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文化祭当日。
朝から学校はお祭り騒ぎだった。
校門にはアーチが立ち、模擬店の呼び込みの声があちこちから聞こえる。
そんな中、僕――湊は写真部の展示室にいた。
「よし、準備完了」
最後の確認を終えて一息つく。
壁いっぱいに並んだ写真。
文化祭に向けて撮り続けてきた作品たち。
少し緊張する。
本当にみんな見てくれるだろうか。
すると。
ガラッ。
展示室の扉が開いた。
「先輩!」
一番乗りは蓮だった。
「おはようございます!」
「おはよう」
「絶対今日すごいですよ!」
朝から元気だ。
大型犬どころじゃない。
超大型犬だった。
「蓮も展示あるだろ」
「あります!」
「見に行くよ」
「本当ですか!?」
目を輝かせる。
尻尾が見えそうだった。
◇
文化祭開始から一時間後。
異変が起きた。
「ねえ、この写真すごくない?」
「綺麗……」
「誰が撮ったの?」
展示室に人が増え始めた。
最初は数人だったのに。
気づけば部屋の中はかなり賑わっている。
「湊先輩」
蓮が興奮した様子で駆け寄ってくる。
「人めちゃくちゃ来てます!」
「本当だ……」
想像以上だった。
特に人気なのは人物写真。
部活風景や日常の一瞬を切り取った作品に、多くの生徒が足を止めている。
そして。
「これサッカー部の悠真先輩じゃん!」
「あ、本当だ!」
「かっこよ!」
その声を聞いた瞬間。
後ろから低い声がした。
「……何騒いでるんだ」
本人登場。
悠真だった。
サッカー部の出し物の合間らしい。
「見に来た」
「忙しいんじゃないの?」
「少しだけ」
そう言って展示を見回す。
そして。
自分が写った写真の前で止まった。
周囲の女子たちがざわつく。
「本物だ」
「悠真先輩だ……」
悠真は気にしていない様子だった。
ただ写真を見つめる。
「やっぱこれ好き」
小さく呟いた。
その言葉に、なぜか少し嬉しくなる。
◇
昼過ぎ。
さらに来場者が増えた。
僕は説明を求められたり質問を受けたりで忙しい。
そんな時だった。
「湊くん」
知らない女子生徒に呼び止められた。
「写真すごく良かったです」
「ありがとう」
「もしよかったら、一緒に写真撮ってもらえませんか?」
「え?」
突然のお願いに戸惑う。
すると。
後ろから。
「ダメです」
「え?」
蓮だった。
「先輩忙しいので」
「いや、別に——」
「忙しいです」
満面の笑み。
でも圧がすごい。
女子生徒は苦笑しながら去っていった。
「蓮……」
「先輩は人気ですね」
なぜか不機嫌そうだった。
◇
その数分後。
今度は別の女子たちがやってきた。
「悠真先輩!」
「写真撮ってください!」
「一緒に!」
サッカー部のエースは大人気だった。
悠真は慣れた様子で対応する。
だけど。
ふとこちらを見る。
僕が他の生徒と話しているのを見て。
少し眉をひそめた。
「……」
「悠真先輩?」
「なんでもない」
そう言いながら。
なぜか展示室から離れない。
ずっと近くにいる。
まるで誰かを警戒しているみたいに。
◇
文化祭終了まであと一時間。
展示室も少し落ち着いてきた。
僕が廊下で飲み物を飲んでいると。
「湊」
悠真が隣に来た。
「お疲れ」
「悠真も」
少し沈黙。
そして。
「今日、人気だったな」
「写真?」
「お前」
思わず吹き出しそうになる。
「なんでだよ」
「知らない」
不機嫌そうな顔。
でも理由はなんとなく分かった。
その時。
「先輩ー!」
蓮が走ってきた。
そして当然のように僕の腕を掴む。
「表彰結果出ました!」
「え?」
「写真部展示、特別賞です!」
「本当に!?」
思わず声が大きくなる。
蓮も満面の笑みだった。
「やりましたね!」
嬉しかった。
本当に。
頑張ってきたから。
すると。
ポン。
頭に手が乗る。
悠真だった。
「おめでとう」
優しい声。
その一言だけで胸が熱くなる。
僕が何も言えずにいると。
蓮がむっとした顔をした。
「ずるいです」
「何が」
「俺もやります」
そう言って。
ぽん。
僕の頭を撫でた。
「おめでとうございます!」
「ちょ、やめろ!」
「先輩すごいです!」
「子供扱いするな!」
笑う蓮。
不満そうな悠真。
そして騒がしい文化祭の終わり。
だけど僕は知らなかった。
この日の帰り道。
二人の関係が、少しだけ大きく動くことになるなんて。
コメント
3件
第7話お疲れ様でした、みぅです🤍🥀 文化祭、すごく盛り上がってて読んでてワクワクしました!湊先輩の写真が特別賞取れて本当に良かったね…頑張ってきたのが報われる瞬間って尊いです。 でもそれ以上に、蓮くんの「ダメです」からの圧の強い笑顔と、悠真先輩の無言の警戒心がヤバかったです…この2人の湊先輩への執着、それぞれ色が違くてどっちも好き。最後の「二人の関係が動く」って一文で心臓跳ねました!次回が待ちきれないです😭💘