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耀聖(ようせい)
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食パン
37
でも·····。
絵美ちゃんは笑っていなかった。
真顔でまっすぐに前を向いている。
あ、こうしちゃいられない。
先頭の私が歩き出さなくちゃ。
私は我に返り、先へと歩き出した。
三人に高尾が加わって、一気に力のバランスが変わり、歩きやすくなったのがわかった。
花日と高尾がくっつくように並んで教室に入ると、早速クラス一お調子者のエイコーが「新婚生活の道具でしょうか!?」なんてエアマイク片手にからかい始めた。
けれど、高尾がさらっとひと言「重いから持ってやってるだけ」と言ったので、その話はおしまいになった·····、ように見えた。
が、しかし、教壇の上にやっと地図を下ろした時、
「ありがとう! やっぱりラクだった!」
花日が高尾にお礼を言うと、
「あんまり無理すんなよ」
高尾が花日の頭を優しくポンポンと叩いた。
「うわあ〜」
教室はなんともいえない歓声に包まれた。
「出ました、リア充カップル〜」
「高尾、王子様すぎるぅ」
「いいなー、花日ちゃん!」
荷物を下ろしたことにホッとして、みんなが見ている前だということを忘れていたらしく、さすがの高尾と花日も、少し照れて赤くなっている。
新聞クラブはさっそく「号外〜! みんなの前で頭ポン! 頭ポンが出ました!!」と新聞を配っているジェスチャー。
教室のうわついた空気と、みんなのなんともいえないニヤケ顔やうっとり顔。
私はこの空気に苦笑しつつ、「大変なことになっちゃったね」と絵美ちゃんに話しかけた。
·····でも。
「·····」
私の声が聞こえなかったのか、絵美ちゃんは無表情だった。
高尾と花日を見ないようにして、寂しそうに、うつむいて·····。
「絵美ちゃん?」
思わずそう声をかけると、絵美ちゃんはハッとしたように私を見た。
「え? あ·····、ね〜」
絵美ちゃんにしてはめずらしく、なにかをごまかすような。ぎこちない笑顔。
いつものふんわりした笑顔とは全然違う、無理してる笑顔·····。
·····もしかして。
ううん、すぐにそんな風に考えちゃいけないけど、·····でも。
ー絵美ちゃん、もしかして、高尾のことが好き、なの·····?
コメント
1件
第11話、読み終えました。 周りが「リア充カップル」と盛り上がる教室の空気の中で、絵美ちゃんだけが笑っていない——その対比が、胸に刺さりました。彼女の「無理してる笑顔」に気づく主人公の視点も優しくて、 “もしかして” と想像するラストが切なくて、続きが気になります。言葉にできない感情を描くのが本当にお上手ですね🌷