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ファミレスを後にしてホテルへ戻る頃には、すっかり夜の帳が降りていた。
冷えた空気の中庭に灯るライトアップに目を奪われ、蓮は思わず足を止める。
隣にいたナギが小さく笑って、「ちょっと寄っていこうか」と言った。
外に出ると、冬の夜気が肌を刺す。
「うぅ、ちょっと寒いね」
蓮が肩をすくめると、ライトアップされた噴水が静かに揺らめき、二人を包み込む。
撮影中はもちろん、ホテルの中でも中々二人きりになれる時間が取れず、部屋も別々になってしまっている為、こうして二人で話せる時間はとても貴重だ。
本当なら温かい部屋で甘い時間を楽しみたいところだが、流石に兄に数時間部屋を開けてくれと言うわけにもいかない。
今日は特に色々あり過ぎた。正直言ってナギが不足している。
「……ねぇ、凛さんってさ、お兄さんの事好きだよね?」
「え? そりゃまぁ。兄弟だし」
突然何を言い出すんだ? と思いながらも、蓮はその問いに素直に答える。しかし、その答えが不服だったのか、ナギは「そう言う意味じゃなくて……」と蓮の服の裾を引っ張った。
一体、どういう意味なのだろうか?
「お兄さんってさ、ほんっと自分の事になると鈍いよねぇ」
「え? なに? 酷くない?」
呆れたようにため息を吐くナギの言葉に思わず眉を寄せる。たった今の会話の何処が鈍いと言われる要素があったのか。
兄は昔からあんな感じで、自分に向けられた敵意に関しては親身になって考えてくれるし、最初に手を出すのも大抵が兄の方だった。
でもそれは、家族だからであって、決してそれ以上の感情なんてあるはずが無いのに。
ごくたまに発するおかしな言動も、不器用な兄ならではの趣味の悪い冗談だと思っていたのだが、ナギの目には違う風に映っていたのだろうか?
確かに幼い頃から、「蓮は可愛い、美人だ」「お前は俺が守る」と言われ続け実際に何度も助けられて来た。けれどそれは、あくまでも弟に対する愛情表現の一つで、そこに恋愛的な要素は一切含まれていないはずだ。それが当たり前だと思っていたのだが。
「ま、いっか……。俺はそう言う鈍いお兄さんもいいと思うよ」
「……それ、絶対褒めてないだろ」
「ふふっ、そんなことないよ」
クスリと悪戯っぽく微笑む彼の表情にドキリと心臓が跳ねる。
「……っ、そんな顔、他の奴には見せるなよ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
得体のしれない感情を誤魔化すように、ナギの肩を抱いてグッと自分の方へと引き寄せる。
吐く息が白く滲む寒空の下、ライトに照らされた噴水の水面が揺らめき、二人の影を包み込んだ。
ナギはほんの一瞬だけ驚いた顔を見せたが、はにかんだように笑うと、そっと全身の力を抜いて――
すっぽりと蓮の腕の中に収まった。
ベンチに座って身を寄せ合えば、互いの体温がじんわりと伝わって来てとても心地が良い。でも、頬や手は氷のように冷たくて、時折吹きすさぶ北風に思わず身を震わせてしまう。
「ねぇナギ。やっぱり場所を変えようか? 風邪ひいたらまずいし」
「大丈夫。ここがいいんだ」
「……っ、そんな可愛い事言われたら離したく無くなるじゃないか」
念のためにと部屋から持ってきたブランケットを背中に掛けてやり、甘えるように擦り寄って来たナギの肩を抱くと、ソワソワして落ち着かず、星空を見上げた。
満天の星空に、大きな月がぽっかりと浮かび煌々と辺りを照らしていて、ライトアップされた木々と相まって幻想的な風景を作り出していた。
「ねぇ……ここ、他に誰も居ないよ?」
そっと囁くようなナギの甘い声に思わず喉がなった。
確かに誰も居ない。ブランケットに隠れてしまえば中で何をしているかなんてわからないだろう。
いや、そもそもこんな時間にこの中庭に居る人間など自分達以外にはいないのだけれども……。
「お兄さんは? したくないの?」
可愛らしく上目遣いで尋ねられたら、断れるわけがないじゃないか!
