初めてだった 。
誰かに心まで奪われるという感覚は 。
※君 = ロマーノ
姉さんに連れられて、初めて君と会った。
世界にこんな綺麗な人がいてもいいのか、そう思うほど君は魅力的だった。
綺麗な緑色の瞳に、黒みがかった髪。一瞬で君から目が離せなくなった。目を奪われる、とはきっとこのことなのだろう。
「 初めまして、ロマーノくん 。 」
自分が声をかけると、すぐに君と目が合う。
ああ、やはり美しい。
君はぶっきらぼうに答える。
「 … 誰だ 、 」
「 ルクセンブルクです 、兄さんと姉さんの弟のでして。 」
「 お 、 俺に何の用ですか、 ちきしょー … 」
「 いえ 、 お会いしたかっただけです 」
柔らかく笑いかけると、君は更に不安そうに首を傾げる。そんなに怪しくみえてしまったのか。
気まづい沈黙のあと、すかさず姉さんが仲介に入る。
「 びっくりさせてごめんなあ、うちがロマーノくんに合わせたろ思て連れてきたんよ〜 」
「 べ、ベルギー 、! 」
君は姉さんを見れば目を輝かせてくるりと視線を変えた。
「 ふん 、別に驚いてなんかねえ 、… それより新しくできたドルチェの店紹介、したくて、 」
一瞬のやり取りで、ロマーノくんの興味が自分から姉さんに移っていた。「それより」という言葉が以外にも深く刺さってしまい、自分がここにいることが惨めにさえ感じてしまう。
「 おわ 、ごめんな、今からお兄ちゃんとショッピングなんよ! 」
それなら自分も、と言い出そうとした。ここから早く消えてしまいたい。
「 姉さん、それなら自分m 」
「 ああせや!ロマーノくん、それならルクセン連れたって! 」
「 ん “ !? 」
すぐに理解してしまい、変な声が出てしまう。
「 2人とも仲良うなるチャンスやし、ロマーノくんなら安心するわ〜! 」
ふいに君を見れば、何か言いたそうな顔をしている。あたりまえだ。姉さんと行きたかったのだろうし。
「 姉さん、ロマーノくんも自分とではいy 」
「 別に 。 ほら行くぞ 」
…何故この人たちは自分の発言を最後まで聞かないのだろうか、そう思っていることに集中しすぎて、自分の手が君の手と繋がってることにすら気づかなかった。
「 お前俺の事見すぎだ、このやろー 」
店に着き相席に座れば、君の第一声がこれだった。
「 っぶ 、 !? 」
自分を落ち着かせる為に水を飲んでいるときに言わないでほしい。盛大に吹いてしまった。
「 お、おい、!大丈夫かよ!! 」
すぐに君は席を立ち、自分の背中をさすってくれる。すかさず心臓をばくばくさせながら君の手を掴んだ。
「 だ、大丈夫 、なので 、 」
「 そ、そーかよ、なんか、悪かった。 」
馬鹿か、自分は。
君は掴まれた手を振りほどき、再び相席に座る。
「 あの、ロマーノ、くん 」
「 … ん 」
先程のこともなかったかのように頬杖をついて君は返事をする。
「 実は、その、自分、ロマーノくんから目が離せなくなってしまって、 」
これまでにも目を奪われたものはあった、それに近い感覚だと思った。美術品などから目を離せないものと一緒だろう。
しかし、君の反応は全く予想外だった。
そんな彼の反応とは、耳まで真っ赤に染まり、目を見開いて自分を見つめていた。
「 な 、 ロマーノくん!?どうしたのですか、! 」
「 …ちょ、おまえ、なん、自分が言ってることわかってんのか、このやろー、 」
「 え、 」
君は大きな溜息をついたあと、伏せてしまって顔を見せてくれなかった。見たい、もう一度。
「 ロマーノくん、せっかくなのでお話でもしませんか。 」
「 しねえ 」
「 自分、お話得意ですよ。 」
「 しねえ、 」
頑なに顔を上げてくれない君に、どうしたら顔を上げてくれるか考えていると、注文したものが運ばれてきた。
「 ロマーノくん、ジェラート食べないのですか? 」
「 お前が食べていい、 」
「 そんな、好き嫌いはいけませんよ 」
「 ちっげーよ !! 」
ば、と勢いよく顔を上げる君。
「「 あ 」」
「 やっと顔を上げてくれました…! 」
自分が君にもう一度笑いかけると、君はまた真っ赤になってしまった。そんな君を見ると、ここで初めて目を奪われる上に、心まで奪われてしまっていたことに気づいた。
