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黒いマントがバサリバサリと、冷たい風に揺れ靡く
商人は木箱をギュッと、一層強く抱き締める
黒いマントの女『御託はいいから、とっとと寄越しな…』
ギラリと光る牙を剥き出しにし、低い姿勢で商人を威嚇する女
商人の男『ち、近付くな!俺は…俺は零刀を持ってるんだぞ!』
商人は息を切らしながら、冷や汗を木箱に垂れ流す
黒いマントの女『安心しろ…常人に使える代物じゃねぇからな~』
女は嘲笑うように言い、ズチャ…ズチャ…とぬかるんだ泥道を歩く
商人の男『う、うるせぇ!近づくな…殺すぞ!!』
商人は急いで木箱を開け、震える手で中の零刀を握る
黒いマントの女『ほぉ~う…そいつが零刀…噂通り錆びてやがる』
その零刀は、確かに刃がボロボロになり錆びていた…
商人の男『なッ…!?なぜだ…何で錆びて…』
黒いマントの女『あぁ?知らねぇのかい?丸ノ内戦争をよ…』
商人は零刀をググッと強く握り、地面を踏みしめる
商人の男『う、うるせぇ…!俺はお前を殺すだけだ!!』
バッ ヂャッ ヂャッ ヂャッ
刀を構えた商人は、そのまま女に向かい走り出す
黒いマントの女『はっ、バカも良いとこだねぇ…』
その瞬間
糸目の男『やめんか、アンタら』
商人の男『…!!?』
突如として現れた糸目の男が、女に向かい刀を振りかざす
しかし…
ギギギギギッ
女は隠し持っていたナイフで、その刀を易々と受け止める
黒いマントの女『そのスーツ…零財団か…コイツは厄介だねぇ』
糸目の男『光栄やな…ウチのこと知ってん?』
黒いマントの女『ぶふッ…!!?』ズザザザーッ
糸目の男は女の腹を蹴り飛ばし、一定の距離を取る
檪原 快晴『一応自己紹介…ウチは零財団、檪原 快晴や』
檪原 快晴 黒いマッシュヘアに細目、とてもスレンダーなスーツの男
黒いマントの女『ふふっ…あたし好みの顔じゃないか~』
櫟原 快晴『そりゃ、おおきに…んじゃアンタらにはぁ…』
男は、キンッと刀を構え
檪原 快晴『死んでもらおか』
その一瞬の間に、檪原は森から姿を消す
商人の男『ひッ…や、やだ!死にたくなぁい!!』
ズザッと、商人は零刀を持ったまま逃げ始める
黒いマントの女『速いな…だが今は零刀優先だ』
女はナイフを片手に、商人を走って追い掛ける
そして、その二人の先に立ち構えるのは…
刀からブワッと黒い雲のような物を醸し出す、檪原の姿
檪原 快晴『影雲 輪…!!(かげぐも りん)』
そして、檪原が刀を振りかざした瞬間…
大きな衝撃波と共に、周りの木々がズパッと真っ二つに斬れる
黒いマントの女『こ、こいつ………妖術使いか…!?』
クルッ シュタッ
女は目を見開きながら、軽い身のこなしで斬撃を回避する
商人の男『ひッ…!?な、何なんだコイツらぁ…!?』
商人は涙を嗚咽を繰り返しながら、その場に倒れる
檪原 快晴『アンタらが~、ウチから逃げれる方法はただ一つ…』
ニヤリと、檪原は口角上げ
檪原 快晴『死ィ…のみや』
黒いマントの女『はっ…そいつはどうかな?青年』フワァ…
その時、女の体が徐々に霧のように淡く消え始める
檪原 快晴『…!?霧の妖術…?』
檪原は直ぐ様、女に向かい刀を振るう
しかしその刀は空を切り、消えかかった女はニヤリと笑う
黒いマントの女『それじゃ…コイツは貰ってくよ~青年』
その女の腕には、いつの間にか奪った零刀の姿が
そのまま女はフワァ~と、霧となり空気に消え去った
檪原 快晴『し…し…し…しまったぁぁぁぁぁ!!?』
檪原は急に泣き出し、ドサッと膝から崩れ落ちる
商人の男(い、今の内に……逃げるしかねぇッ!!)
その隙に商人は、一目散に森の中を走り始める
夕日も落ち、星が点々と見える中、商人は必死に檪原から逃げる
商人の男『はぁー…はぁー…俺だって…死にたくねぇ…!!』
商人の男『ぶはッ…!?』
すると商人は、何かにぶつかってドサーッと地面に転げ落ちる
その商人の目の前には…
白叉 黒子『テメェか?零刀を奪った命知らずの輩は…』
赤い瞳が眩しく月夜に光る、既に刀を抜いた白叉の姿があった
商人の男『ち、ちげぇ…俺は…俺は…!!』
星の光も通すことを許さぬ、冷えた暗闇の檻の中…
商人は椅子に縄で拘束され、
その前には、白叉 黒子と檪原 快晴の二人が立って男を睨む
檪原 快晴『黒子くん…コイツが盗んだって解釈であってるよ』
白叉 黒子『だろうな…一旦聞くが、なんで零刀を盗んだ?』
白叉は、腰の刀をカチッと握って商人に問いかける
商人の男『い、今…日本刀の材料…玉鋼が日本各地で枯渇してんだ…』
檪原 快晴『枯渇?聞いたことあらへん…これホンマ?』
檪原は信じられない様子で、商人の肩に肘を置きもたれ掛かる
商人の男『ほ、本当…!だから零刀を盗んで売り捌こうと…』
檪原 快晴『玉鋼が無くなった今が、高く売るチャンスやって?』
檪原はタバコを吸い始め、白叉は隣でチャキッと刀を抜き
白叉 黒子『で…檪原さんの言う黒いマントの女って?グル?』
ピトッと商人の顎に刃を突き付ける
商人の男『し、知らねぇ!俺はただの、平凡な商人だ…!!』
白叉 黒子『…本当らしいな』檪原 快晴『おっ?優しいやん黒子くん』
白叉は刀を鞘に納め、商人の目をジーッと見つめる
白叉 黒子『一つ聞く…ここらで一番近い、刀市場はどこだ?』
商人は口を開き、二人に喋り始める
商人の男『こ、こっから北に行くと…日本刀市場があるはずだ…』
続け様に、商人は汗を垂らしながらも話を進める
商人の男『そして…不可解な日本全国の玉鋼の消失でどの刀市場も儲からず、そこ以外閉まっちまってる…だから現状、裏ルート以外で刀を売り買いできんのは、あそこだけだ…』
檪原はふーっと煙を吐き、ニヤリと笑みを浮かべる
檪原 快晴『んじゃ、あの女が零刀を金目的で盗ったんなら…』
白叉 黒子『手っ取り早く売れるのは、その刀市場だけって事か?』
白叉は、商人の縄をシュルルルーッとほどく
商人の男『そ、その市場は…2日後…2日後に大型イベントを開く』
大型イベント その名も『一刻 刀祭』
世界中から寄せ集められた名刀らによる、大型競り大会
そこなら現零刀の保持者、黒いマントの女が現れる可能性がある…
そこで、我ら零財団は動き出す。
あれから、2日後…
開催 4時間前
会場は異様な空気に包まれる
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
そこに集まる零財団の財団員らの数、凡そ7名
その少人数にして、圧巻の圧を醸し出す7人は黒いスーツを纏い、
次々と日本刀市場に潜入する
白叉 黒子『マントの女の狙いは分からねぇが…』
檪原 快晴『殺すだけ…やろ?』