「……そんなの……聞くなよ」
「――……」
ふと、視線が絡み合って、引き合うみたいに唇を寄せ合うとどちらからとも言えないままにキスをした。啄むような口づけを繰り返しているうちに、段々とそれは深くなっていき、舌を絡め合う濃厚なものへと変わっていく。
「ん、……んっ……は、ぁ……」
はふ、と息を吐き唇を離すと、銀の糸を引いて唾液の雫が落ちていった。
蕩けた表情で見つめ合い、もう一度軽く触れ合わせるだけの優しいキスを交わす。そうこうしているうちに、ナギの冷たい手の平が太腿の付け根に触れて、スッと撫でる様に動くものだから、ゾクゾクと背筋が粟立ってくる。
「ちょっ……ナギ、此処、外だよ?」
「知ってるよ?……だから?」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、彼は更に際どい部分に指を這わせた。
「ははっ、もう勃ってる……。凄いねガチガチになって……」
「く……ッキミは……っ」
クスリと笑って、耳元で囁かれる声には確かな熱が籠っていて、蓮はカッと顔が赤くなった。
「あまり、煽らないでくれ。僕だって色々と我慢してるのに」
困ったように眉を寄せて苦笑すると、「わかってるよ」と言ってナギは再び触れるだけの軽いキスをする。
「ねぇ、ちょっとだけ抜け出しちゃおっか。明日の朝までに戻ればよくない?」
悪魔のような甘い囁きが鼓膜を揺らし、蓮はゴクリと唾を飲み込んだ。
「……っ、本当にキミはずるい子だね」
「……嫌いになった?」
「まさか。積極的なのは大歓迎だ」
そう言ってニッコリと微笑んでみせると、視線が絡んで再び唇が触れ合う。まるで誘うように薄く開かれた隙間から忍び込んできたナギの舌先を迎え入れ、優しく歯を立てながら吸い付くと、腕の中で彼がピクンと身体を震わせるのがわかった。
「――行こっか」
唇を触れ合わせたまま、そう囁いて立ち上がって手を差し伸べると、彼は嬉しそうにその手を握り返した。
ホテルを抜け出し、辿り着いた先は、山奥にひっそりと佇むラブホテルだった。
タクシーを止めてから此処まで、互いに何も話さず無人のパネルで適当に部屋を選んで案内に従いエレベーターに乗り込む。
扉が閉まるとほぼ同時、上昇するエレベーターの中で、ナギを抱きしめ唇を奪った。
一瞬、驚きに瞳を大きくさせた彼だったが、すぐにうっとりとした様子で全身の力を抜いて背中に手を回してくる。
「部屋まですぐなのに……っ」
「待てない。……今すぐキミが欲しい」
耳元で囁きながら蓮が手を差し入れると、ナギの身体が大きく跳ねた。
「あぁ……ダメ、まだ……っ」
「部屋に着く前に、一回抜いちゃう?」
「っ――馬鹿じゃないの!? 変態ッ!」
ドゴッ。
唐突に響いた鈍い音。
油断していた腹にナギの膝蹴りがめり込み、蓮は呻き声を上げてその場に崩れ落ちた。
ちょうどその瞬間、エレベーターが到着して扉が開く。
ナギは涼しい顔で蓮の顎に手を掛け、頬を軽く叩いてやる。
「なんで!? みたいな顔しないでよ。……嫌なんだよ、こんな……AVみたいなこと……前にも言わなかった?」
頬を赤く染め、膨れ面をしながらそう言うと、ナギはプイッと顔を逸らしてスタスタと歩いて行く。
怒っているのか、恥ずかしがっているのか。どちらにせよ――可愛いと思ってしまうあたり、完全に重症と自分でも思う
まだジンジンと痛む腹を押さえつつ立ち上がり、後を追ってその背に「ごめん」と小さく謝る。
「たく……調子に乗りすぎ。……べ、別にしたくないわけじゃないんだから……。普通にしようよ」
チカチカと点滅する部屋の前で立ち止まり、俯いたまま不貞腐れた声。思わず苦笑する。