「 ロマーノくん、自分は何故か、ロマーノくんと一緒にいると、心まで奪われてしまいそうになります、 」
ああ、胸の内に秘めておくつもりが、声にでてしまった。もしかして、自分はこの人に、
「 それって、 ぉ、おお俺のことがすきってことか…? 」
顔を赤くさせて、戸惑いながらも自分に問う君の両手をぐ、と掴んでは、
「 っ、すきです、ろまーのくん 、 」
勢いに任せて言ってしまったものの、その後ロマーノ君はすぐに帰ってしまい、3日も顔を合わせてくれなかった。
姉さんに紅茶を頼まれて、スペインさんの家に向かう。
「 おい 」
「 あ、ロマーノ!トマト食うか? 」
「 2つ寄越せ。るくせんいるか 」
「 あ、丁度今ポルと話してんで〜 」
「 ふーん、 」
「 お、るくせん、何しとん 」
「 紅茶を淹れようかと。ポルトガルさんもどうですか? 」
「 長ぁ、 兄さんって呼んでもええよぉ 」
そう言ってポルトガルさんは自分の腰を引き寄せる。
「 へ、!? そ、それは、 」
がた、と物音がした。振り向くと、そこには久しぶりの君の姿があった。
「 ろ、ロマーノくん、!? 」
「 っち、 」
ロマーノ君は短く舌打ちをして、ばたばた出ていってしまった。
「 あっちゃぁ、ちょっと揶揄うつもりやったんにぃ、 」
顔を見ただけで舌打ちされるなんて、相当嫌われてしまっている…。絶望からがた、と膝をついた。
「 る、るくせん!? どしたん、 」
「 ポルトガルさん…ロマーノくんに3日も無視されるのですが…嫌われてしまったのでしょうか… 」
「 どっちも鈍感、やんなぁ 」
気分転換に散歩をしていると、噴水の傍に座り、鳥に文句を言っているロマーノくんを見つけた。
…無理に声をかけてもまた嫌われる、これ以上好感度を下げても仕方がない。向きをくるりと変えて、家まで帰ろうとしたとき、
「 っ、?待て、るくせん、! 」
「 ろ、ロマーノくん、!? 」
いきなり愛称で呼ばれてあたふたしていると、成り行きで自分も噴水の傍に座り、彼の話を聞くことになった。
「 …お前、あいつがすきなのか。 」
「 ?あいつ、とは誰ですか? 」
「 とぼけんな、ポルトガルに決まってんだろ 」
「 …ああ、先程のことですか、あれは大した意味でh 」
言葉が途切れたのは、ロマーノくんの目から大きな雫がぼろぼろと落ちていたからであった。
「 んな、ろまーのくん、!!は、ハンカチ…えっと、 」
そう慌ててポケットを探していると、急に手首を掴まれて、
「 お前、っ、俺がすきって、言ったじゃねぇか…!ばか、気ぃ持たせといて、っうあ、…ふざけ、な、ばかるくせ、 」
一杯の言葉で罵ると、今度は頭を胸にぐりぐりと押し付けてくる。
「 ろろろまーのくん、っ、!? 」
嫌われていると思っていたのに、まさか、その、ロマーノくんから「気を持たせる」なんて言葉が出てくるなんて、
嬉しくて、愛しくて、どうにかなってしまいそうだ。
くい、と掴まれた手首を優しく離し、引き寄せて抱きしめる。
「 …自分は、ロマーノくん以外にこんな感情を持ったことなんてないです、 」
〝 それに、好意を持てないお相手にこんなことしませんよ 〟と、真っ赤な君の耳を甘噛みする。
「 ぃだ、っ 」
「 おっと、 」
同時にロマーノくんの身体がぐらつく。自分が腰を支えると、ようやく君と目が合った。
「 …ふふ、また合ってしまいましたね。 」
余裕そうに笑ってみせるが、内心ばくばくなのは秘密にしておこう。
でも、ロマーノくんにはお見通しみたいですね。襟を掴まれて、強引に口付けをされてしまいました。
「 っ、ろまーの、くん、こ、これって、 」
「 … 返事。 」
「 こ、こんな自分でもいいのですか、! 」
「 …うるせえ、………がいい、 」
「 え、えっと、 」
「 お前がいい、つったんだよ………! 」
「 !! 自分もロマーノくんがいいです、 ! 」
離れてほしくない、ずっと、
「 離したり浮気したら刺す。 」
「 ええ、もちろん。 」
こんなに幸せでいいのだろうか、
繋いだ手を口まで持ってきて、指先に口付けを。
君を今日から独り占めできるのは自分しかいないなんて。
愛おしさで狂ってしまいそうだ。






