
……と言いながらセミラミスさんを見ると、顔色も悪く、本当に死にそうになっていた。
なるほど、これはあまり無理させない方が良さそうだ……。
「……しんどそうじゃし、もう部屋に戻るかえ?」
「い、いえ……! せっかく食事を作って頂いたので……!」
グリゼルダの言葉に、セミラミスさんは何とか返事をしていた。
しかしそこでまた体力を使ってしまう始末。何だか悪循環になってしまっている状態だ。
「うーん……、無理はしないでくださいね。
ほら、自分の部屋で食べても良いわけですし」
「うぅ、でもそれは……」
「食事は苦しんでするものではないので、今日は部屋で食べることにしましょう?
マーガレットさん、セミラミスさんの部屋まで食事を運んでもらえる?」
「かしこまりました。
アイナ様とセミラミスさんは、先にお部屋へお戻りください」
「うん、ありがと。
――それじゃ、私たちは一旦失礼しますね」
「妾も行った方が良いかの?」
「いえいえ。グリゼルダも最近はお屋敷まで来ないですし、今日はみんなとお喋りをしていってください」
「ふむ、それではお言葉に甘えるとするかのう。
旅先での土産話もたくさんあるでな」
「ママ、またあとでなのー。
おばちゃんから聞いたお話、あとで私がしてあげるからね!」
「うん、よろしくね♪
――それじゃセミラミスさん、行きましょうか」
「うぅ……、すいません……」
……私の仲間の中でも、セミラミスさんは戦闘力がかなり高い方だと思う。
それなのにこんな弱点があるとは……。戦闘力と強さって、必ずしも比例しないものなんだなぁ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
セミラミスさんの部屋に行くと、しばらくしてからメイドさんたちが食事を運んできてくれた。
どうやら給仕をされるのも慣れていないらしく、メイドさんたちが部屋から出て行くと、ようやく人心地ついたように表情を崩した。
「うぅ……、すいません……」
「それ、さっきも聞きましたから!
人には得手不得手があるものですし、あまり気にしないでください」
「ありがとうございます……。
せっかく美味しいお料理を作ってもらったのに、申し訳ないです……。
メイドの方々も、アイナ様も、美味しいものを作ることができて、本当に凄いと思います。……本当、ここは素敵な場所です……」
「そうですか?
ちなみに今までって、食事はどうしていたんです?」
「え? ……木の実とか、草とかを食べてましたけど……」
「草食系なんですね」
……これは恋愛云々の話ではなくて、文字通り、食事の話だ。
セミラミスさんは強いんだから、もっと肉とか……食べなかったのかな。
「あはは……。一人暮らしで、全部を自分で調達しなければいけなかったので……。
あの、動物を殺すのも……、ちょっと、苦手なので……」
「……もしかして、お料理に肉が入っていたらダメだったりします?」
「いえ、食べる分には大丈夫です。
何て言うんでしょう。……私が殺したくないだけ、と言いますか……」
……まぁ、その気持ち、線引きは分かる。
例えばお店に出回る肉だって、消費者の見えないところで精肉されているのだ。
肉は好きだけど、自分で動物を殺めることが出来ない。……そんな人は、たくさんいるんじゃないかな?
「……何だかすいません、つまらない話ばかりで……」
「いえいえ、セミラミスさんのことが分かって嬉しいですよ。
ちなみに、ずっとお一人で暮らしていたんですか?」
「はい……。
長生きしているだけなので、あまり面白い話もできなくて……」
「ああ、もう。気にしないでくださいよ。
私だって、昔の話はできないんですから」
「え……?」
「いや、アドラルーン様に会う前の話なんですけどね。
さすがにその頃の話は、ここではできないなーって。
でもそのあと、仲間と出会って……もう一年は経ちますけど、お話することはたくさんできましたよ」
「……良い、ですね……」
「だから!
今までがどうあれ、セミラミスさんだって、一年もあればお話することがいろいろできると思いますよ。
私だってずっと楽しいことばかりではありませんでしたが、それでも楽しいことはあったんです。
だから、大丈夫です。これから楽しいこと、面白いことをやっていきましょう?」
「は、はい……!