「普通、ね……。まぁいい。わかった、言うとおりにする。だから、機嫌直してくれないか?」
「……ばか。別に俺は怒ってるわけじゃないし……」
そう呟いたナギは勢いよくドアを開け、さっさと部屋の中へ吸い込まれていった。
慌てて後を追えば、入った途端にナギが蓮のコートに手を掛け、脱がせ始める。
「おい、いきなり追い剥ぎみたいなことするのが普通なのか?」
「……ッ、うるさいなっ! 部屋に入ったら何してもいいんだよ!」
何だその理屈は、と心の中でツッコミを入れながらも、されるがまま服を脱がされ、腕を引かれてベッドの端に座らされる。
ナギは自分のコートを脱いで椅子に放り投げ、自分の服に指をかけながらゆっくりと近づいてきた。
「……本当は、シャワーくらい浴びたかったんだけど……」
目の前に立つ彼の姿に、蓮の喉がコクリと鳴った。
白い肌に女性のように細い華奢な体つき。それで居て男らしい筋肉のついた胸板と綺麗に割れた腹筋に思わず見惚れてしまう。
――……相変わらず反則的な程にいい体つきをしている。
「……あんまり見ないで」
視線に気付いたナギが恥ずかしそうに身を捩る。そんな仕草一つとっても愛おしくて堪らない。
「どうして? こんなに美味しそうな身体してるのに」
「言い方がオヤジ臭いよ。お兄さんっ、ぅ、んん」
目前にある胸の飾りを撫でて軽く摘まめば、ピクンと身体が跳ねて甘い声が上がる。腰を引き寄せもう片方に唇を寄せると、舌先で舐めて軽く甘噛みをした。
途端に上がる声に気を良くしながら、更に強く吸い付いて執拗に刺激を与えると、そこはツンと固く立ち上がり紅く色づいてくる。
「ふ、っ……ん……っ、もう……そこばっかり……しつこい」
「だって、気持ち良さそうだし。それに、ほら、こっちは触らなくてももうこんなになってるよ?」
それを指で弄びつつ、もう一方の手で脇腹や臍の辺りを撫で下ろし、ベルトを外しチャックを下げて下着の中へ手を滑り込ませる。既に反応を示し始めているモノに触れると、ナギはギュッと蓮の首に抱きついて来た。そのまま何度か扱くと、それは徐々に熱を持ち質量を増し硬く張り詰めていく。
「ひゃ……ぁ……ッだ、だめ……っ」
既に硬く反り返ったそれを優しく掌で包み込みユルリと上下に扱くと、ナギは切なげに眉根を寄せ酷く色っぽい溜息を吐いて身を震わせた。
「やっ、……ん、んんっ……ぁ、あっ」
「……凄い濡れてる。此処もヒクついてきてるよ?」
先端の窪みを指でグリグリと押し広げるようにして撫で回し、鈴口を爪を立てるように引っ掻けば透明な雫が溢れ出して蓮の手をしとどに濡らす。
胸の飾りに舌を這わせ、時折歯を立てて刺激しながらもう片方の手で性器を扱いてやれば、ナギは蓮の肩口に顔を埋めて「あ、あ」と途切れとぎれに嬌声を上げながらはぁ、と熱い吐息を吐いた。
「っ、もう、出そ……」
「……まだ駄目だよ」
「え、ぅあ……っなんで!?」
ナギが絶頂に達しそうになった瞬間、蓮は動きを止めて根元を強く掴んだ。突然の事に戸惑うように蓮を見つめて来る彼に苦笑しつつ唇を寄せて耳元に囁きかけた。
「ずっと気になってたんだ。お兄さんじゃなくって、名前で呼べって言ったよねぇ? だから、お仕置き」
「っ、だ、だってそれは……っ!」
「それは?」
耳に息を吹きかけながら舌先を耳の中にねじ込ませる。同時に、再び性器への責めを再開すると、「あ、ぁあ……ッ、だ、め……ぇ……ッ」と喘ぎ混じりの声が上がった。
「ねぇ、どうして名前で呼んでくれないんだい?」
耳元で囁きわざと音を立てながら舌先を挿入すると、ナギの身体が大きく震えた。
「あぁ、あ……っ、や、だ……っ、耳、だめ……っだ、だって、恥ずかし……かったから……ぁあっ!」
