【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
ないちゃんはああ言ったけれど、現実はそんなに甘くない。
それから数日の間、確かに表向きは普通にしている2人だったけど、流れている空気が明らかに前までとは違っていた。
「いふまろ、これお願い」
ないちゃんが何か重要そうな書類を手渡すと、「…おー」と応じてまろちゃんがそれを受け取る。
そんな何の変哲もないやり取りが、逆に前までとは異質だった。
お互いに冷たくしているわけでもなく、避けているわけでもないのに。
「普通」がどれだけ貴重で難しいことなのか、外から見ている方が思い知らされる。
「どうしたもんかなぁ…」
ある日練習を終えた後、僕はそんな大きな独り言を漏らしてしまった。
メンバーもスタッフもほぼほぼ帰った後だった。
今日も2人の様子は相変わらずで、見ているこっちの方が胸が痛む。
何とかしてあげたい気持ちはもちろんあるけど、どうすればいい方向へ向かうだろう?
椅子に座ったままそんなことを考える。
吐息まじりに上を向いた瞬間、後ろから顔を覗き込まれた。
天井を向くように仰向いた視界に、水色の髪が映る。
「どうしたのしょーちゃん」
「びっ…くりしたぁ」
思わず椅子からずり落ちそうになったけど、寸でのところでこらえた。
座り直す僕に、いむくんが「何か悩みごと?」と尋ねてくる。
「いやー悩みごとっていうか…」
頭を左右に何度か振って、僕はいむくんの大きな目を見つめ返した。
それから僕は、リア友の話だと装って話し始めた。
お互いにすれ違っていそうなんだけど絶対にお互い嫌いではないこと(実際ないちゃんの方の気持ちは確認取れてるし)。
普通にしようとしてるのに普通じゃなくって見ていてもどかしいこと。
そんな2人に何かしてあげられることはないかってこと。
かいつまんだ話し方だったとは思うけれど、いむくんは「ふんふん」と相槌を打ちながら聞いてくれていた。
だけど聞き終えた後の彼の反応は、いつもかわいらしいと評されるいつものいむくんとは真逆だった。
「放っとけばよくない?」
返ってきた返事に、僕は思わず「え」と眉を持ち上げた。
「っていうか、放っとくしかなくない?」
「いやでも、絶対お互い好きなんやと思うんよ。でも勘違いかなんかわからんけど、今はすれ違っとるだけで…」
「そういうの第三者が入ってもいい方向にはいかないと思うけど」
正論が返ってきた。いや、分かってる。
僕だって変に介入するのがよくないってことくらいは。
でもあの2人のことは家族だと思ってるし、力になりたい気持ちも嘘じゃない。
「勘違いしてすれ違って…それでそのまま気まずくてダメになるならそれまでの縁なんだよ」
「……手厳しいね、いむくん」
うーんと唸りながら、僕は腕を組む。
メンバーの中では一番かわいいとかショタボとか言われるいむくんだけど、実はこういうところは誰よりも男らしいかっこいい性格をしていると思う。
「大体さぁ、しょうちゃんにこんなに心配させるなんていい年して何してんだろうね」
「…うーん…」
「『頭いい』くせに変なとこで『頭悪い』よね。ないちゃんもいふくんも」
「…うーん………って、えぇぇぇぇぇっ?」
僕、2人の名前は一切出してない…よな?
驚いて変な汗が吹き出しそうになった僕の表情を、苦笑い気味に見据える。
「いやさすがに分かるよ。分かりますよ。ここんとこ2人共様子おかしいし」
多分アニキやりうちゃんも何となくは気づいてるんじゃない?と付け足して、いむくんは首を竦めた。
「自分たちで解決するしかないでしょ」
そう締めくくったいむくんは、「ほら」と言いながら僕の腕を引っ張って椅子から立ち上がらせた。
「ほらほら、帰ろー。しょうちゃんが2人のことでそんなに悩む必要ないよ」
ポンポンと背中を叩かれての一言に心が軽くなった気はしたけれど、「そうだね」とあっさり2人を切り捨てるような気持ちにはなれるはずもなかった。
その後メンバー全員が顔を合わせたのは、さらに数日後のことだった。
ないふ2人の関係は相変わらず。
僕がそれをもどかしく思うのも、現実的には何もしてあげられないのも相変わらずだった。
「しょうちゃんー、今日こそはごはん行こうよ」
会議が終わって帰り支度を始めていると、いむくんがそう声をかけてくる。
ゆうくんやりうちゃんには今日は予定があるらしく断られたみたいだ。
「いいよ」と短く答えると、いむくんは嬉しそうに「やったぁ」と笑った後ないちゃんの方を向き直った。
使った書類を整理していたないちゃんに同じようにお誘いの声をかけている。
今日も変わらずどこか空元気でいた彼は、少し困ったように笑った。
「うーん…そうだな、行こうかな」
「やったー。いふくんは? いふくんも行こうよ」
ないちゃんが来ると分かるとワンランク声のトーンを上げたいむくんは、そのまままろちゃんにも声をかけている。
……チャレンジャーやなぁ。この前の僕の話を忘れたわけではないだろうに。
「予定あるから帰るわ」
「そうなの? ふーん、じゃあまた今度ねー」
いむくんは特に引き留めることもなくあっさりと引き下がった。
「何食べよっかな」と歌でも歌う口調で楽しそうに繰り返している。
その横で、書類を片付け終えたないちゃんがそのうちの数枚だけ別によけた。
そのまま、帰ろうとしていたまろちゃんに手渡す。
「まろ、これ今日の分」
目の前に差し出された資料を、まろちゃんは一瞥した。
そしてそれから受け取り、すぐさま鞄の中へしまう。
「ん。おつかれー」
最近恒例の、いつものやり取り。
…いや、むしろこういう仕事上での書類の受け渡し以外を見ていない気がする。
…「普通」ってなんなんやろな。
漠然とそんなことを思うと、いむくんも同じことを思ったのか少し不満そうな顔をしていた。
まろちゃんがそのまま部屋を出て行くのを見送った後、いむくんは「さて」と仕切り直すように両手をパンと叩いた。
「3人で何食べに行こっかー」
楽しそうな高い声が響く。
「そうやなぁ」と相槌を打ちながらないちゃんを振り返った瞬間、僕は思わず目を瞠った。
「ないちゃん!?」
声を上げた時には遅かった。
慌てて伸ばした手は届かずに空を切る。
グラリとないちゃんの体が揺らいだのを目に捕らえたと思ったのに、間に合わなかった。
ガターーンとテーブルや椅子がけたたましい音を立てる中、ないちゃんの細い体が床に倒れる。
その姿を見て悲鳴に似た声を上げるいむくんの叫びが、僕の耳にこびりついて離れなかった。
コメント
1件
白さん視点で見るのもとても面白いです……✨✨ リアルでも水さんは可愛いイメージですけど裏ではちゃんとした考えを持ってそうで余計にのめり込んでしまいました😖💓 青桃さん達のすれ違いが続くのが心がぐわんぐわん揺れちゃいます!いつお互い気づくのかドキドキですっ、最後の桃さんが倒れてしまった理由も含め気になることが満載です……🤔✨