テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
※共依存のしすぎ、暴言の表現あり。
※ネガティブ発言多めなので注意。
(「死にたい」等はよく出ます)
「君を泣くほど愛してる」が個人的に好きだったのでそれの続編です。
「あ”ー…」
乾いた音を発した喉が痒い。
いつからだろう、風呂に入らなくなったのは。
勇斗の帰る時間が一秒ずつ延びていく度に死にたくなる。
胸の真ん中からじわじわと黒く染まるように。
今思い返せば、始まりはほんの小さな事だった。
当たり前の事なのに俺が重く重く感じただけだ。
あの収録で起こった事はとても鮮明に覚えている。
それを深く考えすぎて勇斗からも心配され、
あー俺って居ない方が勇斗も皆も楽かなー
なんて事を普段から考えるようになった。
俺の唯一の癒しである勇斗が癒してくれるのに、それを俺の心が弾いて止まない。
皆みたいに素直で居られたなら、こんな事考えずに済んだのに。
薄暗くなった部屋の中で、一人座っている。
朝からカーテンなんて開けていないし、着替えも、食事も、何もしていない。
黄ばんだTシャツが臭いを発して鼻がもげそうになる。
外から聞こえる小学生の声とカラスの声が鬱陶しくてイライラする。
ふと目に入ったコップを窓に向かって投げても、カーテンが邪魔して床に落ちてただ、割れた。
いっそベランダに出て飛び降りたいくらい。
…そんな勇気も無いくせに。
ガチャ。
そう玄関から音がして、
あぁ、また地獄が始まる。
と思った。
迷惑をかけてるのは分かってる。
分かってるけど、理解しただけで何も変わらない。
カ…チャ…。
『仁人ただいま〜…起きてる…?』
あーどうしたら良いんだろう。
ただ横たわって泣く事しかできない。
死にたい。
消えたい。
言いたいだけ。
昨日は勇斗に酷い事を言ってしまった。
「死ね」とか「出て行け」なんて、思っていないのに。
『…あ、起きてる。仁人ただいま…ほら、こっち向いて?』
涙で見えない視界を無視して振り向くと、勇斗が両手を広げて笑顔で居た。
息をしながら手と脚を動かす。
今日一日の中で一番運動をした瞬間だ。
『今日も一日お疲れ様。今日は早く帰れて良かった…!早く仁人に会いたくて俺も死にそうだったしさ(笑)』
「…はや、と、すき。」
『俺も。大好き。今から晩御飯作っても良い?あんまりお腹空いてない?』
大粒の雨が降り注ぐように床に涙は落ちた。
どうしようも無い気持ちだけが詰まった涙が。
「…たべる。」
『えっ、凄いじゃん!食べるの!?昨日のりんごからレベルアップ!ナイスッ。』
昨日は三食何も食べたくなかったから何も要らないと思っていた。
深夜に寝られなくて起きていると勇斗がりんごを剥いて持って来てくれたのだ。
「お腹空いてると寝れないよ」って。
りんごも何も食べるつもりは無かったのに、結局食べてまた朝に吐いた。
『じゃあ、ちょっと作ってくるけど…待てそう?』
重たい首を上下に動かし、また勇斗の目を見た。
優しい目がこちらを見つめる。
その瞬間にも大きな涙が溢れた。
じんわりと心に沁みるそれが唯一の光だと分かっていた。
『ちょっと(笑)泣かないで?無理しなくて良いからね。料理中もちゃんと仁人の事見てるからさ、無理になったら呼んでよ。ね?』
勇斗から放たれるオーラが眩しくて、虚しくて、心には毒で。
自分でも何がどうなったら満足するのか分からない。
少し頷くと勇斗はもう一度俺を抱き締めてからキッチンへと向かった。
微かに残った香水の香りで吐きそうになるが、勇斗の為に我慢した。
『そういえば、今日柔太朗からお菓子貰ったわ。仁人に〜だって。』
『…あ、別に食べても食べなくてもどっちでも大丈夫だからね?(笑)』
小さな鍋に水を足しながら優しく言う。
お菓子なんて甘ったるくて食べられたもんじゃない。
勇斗に食べてもらうのが良いが、何処か申し訳ない気持ちがある。
『ただ君だけがー…』
何を呟いたかと思えば、薄く歌い出す。
少し掠れながら無意識に歌うそれが、俺に向けて歌っているように聞こえてしまう。
『目が合う瞬間ー…』
俺って、今歌えるかな。
歌いたくもないのにそんな事をふと考えた。
もしも、明日復帰して皆で歌う事になったのなら、俺はどうするんだろう。
泣いて歌えなくて、皆に迷惑をかけるか?
それとも勇斗に支えられながら皆に迷惑をかけるか?
何をしても迷惑をかけてしまう事しか考えられない。
…また、泣いてしまうのか?
視界がぼやけてモヤッとした色しか見えない。
俺が勇斗の優しさや愛に触れたその瞬間に、必ず泣いてしまうのは何故なのだろうか。
『2人だけのらー…あ、ちょっと…。』
俺が泣いている事に気づいたようで、IHの電源を切ってこちらに来た。
ただ、こんな事で迷惑をかけたくないだけだった。
急いで息が荒いまま、汚い俺を抱き締める。
勇斗の服に染みる涙が温かい。
『大丈夫だから…仁人頑張りすぎたんだよね。人生の休暇に入っただけだよね…そう、だよね。』
勇斗の言葉が途切れ始めた時、耳の後ろで鼻をすする音がした。
手の内に力が入って、こんな事を言い出す。
『俺さぁ。仁人がっ、帰ってきたら、死んじゃってたらどうしようって…ずっと考えてた…。』
「…ごっ、めん。」
気持ち悪く響く自分の声を憎んで止まない。
『俺、仁人が、死んだらっ、死ぬから…一緒に居たい、から…。』
初めて勇斗からそんな言葉を聞いて、哀しみと嬉しみが全身を駆け巡った。
血管、筋肉、内臓、神経の何処までも勇斗の優しさで埋めたいと思う程に。
本当に、困った話だ。
『俺っ、一生、ほんとに一生、命懸けでっ…護るから!仁人の事っ、護るから…。』
不安と決意の混じった声が、心に響く。
俺のネガティブな感情も変にポジティブな感情も一生消えないだろうけど、それを抱えて生きるのだろうか。
…もう、良いかな。
「…はや、と。」
『どうしたの…?』
泣いて赤くなった目が真っ直ぐに見つめる。
「…あい、してる。…から。」
その愛に触れた瞬間に、勇斗の目からはもっと涙が溢れ出した。
こんなに広い世界の中で、こんなに小さい二人のしょうもない話なだけ。
ただ、愛を語るだけのこの会話で雨が降る。
『俺も、愛してるよ。』
明日こそは、晴れになるだろうか。