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妖精を出して3分程度は、何事もなく経過した。
この何もないのに張り詰めている緊張感は、どうも苦手だ。
もちろん、技術がわからない他部署の偉い人や、道理が通じないクライアントが背後にいる状況よりはましだろう。
それでも何もしないで待つという経験があまりなかった俺には、疲れる時間だ。
何もしないというか、まあ警戒はしているのだけれど。
「そろそろ妖精の1体が戻ってきます。そうすれば向こう側の状況が、ある程度わかるでしょう」
問題は妖精に、どれくらいの観察能力と説明能力があるかだ。
でもクリスタさんの魔法で造られた妖精なら、そう酷いことはないだろう。
そう思いたい。
坑道奥の穴に、魔力の気配を感じた。
すぐにクリスタさんが放った妖精だとわかる。
「穴を出た向こう側は、幅4m、長さ80m位の空間だそうです。壁に硬化魔術がかけられている四角い空間で、明らかに人工的に造られたものと思われます。そして長さ80mのうち、奥側50mは水が貯まっているようです」
確かに、そんな四角い空間で硬化魔術がかかっているとなれば、人工でしかありえないだろう。
「魔物は、水が無い30m程度の部分にスケルトンが15体。この中にはアークスケルトンも含まれているようです。それより上位種のスケルトンはいません。また水中にも魔物がいるようです。水上に出てくる気配がないので、まだ種類はわかりません」
「アークスケルトンまでなら、そう怖くないのニャ。弱点は基本的にスケルトンと同様ニャ。動きが少しだけ速くて、少し頑丈な程度なのニャ」
アークスケルトンは、初心者講習の教本には載っていなかった。
少しだけ速くて、少し頑丈か。
そう怖くないというのがミーニャさん基準なのか、一般的な冒険者としての基準なのかは不明だ。
でもまあ、そのミーニャさんがいるから大丈夫ではあるだろう。
「それでクリスタ、魔法的痕跡は何かあったかニャ?」
「穴の奥、水が貯まっている場所から、それらしい魔力が出ているようです。それ以上は確認出来ていません。実際に行って確認する必要がありそうです」
いずれにせよ、溜まっている水が邪魔だ。
「水を抜いたり、魔法で蒸発させることは出来ないかニャ」
「出来るかどうかは、今はまだわかりません。向こうへ行った後、スケルトンを倒して安全を確保した上で、改めて調査・確認する必要があるでしょう。今わかるのは、そこまでです」
「わかったニャ」
ミーニャさんは頷いた。
「それじゃとりあえず、スケルトン15体を排除するのニャ。クリスタ、こちらへスケルトンの追い出しを頼めるかニャ」
「わかりました。次の妖精が戻りましたら、今戻った妖精を送り込んで攻撃を仕掛けましょう。坑道が崩れるとまずいので、弱めの風属性魔法で攻撃して誘導します」
「わかったニャ。次の妖精は、いつ戻るニャ?」
「あと2分程度です」
それまでは待ちか。
そう思ったところで、穴の方でまた魔力を感じた。
クリスタさんの妖精の魔力と、それ以外の魔力の両方だ。
「訂正します。妖精の出入りに、スケルトンが気づいたようです。こちらに出てきます」
クリスタさんの言葉が終わる前に、ジョンとミーニャさんが立ち上がる。
「わかったのニャ。まずはジョン、頼むのニャ」
「わかりました」
ジョンが弓を構え、矢をつがえる。
ミーニャさんは両手に斧を握り、クリスタさんも立ち上がった。
俺も立ち上がって、椅子を魔法収納に収納する。
穴の魔力が濃くなって、そして白い骨が出現する。
スケルトンだ。片手剣を装備した標準的なものが1体、また1体。
ジョンの弓が矢を放った。
最初のスケルトンは2本目の矢で頽れた。そして、続いて出てきたスケルトンも、やはり腰骨に矢を受けて崩れる。
そしてまた1体、更に1体……
合計10体のスケルトンが出てきて、そして倒れた。
完全に倒しきったわけではない。
骨がまだ振動しているし、魔力反応も残っている。
それでも、立ち上がったり、剣を振り回したりは出来ないようだ。
そして穴からは、追加で出てきそうな魔力は感じない。
「残りは出てこないようです」
クリスタさんも、俺と同じように判断したようだ。
ミーニャさんが頷く。
「弓が優秀だと楽でいいのニャ。でもせめて、とどめくらいは刺してくるのニャ。両手斧より戦斧の方がいいのニャ。エイダン、頼むニャ」
「どうぞ」
ミーニャさんから斧二本を受け取って収納し、代わりに戦斧を出してミーニャさんに渡す。
ごつくて重い、俺だと両手でしっかり持たないと支えられない戦斧を、ミーニャさんは片手で受け取って。
「ありがとニャ。では行ってくるニャ」
ミーニャさんは50m以上ある間合いを一気に詰めて、戦斧を軽く振りかぶった。
「終わりニャ」
振りかぶっては、戦斧をスケルトンの頭蓋骨部分に叩きつける。
派手な音が何回かした後、スケルトンの動きが完全に止まった。
魔力の反応から、倒したことがわかる。
「魔石を回収します」
クリスタさんがそう言いつつ、歩き始めた。
俺とジョンも、ミーニャさんの方へと歩いて行く。
穴から、さらに妖精が出てきた。
「向こう側にあと5体、アークスケルトンが残っているようです」
「わかっているニャ。なので、乱戦用で両手に斧装備ニャ」
ミーニャさんが俺に差し出した戦斧を収納し、さっきまでミーニャさんが使っていた斧を、一丁ずつミーニャさんに渡す。
「ありがとニャ。それにしても、ここまでが楽過ぎて、逆に不安なのニャ。クリスタと一緒で、こんなに楽ニャのは、今までになかったのニャ」
ミーニャさん、よっぽど酷い目にあっているようだ。
冗談という感じではない。
クリスタさんは、いつも通りの表情で頷いた。
「エイダンさんとジョンさんが優秀なおかげですね。普通の攻略をすれば、入口から最初の分岐までで1日、ここまでで1日かかっても不思議ではないですから」
「この後も、こんな感じで終わって欲しいのニャ。で、穴の向こうはどうなのニャ?」
「アークスケルトンが5体。穴の出口の左右で2体が待ち構えていて、その後ろに3体が控えている状態です」
つまり、穴を通ると同時に戦闘になるということのようだ。
それって結構、危険な状態なのではないだろうか。
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