nmmnとなりますのでひっそりと楽しんでいただけると幸いです
まったりです
brkn 看病 退行アリ
「これは………」
手元の体温計は37.6を示していて、どうやら完全に風邪を引いてしまったようである。
「寝てなかったからですか…?」
ひどい頭痛にあーだのうーだの嘆きながら誰もいない家の壁に問いかける。
返事はない。
当たり前です。
確かに最近は仕事やら編集やら撮影やらで忙しくしていて休息もろくに取れていなかった。
きっとそれがたたったのだろうが、にしても今日なのがついてない。
神様は俺のことが嫌いらしい。
「ぶるーくに…連絡しないと……」
そう、今日は忙しい中でもようやく取れた休日、そして久しぶりにぶるーくと出かけるはずの日だった。
俺もぶるーくもずっと今日を楽しみにしていたし、ドタキャンという形になってしまうのはとても心苦しい。
体温計をケースに戻して机に置き、ベッドの上にあるスマホを取ろうとする。
「…あっ?」
一瞬視界がぼやけて足がもつれ、ベッドに思い切り倒れ込んでしまった。
倒れた先がベッドでよかった、机の角に頭をぶつけていたら救急車案件だ。
想像して冷や汗をかきながらスマホでLINEを立ち上げる。
熱のせいか思考がぼんやりとしてくるのを感じて、どうも心地が悪い。
頭をガンガンと殴りつけるような痛みと脳にかかるモヤが俺の意識を狩ろうと猛威を振るう。
曖昧な意識で、埋もれていたぶるーくのアイコンをタップして文字を打ち込む。
ごめん、きょうむり
送信ボタンを押した瞬間、視界が真っ暗になった。
今日は久しぶりに2人きりでお出かけだと意気込んで準備をしていた時、メッセージが来た。
“ごめん、きょうむり”
「え」
どうして無理なの?なんで平仮名?何かあるの?
全部送ってみたけど、既読がつくだけで どれだけ待っても返事はなかった。
もしかしたら、危ない目に遭ってる?それとも何かハプニング?
ぐるぐると不安が胸の中を渦巻いて、いても立ってもいられなくて家を飛び出した。
20分ほど走って着いた家を、付き合った時に渡された合鍵を使って開ける。
綺麗に揃えられた彼のいつもの靴があるのを見て、とりあえず家にはいると予想がつく。
「きんときっ、どこ!?」
声をかけながらリビング、トイレ、お風呂、収録室と一つずつ見ていく。
最後に残った寝室の扉を強く開くと、ベッドの上でぐったりとしているきんときがいた。
「…!きんとき、」
近づくとその表情はとても辛そうで、息が荒く完全に体調を崩していることがわかる。
きんとき手元には僕とのトーク画面が開かれたままのスマホがあって、送ってすぐに意識を失ったんだろうとわかる。
「…ひどい熱」
ふと触れた手首の熱さに思わず手を引いた。
薬を飲んだかもわからないし、そもそも家に薬があるのかもわからない。
「待っててね」
布団を優しくかけてスマホの電源を落としてから部屋を出た。
必要なものだけ買って早く帰ってこよう。
コンビニで冷えピタと一般的な風邪薬とゼリーだけを買って戻ってきた。
風邪を引くことが少ないから何を買えばいいかわからなかったけど、案外なんとかなりそうだ。
ベッドの上でまだ眠っているきんときを見て安心する。
起きた時に一人じゃ寂しいもんね。
「ヒヤッとするよ〜…」
聞こえるかわからない声をつぶやきながらきんときの前髪をサラリと分け、買ったばかりの冷えピタを額に貼り付ける。
「…ぅ」
「…!」
冷たさで起きてしまったのか、きんときの瞼がゆっくりと開かれ、中からとろけた青い瞳が見えた。
「…ぁ、?ぶる、く?」
「ご、ごめん。起こしちゃった?」
「…?んぇ…、?」