ナギはビクビクと身体を震わせて蓮にしがみつく力を強めた。限界を訴えるものの根元を握られているせいで射精する事が出来なくて苦し気に顔を歪めるその姿さえ淫靡に見えるなんてどうかしていると思う。けれどそれが余計に欲情を煽ってくるものだから質が悪い。
「ッ、可愛いけど。ダメ……イくのはお預けだよ」
「そんなっ!」
抗議の声を上げる彼を無視して耳をねっとりと舐めながら再び手淫を再開すると、今度は両手を使って激しく責め立てていく。
「ああぁっ……や、ぁっ! それ、されるとイく、いきそっ……っ」
「だから、ダメだって言ってるだろう?」
今にも達してしまいそうになっている彼を制止すると、苦しげな表情を浮かべた彼が恨めしげにこちらを見てくるのがわかるが、構わず手の動きを速める。
限界まで上り詰めた所でまた動きを止め、少し落ち着いた頃合いを見計らって再び追い詰めていく。
「は、ぁっ……あっ」
「あー……やば……。可愛いな。その顔……堪らない。腰を僕のに押し付けてくるし……誘ってるの?」
「ちが……っ、勝手に……っ」
無意識のうちに腰が動いていたのだろうか。蓮の言葉にナギの顔が羞恥に染まっていく。
「本当にナギはエロい子だね。僕の膝の上で腰を揺らしながらこんなにいやらしい汁垂らして、今にもイきそうになって……」
「っ、言、わないでよっ……」
耳元で囁かれ、真っ赤になりながらも腰を揺するその様子に思わずゴクリと唾を飲み込む。
――本当ならこのままナギを思い切り泣かせてしまいたい。恥ずかしがる姿が見たいし、感じている顔をもっと見たいとすら思う。
蓮はゆっくりと立ちあがり、ナギをベッドに組み敷くと中途半端に脱がせていたズボンと下着を足から抜いた。
そして、枕元に置いてあったローションを手に垂らすとヒクつくソコに指を数本埋め込んでいく。
「ハハッ、あっさり入ったね。物欲しそうに僕の指に絡みついて……本当にエッチな身体だ」
「ぅ、……ッ、そんなこと……言っちゃやだ」
「だって本当の事だし。ほら、ココ、トントンするだけでキュウキュウ締め付けてきてる。もう一本増やすよ? 大丈夫、ちゃんと解してあげるから」
「あぁ……っ」
一度指を引き抜くと三本まとめて一気に突き入れる。その衝撃にナギは大きく背をしならせた。
ナギは本当に快感を得やすい身体をしている。それは初めて彼を抱いた時から薄々感じていた事だった。更に言えば、少し虐めてやるととても悦ぶ。本人にそんなつもりは無いらしいが、今も焦らされて、簡単には達せない状況に少なからず快感を強めている。
「んんっ、ふ……っ、あ……っ」
「気持ちいいかい? 中がピクピク動いてるのが指先に伝わって来る」
「は、ぁ……っ、だ、め……」
「何が?」
「っ、……意地悪……っ」
拗ねた口調で言いながら、過ぎた快感に潤んだ瞳で睨まれると堪らなく愛おしい気持ちになる。
「ねぇ、も、我慢、出来ない……っ早く、コレ、ちょうだい?」
強請るように腰を揺らし、伸びてきた手が不意に蓮の性器をするりと撫でた。
駆け引きも何もなく自分を求めて来る姿が可愛くて仕方がない。
「――……っ、反則……」
ぼそりと呟くと、蓮は自らのズボンに手を掛けた。ナギの熱く濡れた眼差しに誘われるまま口付けて舌を差し入れれば、ナギは夢中で吸い付いて来た。その舌が、唇が、蓮が欲しいと語っているようで愛おしさが募る。互いの唾液を交換し合うような深いキスを交わしながら腰を抱き、両足を抱えて肩に掛けさせる。
大きく開いた脚の間に身体を割り込ませるとそのまま体重を掛け一息に押し込んだ。
途端に大きく仰け反った身体を押さえつけるようにして更に奥へと侵入していく。
――熱い……。
