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冷たい風に吹かれたせいで冷えきった体をオンボロ寮の談話室の暖炉が温めてくれる。暖炉の炎がじんわりと体を溶かしていく。談話室の少し塵臭いソファに座り力を抜いてリラックスする。部屋の外、廊下の奥からはキッチンからのカレーの匂いが漂ってその香りにお腹の虫が鳴き声を上げた。
「お、お前こんなところに居たんだゾ!」
背後からいつの間にか部屋に入ってきたグリムがツナ缶を手に持って話しかけてきた。
「ただいま、さっき帰ってきたんだよ」
ふーん、と適当に返事をしてグリムはツナ缶を開けてその場で食べ始めた。
「うわっ、ちょっと後でその地面に食べ散らかしたツナ拭いてね?」
キッチンからエプロンと三角巾を付けた監督生が手にお盆を持って部屋に入ってきた。お盆の上にはカレーの入ったお椀が2つ乗っていて湯気を上げている。彼はソファの前のテーブルにカレーを置いて私にスプーンを渡してきた。
「はい、これ今日の晩御飯!またカレーだけど、許してね?」
「ありがとう」
監督生は私の隣に座ってカレーを食べ始めた。が、途中ふっと彼は立ち上がりポケットからスマホを徐に取り出した
「そういえばこれ見てよ!賢者の島の近くに新しい島が出現したって話あったでしょ?その島との国交が始まるんだって!今日は学校でこの話題で持ち切りだったんだよ」
スマホでニュースサイトを開いて私に画面を見せてくれる。開かれた画面には見知った光景が映されていた。
「これって…」
━━━━━━━
深夜十二時オンボロ寮の一室にぼんやりと明かりが見える。
部屋の主である茉白は購買部で買った少し黄ばんだ便箋に筆を走らせる。
まるで藁にもすがる思いで慣れない手紙を綴る。
次の休みの日には、麓の街に下りてこの手紙を出しに郵便局に行こう。国交を始まったばかりで手紙が届くかはわからない……
けれど、もし貴方にもう一度だけ相見えるのならば。
私の記憶上の彼は手に持ったプリントを睨みつけながら私に話しかけてくる。今週の特訓内容や昨日の反省点、イベント参加予定等。
「また、会えるかな…」
震えた声で発した思いは誰にも届かず闇に消えていった。