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◆ ヒカル、深い闇の中で 〜生死の境界線〜

作戦中、敵の熟練スナイパーに撃ち抜かれたヒカルは、仲間の必死の救助を受けながらも病院に搬送された。


胸部損傷、失血性ショック、呼吸不全。


数時間にわたる手術の末、ヒカルは辛うじて命をつなぎとめた。


だが意識は戻らない。


ロジンは泣き崩れ、白石は言葉を失い、恋人のアキトは医師に縋りつくようにして

「お願いです、助けてください」と掠れた声で繰り返した。


日が経つにつれ、ヒカルの容態は悪化し、

ついにモニターは警告音を鳴らし始める。


心肺停止。


医療スタッフたちが駆け込み、必死の蘇生が行われる。


その瞬間—

ヒカルの意識は、闇の中へと沈んでいった。




◆ 夢の世界—白い霧の中に現れた二つの影


ヒカルは、真っ白な霧の中に立っていた。


身体は軽く、痛みもない。

ただ、どこか現実ではないと直感した。


遠くで誰かが呼ぶ声がする。


「ヒカル——」


振り返ると、そこに二つの人影が立っていた。


一人は、黒髪の背の高い男。

懐かしいはずなのに、顔を見た瞬間、胸が締めつけられる。


父、カイ。


そしてもう一人は柔らかい微笑みを浮かべた元上司。


自分の命を、人質を守るために投げ打った男。


南條陸警部補。


ヒカルの目は大きく見開かれた。


「なんで…二人が」


カイが歩み寄り、娘の頬に触れた。


その手は温かく、現実と変わらぬ

ぬくもりがあった。


「ヒカル。お前はよく戦った。誰よりも強く、誰よりも優しくなった」


ヒカルの胸が震える。

幼いころからずっと、会いたかった父。


「待ってたよずっと。」


南條も近づいてくる。


「日向、こんなとこで何してんだ?」


いつもの軽口だ。


ヒカルは思わず笑いそうになったが、涙がこぼれた。


「南條班長…守れなくてすみません…。私、弱いから。」


南條は首を横に振った。


「違うな。お前さんは、もう十分すぎるほど強い。

誰よりも、自分を削って人を守ろうとしてしまう。それが心配なんだよ」


ヒカルは歯を食いしばり、俯く。


「もう、戦いたくない。

疲れちゃった…痛いのも怖いのも。」


カイがヒカルの手をそっと包み込む。


「ヒカル。帰るんだ」


「え?帰る?」


南條が目を細めた。


「ヒカル、お前さんには、まだ守りたい人が残っているだろ」


アキトの姿が脳裏に浮かぶ。

ロジンの泣き顔も、白石の不器用な励ましも。


隊のみんなも。


カイが言った。


「死ぬには早すぎる。お前の人生は、まだ始まったばかりだ」


ヒカルの胸が熱くなる。


「でも…私…撃たれてもう、無理なんじゃ。」


南條がヒカルの肩に手を置き、柔らかく笑った。


「大丈夫だ。ヒカル、お前なら必ず戻れる」


カイが霧の向こうを指差した。


「さぁ行け、ヒカル。生きろ。

まだ—お前を待っている人間がいる!!」


霧の中に、一筋の光が差し込んだ。


ヒカルは涙を拭き、二人に深く頭を下げた。


「ありがとう、パパ。

南條班長…私は、生きます。」


光に向かって歩き始めたその背中を、二人は優しく見守っていた。


◆ 心臓が再び動き出す


病室では医師が叫んでいた。


「戻った!心拍、再開!」


アキトは泣き崩れ、ロジンは椅子に座り込んだ。


白石は天井を仰ぎ、小さく呟いた。


「よく帰ってきたな、ヒカル」


モニターは安定したリズムを刻み始める。


ヒカルの指が、微かに動いた。



目覚めの朝 ― そして現実


長い昏睡の果てにヒカルが瞼を開けたのは、春の光が差し込む病室だった。


呼吸器の規則的な音、点滴の滴るリズム、そしてベッド脇のイスに寄りかかって眠るアキト。


「アキト?」


かすれた声に、アキトは目を覚まし、目を丸くした。


「ヒカル…っ!! よかった、よかった。」


泣き笑いで彼女の手を握る。その温度が、夢ではなく現実だと告げていた。


しかし、その“現実”は同時に重かった。


SAT狙撃班班長としての身分は完全に露呈し、マスコミも押し寄せた。

家族にも真実が届いていた。


そして、一命は取り留めたものの、体は深刻なダメージを負っていた。


医師から告げられた言葉は


「SATへの復帰は…残念ですが、非常に難しいでしょう。」


ヒカルは目を伏せ、唇をかみしめた。




リハビリの日々 ― アキトの支え


ヒカルのリハビリは厳しかった。


狙撃手として鍛え上げてきた体は、今や立ち上がるだけでも息が上がる。


悔しくて、情けなくて、時に涙をこぼす。


そんな時いつも隣にいたのはアキトだった。


「ゆっくりでいいよ。ヒカルなら絶対戻れる」


「焦らなくていい。俺はどれだけでも待つから」