肉壁がきゅうっと締まり、熱く脈打つ感覚に蓮は小さく息を飲むと、ゆっくり腰を回して内壁に自身を馴染ませていった。
「んん……っ、ふ、……っ」
「痛くない?」
問いかけると、ナギはコクリコクリと何度も首を縦に振った。
「へ、平気……っ、ん……っ」
痛みを感じてはいないようだが、やはり違和感はあるのだろう。眉根を寄せてどこか辛そうな顔をしているのを見て、少しでも楽になれば良いと思い額から瞼、頬、首筋、鎖骨の辺りに優しく唇を落としていく。
「ぁ……っ、ふ……っ」
その間もゆるく腰を動かし続けていれば次第に彼の口から漏れる声には甘い響きが混じってくる。
シーツを掴んで、快感を堪える姿がいじらしくて、つい意地の悪い事をしたくなる。
「――此処だよね?」
「え……? ひゃっ!?」
腰を掴んである部分を擦り上げた瞬間、ナギが大きく目を見開き甲高い悲鳴を上げた。
「やっ、だ、だめ……そこ……っ」
「どうして? 此処突かれるの好きでしょう?」
「す、好きじゃな……っ、ああっ、そこばっか……やぁっ!」
前立腺を刺激しながら、最奥を突き上げるように強く腰を打ち付けると、ナギは頭を左右に振り乱しながら身悶えた。
「あっ、あぁっ……だ、め……ぇっ、そこ、おかしく、なる……っ」
泣きながら訴えるナギの姿は酷く艶めいていて、興奮が煽られ、蓮の理性を奪っていく。もっと啼かせてしまいたい衝動に駆られ抽挿を速めていくと
「あっ、あぁ……ッ」と喉を震わせて喘ぐ声が高くなる。
「ああっ! あ……っ!」
「すごい……っ、ここ、ぎゅうぎゅうって僕を締めつけて離さないよ? もっと乱れるところが見たい」
「そんなの、み、見なくて、いいってばっ!やだぁっ!」
「ダメだよ。可愛い顔見せて? ほら」
「ああぁっ!」
腕を引いて上体を起こさせると、繋がった部分がより深く刺さってナギが苦し気に息を詰める。
「っ、ぅ……んんッ」
「あぁ……凄い。全部見えるよ」
「み、見なくていいってばっ」
指摘されたことが恥かしいのか、抱き着いて来て必死で隠そうとする姿にすら興奮を覚える。
そのせいで中のモノが大きく質量を増した事に驚いたナギはビクンと身体を大きく跳ねさせた。
「はぁ、可愛い……」
ベッドのスプリングを利用して腰を掴んで下から突き上げてやれば、「ああぁっ」と背中に爪を立ててしがみついて来る。その仕草一つにさえ胸の奥底から込み上げてくる感情がある。
突き上げながら目の前にある胸の飾りを指で捏ねたり、吸い付いたりして愛撫してやると、途端に中がきつく締まった。
「あ……、んんっ……それ、や、ぁっ」
「いや? 気持ちよさそうに僕を締め付けて来るけど」
「きもち、良すぎてやだぁ……っ」
「――っ」
涙声で訴えてくるその姿に、蓮の鼓動がドキリと高鳴る。この子は本当に自分を煽るのが上手だと思う。
このまま激しく責め立てて達してしまいたいと思う反面、もっと長く繋がっていたいと相反する二つの想いが頭の中でせめぎ合う。
そんな葛藤をしているとは露知らず、切なげな表情を浮かべている蓮に気付いたナギは目が合うと、蓮の髪を撫でながら、深く唇を重ねて来た。
「ん、は……あっ、ぁあっ!」
口付けを交わしながら、ずっと放置していた性器を撫でると、ナギは切なげな嬌声を漏らして身体を戦慄かせ、蓮の腰に足を絡めた。
扱くスピードに合わせて自ら腰を振る様は淫靡でどうしようもないほどの欲情を煽らる。
「あっ、ぁあ! やば、コレ、気持ちい……っ!はげし……」
「激しい方が好きだろ?」
「そ、だけど……っ、はぁっ、も、イっちゃいそ……っ」
限界を訴えるナギに蓮は口角を上げると、根元を握っていた手を放し、腰の動きを一層速くする。