ありがとうございます。……アイナ様って、私の先生みたいです……!」
「逆ですけどね!?」
「そ、そうでした……」
……しかしそうも言いながら、セミラミスさんの顔にはようやく笑みが生まれてきていた。
こういう積み重ねが、あとになって『楽しかった日々』になっていくのだろう。
今までがどうあれ、私の仲間になったのなら、これからはそんな日々を歩んでいってもらいたいものだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――はぁ、美味しかったです……。
やっぱりお料理っていうのは良いものですね……」
「そうですね。木の実とか、そのままでも美味しいものはありますけど……。
でもやっぱり、素材そのままよりも美味しくなりますからね」
「……私もお料理、勉強しようかなぁ……。
どうも今までは研究一辺倒でして……」
「お料理は良いですよ! 私も、さすがにうちのメイドさんたちには敵いませんけどね。
でも、錬金術を使えばある程度までは戦えるかな?」
「れ、錬金術って……、万能なんですね……」
「私の場合、普通の錬金術とは違いますから」
「ふふっ、そうですよね……。
でも、既存のスキルやユニークスキルでここまで上手く噛みあうだなんて……これはもう、奇跡としか言えません……!」
「『収納スキル拡張』以外は、アドラルーン様が選んでくれたんですよね。
神様からもらったものだから、確かに奇跡とは言えちゃいますか」
「羨ましいです……。
私もいつか、絶対神アドラルーンにお会いしたいものです……」
「会おうと思って、会えるものなんですか?
私の場合、死に掛けたときに偶然会ったようなものなんですけど」
……実際、会ったのはトラックに|撥《は》ねられて、前世で死んだあとだったからね。
普通に会えないとなれば、あとは死んだあとに会える……くらいしか想像ができない。
「竜王様の話によれば……、『神託の迷宮』で、お声を聞くことはできる……らしいんです。
ただ、竜王様たちでも長らく出来ていないらしくて……」
「そうなんですか……。
……あ。もしかして、だからダンジョンの名前に『神託』が付いているんですか?」
「はい、神託の内容は……少しくらいなら、伝説として残されているかもしれません。
でも、その話さえ間違った伝わり方をしている可能性があって……」
「なるほどー……。
私も会えるものなら、もう一度会ってみたいですね。この世界ではいろいろあったけど、今は何とか暮らせていますし」
「アイナ様は、会って……どうするんですか?」
「え? ……そうですね、今まであったことを話して、あとは……お礼を言うくらいかな」
「お礼?」
「はい。やっぱり私、この世界に来て良かったと思っているんですよ。
半年前くらいはそんな状態じゃなかったですけど、今はその山も越えていますし……。
……正直、あのときは少し恨んでいましたけどね」
今まで、絶対に口にしなかった言葉。
逃亡生活中は気持ちのやり場がどこにもなかったから、ついついアドラルーン様のことを悪く思ったりもしたものだ。
……人間って、弱いもの。今から考えれば、とてもバチ当たりだったとは思うけど……。
「そうですか……。アイナさんは欲が無い人……、なんですね」
「もう十分すぎるほど、いろいろ貰ってますから」
「……そう、ですか?」
スキルもユニークスキルも。
そもそもこの世界に転生させたくれたことだって。
そしてたくさんの仲間に出会わせてくれたことだって。
……思い返せば、私は本当にたくさんのものを貰っている。
今ではもう当たり前のことになってしまっているけど、やっぱりアドラルーン様には、感謝の気持ちばかりが大きいかな。
コメント
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ああ、セミラミスさん、新しい環境に戸惑ってる感じがすごく伝わってきました……。グリゼルダの「すぐ死ぬ」が冗談じゃなかったのには笑っちゃいましたけど(笑) 部屋で二人きりになったときの会話、特に「草食系」って気づく場面が好きです。木の実とか草って……本当に草食だったんだ、って。 それにアイナが「私だって昔の話はできない」ってさらっと流すところ、転生者の過去を感じさせてグッときました。弱音も本音も見せられる間柄になっていくのがいいですね🌷