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二人で仕事を終えた後、ひなこにお礼をして正式に付き合ったことを報告した、隠して良かったかもしれないけど、一応は俺の家族だし俺の花吐き病の事も知った為、報告することとなった。
「おめでとう〜!はあ、これでやっと楽になれるかも」
「え、何から?」
ひなこの謎の発言で頭の中に?が浮かぶ。
「いや、いむさんぷっちーへの愛重いもん、その愛に気付かないぷっちーもぷっちーで、私が気になりすぎて」
俺達より期待してたのはもしかしたらひなこかも知れないな笑
「ちなみにキスとかはもうしたの?」
「ブッ」
「したよ!」
デリカシーない発言に俺はちょうど飲んでいた飲み物を吹いてしまった。
にも関わらずさらっとした!と言うこいつは馬鹿なのか…。
恥がない此奴らが恐ろしい。
休日、俺らはディズニーに来ている。お昼を食べていると、今度祭りに行きませんかとぽん太が誘いに来た。
俺らはいいねー!と盛り上がり、祭りの話をする。
「俺らは一緒に行こうな〜ぷっちー!」
「ん、」
「…なんか最近二人共会う回数増えてませんか?」
俺らへの疑問でぽん太が問いかけてきたらひなこが
「なんでだと思う〜?」
ニヤニヤしながらドヤるようにひなこが言う。
「お前が言うのかよ!」
俺がツッコミをすると、俺の腰にいむの手が回ってきてキスをする。
「え」
「お、おいここ外!」
「あらお熱いこと〜」
温度差の違う俺らに対していむはニヤっと微笑み、パッと手を離す。
「こーゆー事だよ」
「あー…やっとか、お幸せに」
「おい今やっとかっつった?え?」
「こいつ知ってたみたい」
「お前も何平然としてんだ猫!てか外でなんてことしてんだ!」
まあまあお熱いわね〜と温かい目で見てくるひなこに恥、そしてぽん太にやったかと前々から両想いだったことを知っていた様な言い方に恥。
そして何より、外で男同士のキスをするのに恥!
「家ではキスより熱いことしてんの〜♡」
「ばっか!」
「いて」
恥ずかしさMAXで死ぬわ!
「いむさんお手柔らかにね〜。ぷっちー泣かせんなよ?」
「あ、圧が…」
前とは関係が変わったけど、いつも通りの会話でいつも通りの温かさ、これが幸せでも。もっと幸せがあったのを知れた。
その幸せは俺ら以外には分からない。
鉄格子の中にある机は崩壊されていて、引き出しの中にあったはずの恋心は真ん中にちょこんと置いてある。
俺はその牢屋の中にいる俺をじっと見ているだけ…
でも、いむが現れて鉄格子を壊して俺に手を差し伸べていた。
目の前の手を取る俺はグイッと引っ張られそのままいむの方へと体が倒れる。
そのまま二人はぎゅっと優しく抱き合って、でも俺は恥ずかしさで顔を赤くして離れた。それでもいむは俺を離さないでいた。
見つめ合っていむが口を開いた「───」彼の声はノイズで消されて聞こえなかった。でも俺はにこっと笑って二人で手を繋ぎ、恋人繋ぎをしながら真っ白な空間の何もない先を、見えないだけで幸せがあるからと走り去って行く。
そこまで離れてもいないのに二人は、若干白に染まっていた、その光景を後ろから見ていると走っている俺はピタッと足を止め、後ろに振り向いて俺を見る。
何だと思っているとあいつは口を開いた。
「───。───」
その声はさっきのいむと同じようで、ノイズで声を上書きされていた。
そのまま俺は前を向き、いむの手を引っ張って本物の笑顔
をしながら二人一緒に何もない白い空間の先を走って行った。
二人の姿は白くなって消えて、それを最後まで見送った俺。
自分の笑顔なんてあんまり見たことないけど、あの笑顔はちゃんと心から笑っていた、それだけは分かる。
「あの先には幸せがあったんだな…」
ちょっと羨ましそうに、でも嬉しくて俺はそのままその場で蹲った。
幸せを掴めたんだと思えば、ほっとしたんだ。
蹲る俺の肩にぽんっと何かが置かれる感覚がした、振り返ればいむがいた。
さっきのいむとは違い、まっすぐ俺を見ていた。
ぎゅっと俺を抱き締めて「今幸せ?」と彼に聞かれた。
何を言えばよかったのかわからなくてそのまま黙っている俺、でも何故か頭から俺の声で再生される。
「幸せは求めても見つからない。でも幸せだと思えば幸せは見つかる」
その言葉は口から出たけど俺自身が考えた訳でもない、でも俺が言った言葉。さっきの俺はノイズで聞こえなかったけど、こう言っていたのが今分かる。
俺はにこっと笑っていむを見つめる。
いむはふっと笑って「幸せそうで良かった」と優しい声で俺に言う。「本物の笑顔は久しぶりだなぁ」と嬉しそうにしてグイッと俺は引っ張られ立ち上がるいむの体に俺は倒れる。
それを支えるように俺の背中にいむの手が来るのが分かる。
いむの体は暖かかった、心臓が動いている。トクントクンと俺の耳にその音は入ってくる。
それじゃあ行こうか!とパッと離れ、恋人繋ぎをしてグイッと俺は引っ張られる。
走っている先には俺の大切な人達がいた、それに色が着いていて背景には青や緑がある。
そこに走って向かっている短い時間で、俺の幸せはそこにあるもの全てが俺の幸せだと気付いた。
真っ白な空間は消えてきて、後に色のある世界に俺は囚われた。でも鉄格子の中とは違って、苦しみもない居心地の良い、暖かい世界だった。白い空間は小さな空間になっていて、もう戻れないと言われる様だった。
でも「ぷっちー!」と名前を呼ばれるとそこには大好きな奴らの笑顔。
俺は自己満の世界をほっといて幸せを掴んだ。この幸せが離れていかない様に、幸せに抱きついた。
─花吐き病(終)
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