状況を読み込めないのか頭の上にハテナを出す彼は可愛らしく、彼に熱がなければ唇を落としていた。
危ない、僕に理性があって良かった。
「ぶるく、なんで」
「ん、きんさんが心配で来ちゃった」
「ごめん、おれ、やくそく」
「いいんだよ、辛いのはきんさんの方でしょ?」
「でも…」
「だーかーら、大丈夫だよ。それより薬って飲んだ?」
「のんでない」
「買ってきたから、飲もっか」
「……のみたくない」
「えぇ~飲まないと良くならないよ?」
「でも…やだ」
ふてくされたように布団を顔まで被る彼はすごく可愛いけど、飲んでくれないと困る。
「どこが悪いの?どっか痛い?」
「きもちわるい、ふわふわする」
「そっか…袋用意しておくね。他にはある?」
「さむいし、あたま、われそう、いたい」
「…!やっぱり薬飲んだほうがいいよ」
「……いやだ」
「なんで嫌なの〜、楽になるよ?」
「…ぶるーくが」
「うん?僕?」
今まで布団で隠していた熱で赤くなった顔をひょっこりと出したきんときは、頭痛のせいか熱のせいかやけに潤んだ瞳で僕を見た。
「…かえっちゃう、から」
「………。…!?」
彼が小さく呟いた言葉はあまりに予想外で、あまりの驚きに声も出せずに固まってしまった。
「大丈夫、僕帰らないよ」
「…ほんとう?」
「うん、本当。きんさんの事が心配で、きんさんに会いたくて来たんだもん」
「おれも、あいたかった」
「〜〜〜!!きんときっ!」
思わず飛びつくときんときはほろりと涙を零した。
その涙を指先で優しくすくうと、安心したのか柔らかく微笑んだきんときは僕の胸に顔を埋めた。
「さびしかった」
「うん、僕もだよ」
「つらい」
「薬飲もう?良くなるよ」
「…うん」
小さく頷いたきんときを離れ、コンビニの袋を漁る。
買ったゼリーと薬を取って、ベッドで上体を起こしているきんときに渡す。
きんときはそれを受け取ってから、僕をじっと見つめた。
「…どしたの?」
「……」
「きんさぁん?」
「ん…」
「食べていいよ?」
食べな?と声をかけつつきんときの手元のゼリーを取って蓋を開けてあげると、こくんと頷いて口を小さく開けた。
「…もしかしてあーんして欲しい?」
「ぅ…ん」
「…!いいよぉ、はいあーん」
「…ん」
普段はしないような甘え方で子供らしく振る舞うきんときはとても可愛らしくて、どうしようもなく愛おしくて、衝動で優しく頭を撫でる。
「…可愛いねきんさん」
「………」
赤らんだ顔でゼリーを飲み込んだきんときは特に何も言わずにただじっと撫でられていた。
普段は恥ずかしがるくせに、やけに大人しいきんときが本当に可愛くて、さらに頭を撫でくりまわす。
「…」
「っあ、ごめん…可愛くてつい…。頭痛いんだよね、ごめんね」
「ぇ、いや………その…」
ぱっと手を離すと、あからさまに視線を泳がせたきんときが震えた手で僕の手を握った。
「…どうしたの?気持ち悪い?」
「ぅ…えっと……」
「…?」
「いたいの、らくになる、から……その…なでて、ほしい」
「…!わかった」
熱のせいか恥ずかしさのせいか顔を真っ赤にしたきんときがまた少し口を開く。
「あーん、」
「ん…」
こんなに甘えてくれるのは今日だけかもしれない。
きんときは辛いだろうから申し訳ないけど、僕は全力で今日を楽しむことを決めた。
コメント
4件
こーゆーかきかたの小説大好きなのでうれしいです❕🫶🏻 しかも今熱いカプで見れてとても嬉しいです仲良くなれそうな気がしますね🤭
素直なknさんも可愛すぎてヤバいです…!てか、今更ですけど、なんか情景を浮かばせるような表現上手ですね!見てて楽しいです!