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某書き手様が使っていた”プリンセスタイム”という言葉を使いたくてお願いしたら快くOKいただきました。しかしいざ書こうとして思い知りました。自分ごときが扱えるレベルの言葉じゃなかった…。
※ここでの3人は付き合っていません。友達以上恋人未満的な…
暗黙のルールというものがうちのチームにもいくつかある。一番よくあるのは元貴が集中ゾーンを展開している時は『話しかけない、近づかない』というもの。その他もいくつかあるが、イベントやライブの衣装などを決める時発動されるものがある。それは
涼ちゃんの”プリンセスタイム”
うちのヘアメイクチームが涼ちゃんと一緒に涼ちゃんのビジュを作り上げていくというもの。やはりプロの集団だからか、元貴が考案する奇抜で、でも涼ちゃんに似合う衣装というよりも、正統派に寄せつつもチームの色を出し尚且つ涼ちゃんがより綺麗に見えるように仕上がる。
”かわいい涼ちゃん””綺麗な涼ちゃん”
色んな涼ちゃんが現れる度に、俺も元貴も世間も世界も、皆その笑顔の虜になる。
「追い出されちゃった。」
衣裳部屋から追い出された元貴が会議室へ入ってくる。こだわりが強い元貴は最初の頃こそ自分の意見を曲げなかったが、「涼ちゃん着飾り隊」の方々の実力が存分に発揮された涼ちゃんを見たら、曲が思い浮かんだのかこっちも集中ゾーンが展開され、多分当時10曲は作ったんじゃないだろうか?
それ以降、よっぽどのことがない限り元貴が口を出すことはなかった。
「プリンセスタイム?」
俺の言葉に、元貴は頷いた。
すると、同じく会議室内で作業していた涼ちゃんのマネージャーがカメラを手にいそいそと会議室を出て行こうとする。そこへ元貴はドスのきいた声で一言。
「ステイ。」
するとマネージャーは何故か嬉しそうに元の席に戻った。
何のプレイなん?これ
この涼ちゃんのマネージャー、元は元貴崇拝者で最初チームスタッフだったが、色々あって今は涼ちゃんのマネージャーをやっている。そして元貴崇拝を軸に箱推しならぬ箱崇拝になり、元貴だけでなく俺と涼ちゃんにまで崇め奉るかのよう接してくることがあるので少し怖い。何故こんなのをよりにもよって涼ちゃんのマネージャーにしたのか元貴に聞くと
「”体を張ってでも”じゃない。命に代えても守れって厳命してある。」
成程。つまり式神や使い魔的存在か。
「俺としては使いやすくて結構気に入ってるよ。」
魔王…もとい、元貴はにやりと笑った。
話は戻り、元貴は涼ちゃんがいるであろう衣裳部屋の方向を見た。
「”着飾り隊”は流石プロだと思う。勉強になるよ。」
「元貴がそこまで言うってすごいね。」
「俺謙虚だよ?」
「表向きはね。」
「おい。」
元貴は苦笑いしたが否定はしなかった。
「涼ちゃんこれ以上綺麗になったら俺らが防ぎきれない程虫が寄ってくるだろうね。現に一匹防衛線すり抜けてきてるのいるし。」
元貴の目がすっと細くなる。誰かは分かるがそこには触れないでおこう。そして何故か涼ちゃんマネはすごい勢いでPCのキーボードを叩きだした。怖ぇよ。
しばらく作業をしているとどこからか庶幾の唄が流れてきた。音を辿るといつの間にか扉の横に控えるように立っている涼ちゃんマネ。その手に持つタブレットから音楽が流れていた。そして、タイミングよく扉が開く。
「じゃーん!」
現れた涼ちゃんは緑のドレスに花をいくつも纏わせていた。これは元貴がデザインしたイベントの衣装。そして本来は同じように花がたっぷり乗った麦わら帽子を付けるはずだが
いつかのように三つ編みにした長い金髪
そこに飾られた沢山の赤と青の花
まさにラプンツェルそのもの
「どう?」
引きずるほどのロングドレスだからくるくる回れないけど、まるで尻尾のように三つ編みを揺らす涼ちゃんは可愛かった。
「うん、似合ってる。」
「すっげぇ綺麗。」
元貴と俺の言葉に、涼ちゃんは嬉しそうに笑った。
涼ちゃんの後ろでほっとする着飾り隊の方々、何故か手を合わせて涙を流す涼ちゃんマネ、通りがかった他のスタッフ達も『おぉ!!』と歓声を上げる。それほどまでに涼ちゃんのビジュが爆発していた。
「えへへ。お花が余ってたからね、元貴と若井の色を付けてみた。」
「涼ちゃんの頭は俺と若井でいっぱいってことね。」
「うん!」
冗談で言ったつもりだろう元貴の言葉に、意味がわかってない涼ちゃんは眩しい程の笑顔で頷いた。俺と元貴含めその場に居た全員が涼ちゃんビームをもろに食らってしまい、まさに『目がぁぁぁ!?』の状態になった。可愛いが過ぎる。
「愛されちゃってますね。」
スタッフの言葉に、俺と元貴は顔を見合わせて笑った。
イベント当日
三人とも頭のてっぺんから爪先まで、元貴が最初にデザインした衣装や小物やヘアメイクで身を包む。しかし、途中涼ちゃんは10分程離席。戻って来た時はあの時のラプンツェルになっていた。髪の色があの時と違うので花の配色は若干違ったが、それでも綺麗なことにはかわりない。
涼ちゃんという美しい花に集る虫をステルスで払いつつ、それでも防衛線突破してきそうな無謀な奴はやはりいつでもどこにでもいるようで
「藻部(涼ちゃんマネ)」
元貴が指をパチンと鳴らすと、どこからともなく涼ちゃんマネが姿を現した。
「はい。」
「プランCで。」
「御意。」
涼ちゃんマネはセットの影に消えていった。忍びか何かですか?
「若井。」
「なに?元貴。」
「プランC気になる?」
気にならないと言えば嘘になるが、知ったら多分きっと絶対もれなく盛大にこの上なく後悔するだろう。
「いいや大丈夫。聞かない方が安全という結論に至ったから。」
「相変わらずガード固いねぇ。」
「何かあった時『秘書が勝手にやりました』的な感じで『私は全く知りませんでした』って言うことができるだろ?」
「俺に何かあったら涼ちゃんと二人になれるもんね?」
怒りとか嫉妬とかそういう色は全くない、ただ悪戯っぽい瞳で元貴が俺を見ていた。
「元貴がいなくなったら俺は悲しいよ。涼ちゃんに至っては泣きすぎて死んじゃうかもね。」
元貴の眉間の皺が寄る。
「だから、簡単に”いちぬけた”はナシね。」
俺の言葉に、元貴はにやりと笑った。
「それはお互い様だろ?涼ちゃんもお前も、簡単に逃がしはしねぇよ。」
俺と元貴のある意味狂ったような気持ちを知る由もなく
涼ちゃんは向日葵のような笑顔を振りまいていた。
あぁ、本当に君は
花のように可愛らしくて美しい
Kei様、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁ!!!
コメント
8件
プリンセスタイム、マネの藻部さん、どれもツボ過ぎます🙏✨ そして、私も💛ちゃんビーム浴びたいです!!!笑
涼ちゃん愛されてるなぁー
え!? なんで謝罪を!? 素晴らしく可愛く面白く素敵なお話でしたが!? このほんわかな感じが弊社にはありませんので本当に大好きです🥰