相変わらず……?
やはり、前回の記憶があるのだろうか?
「ありがとうございます…」
「いえいえ、通りってどんなお店があるのですか?」
マヌーレさまが出口に向かいながら、振り向き様に問う。
整ったその顔が近くに来て、にこりと笑った。
身を後ろに引きながらサーメルカークは答えた。
「なんでもございます。平素、死者はものを食べません。」
だが、味は感じることができるのだ。
「呉服屋もございますし、しばらくここに滞在する場合に必要な物を調達できる店もありますし、娯楽などもございます。」
いくつか有名どころを挙げると、マヌーレさまは相づちを打った。
「和泉屋、メイヌ、榊温泉など、もうたくさんと!」
藍色の暖簾を潜り抜け、石畳の道を通って、通りに出た。
ふんわりと霧に包まれ、あるかなしかの風が吹いて、淡い桜色の光を放つ提灯が道の果てまで並んでいる。
興味深そうに品物を見る人がごった返す店があったりもする。
それに対し、常連客のみが通う小さな店もある。
「おお~っ」
感嘆の声を漏らすのは大抵お客さんなのだが、いつ見ても素晴らしい町並みに、サーメルカークが毎回のように驚く。
その人が初めて通りに出る場合は、宿の者が付き添う。
サーメルカークはそれが楽しみで仕方なかった。
「広いですねぇ~!」
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