【お願い】
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「お、ないちゃんお疲れー」
ないちゃんの自宅マンションの前、ちょっとおしゃれな花壇のブロック部分に腰かけていた僕は、主が戻ってきたことに気づいてひらひらと手を振った。
「しょうちゃん!? え、どうした? 帰ったんじゃなかったっけ」
やることがあるって言ってたじゃん、と続けたないちゃんに、僕は小さく頷く。
「とりあえず終わらせたい作業は終えてきた。寒いから中入れてー」
「連絡くれたらよかったのに」
「いやいや、みんなで楽しくご飯食べてるとこ悪いやん?」
練習していたスタジオで別れてから3時間ほどが経過していた。
まろちゃんと別れて家に帰り、PCと向き合いながら作業を終え急いで再び外に出て…今に至る。
「何かあった? こんな時間に珍しくない?」
家の鍵を開け、ないちゃんは中へ招き入れてくれる。
エアコンをつけるとすぐに暖かい風が吹いてきた。
「ちょっと話したいことあって…。ないちゃんは今大丈夫? 残った仕事とか…」
「まぁ作業はあるけど…別に後でも大丈夫だから」
コートを脱ぎ、手洗いを済ませるとないちゃんはすぐに手際よく湯を沸かし始めた。
「お構いなくー」と軽く声をかけると「ふふ」と小さな笑みが返ってきて、それはもういつも通りのないちゃんだった。
まろちゃんほどじゃないけど、ないちゃんも内面を隠すのは結構うまい。
…おそらく、子供組と言われる僕らに対しては特に。
「で、なんか重要な相談?」
コーヒーを淹れたマグカップを僕の前に置きながら、ないちゃんは真剣な顔でそう尋ねてきた。
ソファの前の床に直に座り、僕はそれを受け取る。
熱いはずのそれは萌え袖のおかげで熱が緩和された。
「相談…は、ないちゃんがしてくれたらうれしいなぁと思うんやけど」
「……え?」
ローテーブルを挟んで僕の前に座りながら、ないちゃんは大きな目を丸くした。
零れ落ちそうな瞳を見つめ返して、僕は微かに笑みを浮かべてみせる。
「まろちゃんと、何かあった?」
遠まわしな表現は避けて直接的に尋ねると、ないちゃんは一瞬目を瞠ったように見えた。
だけどそれも一瞬のことで、すぐにいつも通りの笑顔を浮かべて「何で?」と首を捻りながら答える。
さすがのポーカーフェイスだけど、崩れるのも時間の問題だ。
「さっき帰りがけ、なんか二人の様子がおかしかったから。ケンカでもした?」
ありえないと思いながらも、そう尋ねてみる。
「まろとケンカなんてするわけないって」
おかしそうに笑って、ないちゃんはコーヒーを一口飲む。
それはそうだろう。
2人共大人だし、性格的にも真正面からぶつかるタイプじゃない。
…特にまろちゃんが。
「じゃあ質問変えていい?」
マグカップを両手で包み込むと、袖越しにじんわりと熱が伝わってくる。
改めた言い方で聞いたものだから、ないちゃんは少し居住まいを正すように背筋を伸ばした。
嫌な予感がしたのかもしれない。
「ないちゃん、まろちゃんのこと好きなん?」
さっきまでより直接的な問いに、ないちゃんは警戒していた目をそのまま僕に向けた。
一瞬その瞳が揺らいだ気がする。
少しの間の後、ないちゃんはすっと目線を僕から外した。
「いや、そりゃ好きに決まってるじゃん。メンバーだし家族みたいなもんだし」
この場での百点満点の回答が返ってきた。
だけど今回はそれで引き下がるわけもない。
「そういう意味ちゃうって、分かってるやろ? ないちゃん」
僕は本当に、あの時まろちゃんに聞かれるまでないちゃんが誰かを好きだなんて考えたことがなかった。
仕事にストイックで、手を抜くこともなく毎日突っ走っているないちゃん。
常に全力すぎて、見ているこちらからしても恋愛に時間をかける暇なんてないんじゃないかと思っていたから。
でもまろちゃんに聞かれて、ふと思った。
もし…もしも、ないちゃんが誰かを密かに想っているとしたら?