アキトの言葉は、派手さはないが、不思議と心の奥に温かく染みていった。


ヒカルが杖をついて歩けるようになった日、

アキトはまるで自分のことのように喜び、彼女の肩をそっと抱きしめた。


その瞬間、ヒカルは心の深くで確かに感じた。


この人がいてくれて、よかった。



正式通達 ― SATからの離脱


退院の日。


本部から正式な辞令書が届いた。


「日向ヒカル警部、SAT狙撃班より離脱。


警視庁生活安全部・地域課交番勤務へ異動。」



ヒカルは書類をじっと見つめた。


ここに書かれた数行は、自分が築いてきたすべてとの別れを意味していた。


「これで、私は終わりなのかな」


ぽつりと漏らした言葉に、アキトは首を振った。


「終わりじゃないよ。

ヒカルは“ヒカルの強さ”を、まだぜんぜん使い切ってない」


その言葉に胸が熱くなった。

そしてヒカルは、深く息を吸い、辞令書に手を添えた。


「うん。じゃあ、もう一度ここから始める」



交番勤務 ― 新しい世界へ


異動先の交番は、下町の静かな地域。


SATとは違い、地域の人々との距離が近い。


最初の仕事は、お年寄りの道案内だった。


迷子の子どもを探す日もあれば、自転車のパンクを直す日もある。


「日向さん、交番に来てくれて心強いよ」


「あなた、話しやすいねえ」


そんな言葉に、ヒカルの頬は自然にゆるむ。


SATとは違う。

だが、ここにも“守るべき日常”がある。


そして


交番の窓から見える夕焼けを眺めながら、ヒカルは静かに思う。


「私は、まだここで戦える」


アキトとの絆の深化


仕事を終えたヒカルを、アキトは駅前で待っていた。


スーパーの袋を提げたその姿は、どこか幸せそうで、愛おしいほど普通だった。


「お疲れ、ヒカル。今日は豚汁作ったよ」


「ふふ。楽しみにしてた」


二人で歩く住宅街の道は、どんな最前線よりも温かかった。


交番勤務に変わっても日々は忙しい。


しかし、彼女の心に巣食っていた“恐怖”や“罪悪感”は、アキトの寄り添いによって少しずつ薄らいでいった。


夜、ヒカルはふとアキトの横顔を見つめる。


「ねえ、アキト私ね、まだ怖い。

もしまた私が倒れたら…

あなたを悲しませちゃうんじゃないかって。」


アキトは動きを止め、ヒカルの手をそっと握った。


「倒れたって、撃たれたって…ヒカルがヒカルでいてくれるなら、それでいい。

俺は、ヒカルの隣にいたいだけだから。」


その一言に、ヒカルの胸は熱く揺れ、思わず涙がこぼれた。


「ありがとう。アキト、大好き」


その夜、二人の距離は、もう隙間がないほど近づいた。


そして再び――次の運命へ**


ヒカルの人生は新しい章に入った。

SATを離れても、彼女の物語は終わらない。


むしろここから始まる。

静かな“第二の人生”が。


だが、彼女の前にはまた“試練”が訪れる。


交番勤務とはいえ、凶悪事件はどこにでも潜んでいるのだ。


ヒカルの戦いは、まだ続く


日向ヒカルは、長い昏睡と過酷なリハビリを経て、ゆっくりと社会復帰を果たした。


SATでの正体が世間に知られてしまったことで、これ以上

特殊部隊として働くことは難しい。


そう判断した上層部は、ヒカルを 警視庁の地域課・交番勤務 に異動させた。


狙撃班の班長だった彼女にとって、交番は穏やかすぎるほど静かな日々だった。


だが、ヒカルは不満を言わなかった。


アキトが毎日のように支えてくれた。


「命があってよかった」と心から言ってくれる人がいる

それだけで十分だった。


ヒカルは胸に残った傷を時折痛めながらも、「普通の日常」を生きようと努力していた。


◆交番勤務の日常


昼下がりの交番。

ヒカルは制服の胸元を整え、巡回の準備をしていた。


「ヒカルさん、今日は無理しないでくださいね」


相棒の巡査・田端が声をかける。


「大丈夫よ。もう走るくらいなんともないし」


「いやいや、あなた“元SATの狙撃班長”なんて肩書、一生越えられませんって。」


「もう元よ。それに今は“交番のおまわりさん”。その方が落ち着くしね」


田端は苦笑したが、ヒカルの表情には穏やかさが戻っていた。



◆急報 あるビルで通報


その時だった。


交番内の無線が突然、甲高く鳴った。


『至急応援要請!東京都◯区、ビル内にて武装した不審者複数!爆発物の可能性あり!一般人多数が閉じ込められている模様!』


田端が息を呑む。


「ま、まさか…また大事件!?」


ヒカルの表情が一瞬だけ凍りついた。


だが次の瞬間、彼女は制服の上着を引き寄せ、きつく拳を握った。


「行きます」


「日向さん!? あなたはまだ」


「交番勤務でも、私は警察官。

目の前の命を救うのに、資格なんて関係ないわ」


その瞳の奥には、かつてのSAT班長としての鋭さが戻っていた。


◆現場へ 抑えきれない“本能”


