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街は今日も賑やかで
どこかキラキラしている。
今日は快晴。
多少の雲はあるものの、空の色は鮮やかだ。
もし、誰かが空専用のパレットを持っていれば
空にオレンジや藍色を塗れば
時間を省略できるという最高なアイテムになると思う。
だが、それを唯一持ってるのは
“時間”という存在だけだ。
「………」
いけない、また僕の悪い癖が出てる。
はやく彼処に行かなくちゃ。
「お、記者がきたw」
「やっほー」
向かった先は、
ホテルで共に過ごした内の1人が働いている。
花屋さんだ。
「今日は何色の花にする?」
「そうだなぁ…」
優しく僕に問いかけてくるこの爽やかな男性は、
「きんとき」という人だ。
どうやらホテル創業時に来ていたという。
それほど顔も広く、名高い画家だったらしい。
…そう、画家”だった”らしい。
今は花屋で稼いでいるとのこと。
「毎回ありがとね?」
「いいよ、記事の一部分に花知識を書くんでしょ?」
「うん」
「もうマジでありがと、大好き」
「落ち着いてもろて」
前に記事のネタ探しに出歩いてると、
偶然、きんときに出会った。
その時は、ホテルの話で盛り上がっていた。
僕らの仕事が終わると、酒場で語り合った。
ふと、彼はこう告げた。
「画家を辞めた、」と。
「自分の道をもう一回考え直しただけ。」
…そう彼は、僕に告げた。
酒が進んでそうなったのだろう。
僕も、記者の仕事を酒の流れで話した。
「ネタ探しは楽しい」だとか
「なんとかやれてる」とか
…まぁこんなの、全部嘘だけど。
楽しいわけがない。
なんとかやれてるわけがない。
ストレスで隈ができて、
ロクに睡眠も取れていないくらい疲れている。
まぁだから、再会したばかりの時なんか
「ぶる、っく…?」
「目が…、どう、したの…?」
「ホテルの時より…なんか、酷くない…?」
「ちゃんと寝てる?」
「ねぇ、ぶるっく?」
心配した顔で、僕を問い詰めてた。
焦ってて、驚いてた。
ほんとに酷かったみたい。
当時は上司の押し付けも多かったし、
寝ることなんて忘れてたからだろう。
その当時はただ、
「最近マジで眠れなくてさ~w」
「いや~ホテルが気になりすぎてww」
「それに、仕事が楽しすぎてさw」
なんて、嘘ばかり並べた。
その並べた嘘が、僕の盾だった。
そう、僕の最強の盾。
笑顔は絶やさず、笑いながら
「そ、う?」
「なら、いい…けど……」
まぁ、心配はされるけどね
今は押し付けを上手く回避してるから
隈は少し良くなったけど、
別に、僕の疲れが取れるわけではなかった。
こうやって交流があるのは、
僕の記事の一部に
「花知識」という、ちょっとした
ネタを取り入れようとしたからだ。
きんときは快く承知してくれた。
花言葉や、花の効果や匂い、
それらを記事の一部に入れる。
それを繰り返していると、
いつの間にか、ホテルの時みたいに
会話を交わす仲になった。
「じゃあ今回は、オレンジ!」
僕が彼に色を指定すると、
「おっけー、わかった」
と、彼は色を聞き
直ぐ様店内を見渡した。
すぐに花が決まったのか、
彼はその花の場所へ向かい
その1束を持ってきた。
「そうだなぁ…これとかはどう?」
スッ
そう言い、僕に見せたのは
「(きれい…)」
綺麗な夕日の色みたいな花だった。
まるで、夕焼けを見ているような気分だ。
「この花は、カランコエ」
「育てるのも簡単で」
「色も豊富なんだよね」
そういつものように説明してくれた。
「じゃあ、これも…」
と、彼に聞くと
彼も、繋げてこう言った。
「うん、色によって花言葉も変わる」
「でもオレンジだったら…」
「たしか、」
「”奇跡を起こせたなら”」
「…?」
「え、それが花言葉?」
驚いた。
そんな花言葉もあるだなんて。
「オレンジだったらねww」
得意気に笑いながら、彼は続けてこう言った。
「有名なやつだと、」
「赤色で”幸福を告げる”」
「白色で”たくさんの小さな思い出”」
「他にも色々あるよ」
と、彼は得意気に言った。
相変わらずの、爽やかな笑顔を見せながら、
「そうなんだ」
尽かさず僕は相槌を交わす。
少し考え、僕は
「じゃあ今回はそれにするね」
「ありがとう」
カランコエに決めた。
「おっけ、」
「じゃ、えーっと…」
と、本棚を探す彼のいつもの背中が見える。
「あ、あったあった」
「これがカランコエの資料」
と、いつものように資料をもらった。
「ありがとぉ~!マジで助かる!!」
いつものように感謝する。
本当に助かってるし、
何より優しい。
「はいはいw」
「ほら立てwったく…w」
と、いつものように優しく応えてくれる。
その言葉に、どれだけ助かっていることか。
本人は気付いてないだろうが、
君の明るさは、いろんな人を助けてると思う。
…おそらくだが、
少なからず、僕も助けられてる気がする。
「じゃあ今日はもう帰る感じ?」
と、いつものように問いかけてくる。
「そうだなぁ…今日はもう帰ろうかな~…?」
と、すぐ返す。
せっかちなくらいに。
「そっか」
と、彼は気にせず 僕に相槌を返す。
すると彼は
「じゃあ、」
「またいつでも来てね」
「色んな話したいしw」
と、笑顔で答える。
その笑顔に負けないように、
「こちらこそ、(ニコッ」
と、返した。
「んじゃ、またね」
と、大きく元気に手を振ってくれる。
まるで親友なくらいに、元気に。
「うん、またね」
…嬉しいけど、
ごめんね、きんとき
僕は、君の予想よりも
遥かに、最低な人間なんだよ。
僕は、君に
嫉妬してるの。
.