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特別倉庫の扉は、軋むような音を立てて開いた。
――中にあったのは、
静止した時間だった。
床一面に、
本物の生徒たちの亡骸。
制服のまま、
名札のまま、
授業の途中で切り取られたように。
そこに、
黒く濁った邪がまとわりついている。
「……これは……」
誰も、
言葉を続けられなかった。
邪は、
すでに“人”という形を捨てていた。
腕。
脚。
胴。
「部位」だけが意思を持ち、
組み合わさり、
組み替わり、
巨大な塊を構築していく。
怨念の叫びが、
倉庫全体に反響する。
――苦しい
――助けて
――なぜ
声は重なり、
音ではなく、
感情そのものとなって襲いかかってきた。
「……ここが、根源だ」
リンクが、
一歩前に出る。
そして――
マスターソードを抜いた。
澄んだ金属音。
それに呼応するように、
刃が淡く輝く。
《……目覚めました》
静かな、
しかし確かな声。
精霊――
ファイ。
《マスター。
ここに集積しているのは、
人の死ではありません》
《“断たれなかった想い”です》
ブルーミーも、
前へ進む。
彼女の右手の剣に、
形の定まらぬ光が集まる。
祓い。
清め。
解放。
女神の力が、刃となって具現化する。
「……ここで終わらせる」
後方で、
タヴェルが叫ぶ。
「リンク!ブルーミー! 後ろは任せろ!」
スカルが弓を引き絞る。
「邪が来るぞ!
根源に集中しろ!」
エンゲル、バブル、チップ、ルビー。
残った全員が、
背後から押し寄せる邪を迎え撃つ。
「行くぞ!」
リンクとブルーミーは、
同時に踏み込んだ。
怨念の塊が、
咆哮を上げる。
無数の邪の弾が放たれる。
リンクは、
ジャストガード。
金属音と共に、
弾は聖なる光へと変換され、
逆流する。
「ハァァッ!!」
ラッシュ。
斬撃が走り、
構築された部位が崩れる。
だが、
すぐに再構築される。
「……しつこい……!」
ブルーミーが、
女神の刃を振るう。
光が走り、
触れた邪が静かに消えていく。
「……この怨念、 数じゃない……!」
ファイの声。
《集合意識です》
《“救われなかった”という一点に
すべてが収束しています》
その瞬間――
怨念が瘴気を濃くする。
空気が、
重く、
冷たくなる。
ブルーミーの動きが、
止まった。
「……っ……!」
膝をつく。
「ブルーミー!」
リンクが叫ぶ。
《精神干渉です!》
ファイが即座に分析する。
《この場の記憶が、
彼女の意識を拘束しています!》
「……なら……」
リンクは、
一人、前へ出た。
「ここからは、
俺が引き受ける」
怨念が、
一斉にリンクへ向く。
叫び。
責め。
否定。
「……聞いた」
リンクは、
低く言う。
「俺は、 それでも進む」
ラッシュ。
回避。
ジャスガ。
反撃。
邪の弾は、
すべて光となり、
マスターソードから撃ち返される。
《リンク》
《あなたの意思は、
十分です》
《――切り拓いてください》
ゼルダの声と共に、リンクが跳ぶ。
「ハァァァッ!!」
厄災の中枢へ、
一直線。
その瞬間――
ブルーミーの指が、
わずかに動いた。
「……まだ……終わらせない……」
女神の光が、
再び灯る。
瘴気を振り払い、
彼女は立ち上がった。
「リンク…… 一緒に……!」
最後の瞬間。
リンクの剣が、
中枢を切り裂く。
ファイの光が、 刃に重なる。
《――今です!!》
そこへ――
ブルーミーの一撃。
刹那。女神の“手”が、 見えた気がした。
聖なる力が、
最後の一押しとなる。
――核、破壊。
怨念の叫びは、
音を失い、
霧となって散った。
静寂。
倉庫には、
ただの空気だけが残る。
リンクは、
剣を下ろした。
ブルーミーも、
静かに光を収める。
「……終わった……」
ファイの声が、
穏やかに響く。
《すべての根源は、
断ち切られました》
《これ以上、
邪は生まれません》
後方で、
仲間たちが息をつく。
誰も、
勝利を叫ばなかった。
ただ――
確かに、
終わった。
リンクは、
静かに言う。
「……帰ろう」
この場所で、
これ以上、
戦う必要はない。
すべては、
断ち切られたのだから。
解放・救済編 ー完ー