心当たりは、一人しかおらんやん?
「なん…で?」
マグカップを持つないちゃんの手が、少しだけ震えて見えるのは気のせいだろうか。
崩れたポーカーフェイス。
動揺したような目を見つめ返して、僕はふっと笑みを零した。
ないちゃんに「僕は味方だ」と思ってもらえるように。
「いや…ほんまに何となくなんやけど…今日帰りがけの2人見ててもしかしてと思っただけで」
本当はまろちゃんとの会話がなかったらそこまで確信に近い思いではなかった。
でもそこはあえて言わず、まろちゃんとのやり取りはないちゃんには全部伏せる。
しばらく考え込むように黙ったないちゃんは、顔を俯けて床を見つめていた。
ピンクの髪が、たまに主の困惑した感情に合わせるかのように揺れる。
畳かけるようなことはせず、僕は黙ったまま返事を待った。
「……迷惑、は、かけないようにする」
やがて返ってきた言葉は予想していなかったもので、僕は「え」と目を見開いた。
「迷惑って…誰に?」
「メンバー皆に。態度に出さないように気をつけるし、できるだけ気まずくならないように頑張る」
「いやいやいや、頑張りどころ間違っとるし!」
そもそも今日スタジオを出るときに僕が2人の間に何らかの空気の変化を読み取った時点で、「態度に出さないように」は無理がある。
「ないちゃん、別に責めとるわけじゃないんは分かってほしいんやけど」
僕やメンバーに咎められるとでも思ったのだろうか。
なだめるようにそう言うと、ないちゃんの瞳がもう一度揺らいだ気がした。
「ないちゃんの気持ちを否定したいわけでもないんよ。ただ、苦しいなら相談してほしいってだけで」
マグカップの取っ手を握るないちゃんの手が、ぎゅっと更に力をこめたのに気付く。
もう一度目を伏せて、「…でも」と普段のリーダー然たる態度とは真逆の弱々しい声が続いた。
「俺、もうフラれたから…あとは何事もなかったかのように振る舞うのを頑張るしか」
「…………え?」
ないちゃんの続けた言葉に、僕の反応はかなり遅れたと思う。
目を瞠り、首を傾げながら目の前のないちゃんを凝視してしまった。
…今、何て言った? フラれた?
え、でもまろちゃんは……。
『ないこに好きな相手がおるかどうかって知っとる?』
先刻の彼との会話が鮮明に蘇ってくる。
まろちゃんがないちゃんをフッた?
もしそれが本当なら、まろちゃんからあんな発言が飛び出すはずなくない?
「ないちゃん…フラれたって……何かの間違いちゃう?」
おそるおそるといった感じで、僕はないちゃんにそう尋ねた。
訝しげな目をしたないちゃんが、僕の顔を見つめ返す。
「どうやって告白したん? 電話越しとかテキストチャットとかやと言葉の取り違えとかでちゃんと伝わらんこともあるかもしれんし…」
「直接言ったよ」
「表現が遠まわしやったとか」
「……首に抱きついて『すき』って言った」
「………」
「………」
思わず黙りこんだ僕に、ないちゃんも同じように唇を引き結ぶ。
メンバーのそんな深い事情……できれば知りたくなかった。
…いや、聞いたのは僕やけど。
「………で、まろちゃんは何て言ってフッたわけ?」
「何も。後でその話しようとしたら『覚えてない』って完全拒否された」
んんんんんんんんんん?
なんか…いろいろとおかしくない?
ないちゃんの話に矛盾はないけど、まろちゃんの態度や発言と噛み合わない。
「ないちゃん…もう一回聞くけど、なんか君らすれ違ってない?」
「ないよ。俺が勢いで告って拒絶されただけの話」
そこでないちゃんがまだ熱いはずのコーヒーを一気に飲み干したのは、自分の内にある苦い思いも一緒に流し込みたかったのかもしれない。
「だから…せめて皆には迷惑かけないように、態度には出さないように気をつける」
誓うように重ねて言ったないちゃんの言葉に、僕はそれ以上かけるべき声を持ち合わせてはいなかった。
コメント
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返信遅くなりました! 🐇くん優しい、、惚れてしまいそうです!!ww これからもがんばってください!