「やっ、ぁあっ! それ、激し……っ、ぁあも、出るっ」
同時に乳首を強く吸い、先端に軽く歯を立ててやると、ナギは背をしならせて白濁を吐き出した。
結局あれから時間ギリギリまで求め合い、濃密すぎる時間を過ごしてしまった。
本当はもう少し一緒に居たかったのだが、みんなにバレないよう戻らなくてはいけない。仕方なく支度を済ませ、ホテルを出る。
「もう、お兄さんってば……どんだけ溜まってたんだよ」
「ごめん、ごめん。ナギがあまりにも可愛かったから、つい。……って、また“お兄さん”って呼んだね?」
あれほど名前で呼べと言っているのに、中々呼んでくれる気配はない。
不満に思ってわざと指摘すれば、ナギはバツの悪そうに顔を背けてしまう。
「……今さら名前で呼ぶとか、恥ずかしいんだよ」
気恥ずかしくて名前を呼べないだなんて――なんて可愛いところがあるんだろう。
蓮はそんな風に思いながらナギの手を取って指を絡ませる。
驚いたように目を瞬いた彼は、すぐにはにかんだ表情を崩して、こてんと肩に頭を預けてきた。
外は肌を刺すような凍てつく寒さだが、繋いだ手は心地よいほどに温かい。
タクシーを待つ間、肩を寄せ合ってベンチに腰掛けていると――不意に名前を呼ばれた気がして振り返った。
「……やっぱ蓮じゃないか。夜中にこんな山奥で何してんだ?」
そこに立っていたのは、かつて同じ番組で共演したアクション俳優の一人――莉音だった。
まさかこんな夜更け、こんな場所で会うとは思ってもいなかった。思わず反応が遅れる。
(なんで、こんなところに……?)
疑問はすぐに霧散した。莉音の隣に、腕に甘えるように寄り添う女の姿を目にしたからだ。
「ねぇ、莉音。だあれ?」
妙に甘ったるい舌ったらずの声。
その女の存在に、蓮は思わず眉をひそめた。
正直言って、こういう派手なタイプの女性は苦手だった。
それはナギも同じらしく、蓮の服の裾をきゅっと握りしめ、困惑した眼差しを向けてくる。
「あー、コイツ……俺の知り合い。昔、共演したことあるんだ」
「ふぅん。なるほどね。……結構、綺麗な顔してるじゃない」
「……」
値踏みするように、頭のてっぺんから足先まで舐め回すように眺められるのは、決して気持ちのいいものじゃない。
「確か今、特撮に出てたよな? 最近よく話題になってる……」
「特撮? あぁ、あの芋っぽい女が出てるアレね。ふぅん……。あんな芋女がヒロイン役なんて可哀想。もっと綺麗どころはいくらでもいるのに。監督の目って本当に節穴ね」
小馬鹿にした視線に、ナギの肩がピクリと揺れる。
「……あの女、ムカつくっ! みっきーがどんな思いで頑張ってるか知らないくせにっ!」
「ナギ、よせ。相手にするだけ無駄だよ……」
声で制したものの、内心では蓮だって腸が煮えくり返る思いだった。美月の必死さを誰より知っているからこそ、尚更だ。
「行こう。これ以上、話したって無駄だ」
踵を返そうとしたその瞬間――莉音が下卑た笑いを浮かべた。
「なんだよ蓮、もう帰るのか? せっかく久々に会えたのにな。……つーかよく見りゃソイツ、主人公やってる奴じゃん。……マジでさ、こんな時間に二人で“ナニしてた”んだよ?」
あからさまな冷やかしに、蓮は吐き気すら覚えるほどの嫌悪感を覚えた。
「別に。お前には関係ないことだろ」
「ツンツンすんなよ。……そういや、お前、ゲイだって噂、昔からあったよな」
間を置き、唇の端を歪めて――まるで勝ち誇るように吐き捨てられたその言葉に、背筋がゾクリとする。
「つまり……そういうこと、だろ?」
「……行こう、ナギ」
鋭い視線を残したまま、蓮はナギの肩を抱き寄せ、振り切るように足早にその場を立ち去った。