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視点🐼
ランタンの火と共に薄暗い路地の中を進む。
時間は午前2時ごろ。
真夜中の旧資料室に入ると幼い頃のワクワクした気持ちに似た感覚襲われる。
俺はその気持ちを抱え込みながらそーっと足を踏み入れた。
薄暗い雰囲気、冒険っぽくていい。
正直、こういう未知の空間に足を突っ込む瞬間が、人生の中で最も興奮する出来事だと思う。
棚の隙間に、埃まみれの紙束を見つけた。
指先でぱたぱたと埃を払うと、手触りはざらざらで――あぁ、この触感、たまらない。まるで新しい創作ネタを思いついた瞬間の脳内みたいにざわめく。
ページをめくった瞬間、俺は小さくガッツポーズした。
「……へへっ、見つけたぞ。SSR本!」
そこには、空を見上げる人たちの絵。
頭上には「太陽」って書かれた大きな円と、そこから広がる光の筋。
ランタンの灯りが絵に反射して、まるで本当に光が差し込んでるみたいに見えた。
隣のページには、こんな文章があった。
____________
※“真偽不明の古伝”として歴史書に記される一節
――昔、人は現世に住んでいたという。
そこは天が広がり、
“空”と名づけられた青い虚(うつろ)が頭上を覆っていたらしい。
“太陽”なる火の輪が毎日昇り、降り、
人々はその明滅を合図に暮らしていた、と。
だがそれを見た者はいない。
千年以上も前のことだ、確かめようがない。
空も太陽も、いまでは子どもが笑う御伽語りの道具でしかない。
けれど古い石板には、こうも刻まれている。
――現世は滅んだ。
異形のうねりに呑まれ、一夜にして破れ落ちた。
人は地下へ逃げ、
逃げて、逃げて、
闇の底で息を潜め、
そこに住みついた。
それから十の世紀が過ぎた。
現世への道は閉ざされ、
石は沈黙し、
記憶はすり減り、
真実はもう闇の向こうだ。
ただひとつ、残された言葉がある。
「導き手あらわれずば、現世は開かれぬ」
導き手とは誰なのか。
なぜ上が閉ざされたのか。
そもそも“現世”など本当にあったのか。
すべて曖昧で、手触りだけが残る。
けれど千年を経てもこの句だけは消えず、
歴史書にすら“伝説”の項として書きとめられている。
――いずれ導く者が来るのだ、と。
ただ、それがいつかは誰にもわからない。
____________
「空……」
小さく呟いて、紙の中の空を見つめる。
きんときの瞳みたいな深い青なのか。
それとも、俺の瞳みたいな水色なのか。
ほんとに、あるのかな。
でも、その瞬間――胸の奥でポンッと何かが弾けた。
一度も見たことがないし、触れたこともない。
なのに、この絵の空は、今までにないほどキラキラして見えた。
天井の岩盤の、もっとずっと奥。
その向こうにあるはずの空を思い浮かべながら、理想を掲げた。
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名前 中村 祐希(なかむら ゆうき)
年齢 10歳(16歳)
ポジション ディフェンサー
武器 仕込み杖
杖のように持ち手と刃の部分が真っ直ぐで、鞘に入れるとほぼ杖。
魔法 氷
身長 165cm