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🐱side
レッスン終わりのスタジオはいつもより少し静かだった。
汗の匂いと、床に残る振動。
タオルで首元を拭きながら、鏡越しに自分の顔を見る。
sy「ゆうま」
名前を呼ばれて振り向くとせいやが立っていた。
ペットボトルを片手にいつもの余裕そうな笑み。
ym「なに」
sy「今日の振り、さっきのとこ。最後の止めめちゃくちゃ綺麗だった」
不意打ちの褒め言葉に一瞬言葉に詰まる。
ym「……ありがと」
sy「照れてる?」
からかうように言われて視線を逸らした。
せいやは最近やたらと距離が近い。
褒める回数も、声をかけてくる頻度も、前より 明らかに多い。
——でも俺はそれに ”気付かないふり” をしていた。
sy「このあと時間ある?」
ym「え?」
sy「ごはん行こ。二人で」
さらっと言われて心臓が一拍跳ねる。
ym「……たまには、みんなで行けば?」
sy「今日はゆうまとがいい」
即答。
迷いのない目。
一瞬、断ろうとして言葉を探す。
でも——
ym「……少しだけなら」
そう答えてしまった自分に、内心でため息をついた。
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店は静かなカフェだった。
レッスン帰りの二人には少し落ち着きすぎなくらい。
sy「ここ、前から気になってたんだよね」
ym「へえ……」
向かいに座るせいやはやっぱりどこか楽しそうだ。
sy「ね、ゆうま」
ym「なに?」
sy「俺さ、わかりやすい?」
唐突な質問にスプーンを止める。
ym「……なにが」
sy「好意」
その一言で、空気が変わった。
ym「……さあ」
sy「絶対気づいてるでしょ」
笑いながら言うくせに視線は真剣だった。
sy「俺、ゆうまのこと好きだよ」
ym「……っ」
あまりに真っ直ぐで逃げ場がない。
sy「でもさ、付き合ってとか、今すぐ答え出してとか、そういうのは言わない」
ym「……」
sy「ただ、ちゃんと向き合ってほしい」
カップを握りしめる。
嫌じゃない。
むしろ胸の奥がじんわり熱い。
でも——怖い。
ym「俺……恋愛、得意じゃない」
sy「知ってる」
ym「誰かの一番になるのも、期待されるのも……」
言葉が詰まる。
sy「それでもいい」
ym「……どうして?」
sy「ゆうまだから」
理由にならない理由が、いちばん刺さった。
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それからせいやは変わらなかった。
押しつけない。
でも、離れない。
疲れてるときは黙って隣にいてくれて、
落ち込んでるときは何も聞かずにコーヒーを差し出してくる。
気づけば俺は ”せいやがいる前提” で一日を考えるようになっていた。
そしてある日。
ym「……せいや」
sy「ん?」
ym「今日、俺から誘ってもいい?」
その一言に、せいやの目が見開かれる。
sy「マジで?」
ym「……嫌ならいいけど」
st「嫌なわけないでしょ」
その笑顔を見た瞬間悟った。
——ああ、もう好きなんだ。
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帰り道。
夜風が冷たい。
sy「ね、ゆうま」
ym「なに?」
sy「俺、そろそろ聞いてもいい?」
立ち止まってせいやが向き合う。
sy「俺のこと、どう思ってる?」
逃げられない。
でも不思議と怖くなかった。
ym「……好き」
sy 「……うん」
ym「一緒にいると落ち着くし……離れるの、嫌だなって」
せいやはゆっくり息を吐いてから微笑んだ。
sy「それ、付き合っていいって解釈していい?」
ym「……うん」
次の瞬間、そっと頭に触れられる。
抱きしめるほど近くない、でも確かな距離。
sy「ありがとう」
ym「……こちらこそ」
街灯の下で二人は静かに笑い合った。
始まりは告白じゃなかった。
でも今は確かに恋人だった。