現場は雑居ビル。

複数の犯人がビル内に立てこもり、爆弾を仕掛けている可能性もある。


周囲には警察車両、消防、機動隊が集結していた。


「彼女…まさか、あの“日向ヒカル”じゃないか?」


「本物だ。SATの…あの狙撃手だ」


野次馬の囁きをヒカルは聞こえないふりをしていた。


指揮所の前に立つと、警視庁の管理官が目を丸くする。


「ヒカル…君、生きていたのか!」


「はい。現場に入ります」


「ダメだ! SATを退いた身だ。交番の警察官を危険区域に入れるわけには」


ヒカルは静かに一歩、前に出る。


「私は狙撃班の班長として人を守れず、仲間を失いました。

目の前に助けを求める人がいるのに、何もしない方が…私には苦しいんです」


管理官は言葉を失った。


その時、突然ビルの一室で爆発音が響いた。


ドンッ!!!


煙が上がり、悲鳴が響いた。


ヒカルは迷わず叫ぶ。


「許可なんて要りません

行かせてください!」


管理官は歯を食いしばり、小さく頷いた。


「行け。お前は警察官だ」


「了解!」


◆突入 ヒカルの眠っていた“感覚”


ビル内は薄暗く、煙と焦げた匂いが漂っていた。


ヒカルは拳銃を構え、足音を殺して進む。


(身体はまだ万全じゃない…でも、迷っている暇はない)


階段を上がった瞬間、銃声が響く。


パンッ!


ヒカルは反射的に壁に身を寄せる。


(来る!)


犯人が角から飛び出してきた。


ヒカルは素早く腕を伸ばし


ガッ!!


手首を捻り、相手の銃を弾き飛ばす。


「ぐあっ!」


そのままヒカルは相手を床に押し倒し、手錠をかける。


(身体が覚えてる…まだ、戦える)


だが、奥から複数の怒号が聞こえた。


「こっちだ! 人質を移動させろ!」

「爆弾を起動させる!」


ヒカルは深く息を吸う。


(間に合わない…!!)


その瞬間


囚われていた人質の中に、“見覚えのある背中”があった。


「え!?」


黒縁メガネ、猫背気味の背中―

アキトだった。


「アキト!!」


茫然としたアキトが振り返る。


「ヒ、ヒカルさん!?」


爆弾を持つ犯人がアキトの腕を掴む。


「動くな!!爆破するぞ!!」


ヒカルの心臓が止まるほどの衝撃が走った。


(お願い…アキトだけは…!!)


◆ヒカル、決断の瞬間


ヒカルはゆっくり両手を挙げた。


「私を捕まえればいい。

その人を放して。

私は元SAT班長の狙撃手…

あなたたちが狙ってるのは私でしょう?」


犯人は一瞬、目を大きく見開く。


「あの狙撃手!?…本物か!?」


ヒカルは静かに頷いた。


「だから、爆弾なんて使わないで。

私を連れて行けばいいから」


「待て、ヒカルさん!ダメだ!!」


アキトが叫ぶが、ヒカルは微笑んだ。


「大丈夫。必ず守るから」


その時、ヒカルの背後から警察の突入班が動いた。


犯人が気づき、スイッチに手を伸ばす瞬間


ヒカルは身体を投げ出し、犯人の腕を掴む。


ドンッ!!


床を転がる。


(間に合え―!!)


ヒカルは最後の力を振り絞り、犯人を取り押さえた。


爆弾は作動しなかった。


人質たちが泣きながら逃げていく。


アキトは駆け寄り、ヒカルを抱きしめた。


「ヒカルさん…もう、無茶しないでよ!」


ヒカルは震えるアキトの背中を優しく叩く。


「ごめん。でも、人を守るのは私の仕事だから」


胸に顔を埋めたアキトは、泣きながら言った。


「俺は、ヒカルさんだけ守れれば、それでいいんだよ」


ヒカルは驚き、そして…ほんの少しだけ涙を浮かべた。



ビルの外で、ヒカルは救急隊に肩を支えられながら歩いた。


上司たちは彼女を叱りながらも、どこか誇らしげだった。


ヒカルは、小さく呟いた。


「私はもうSATじゃない

でも、大切な人を守る力は、まだここにある。」


胸に手を当てる。


アキトはヒカルの横で、そっと手を握った。


ヒカルは微笑んだ。


交番勤務でも、戦いは終わらない。


そして、守るべき“居場所”ができたのだから。



交番勤務の朝


リハビリを終え、ようやく復帰したヒカルは、東京都内の小さな交番に配属されていた。


SAT時代のような極限戦闘はない。


しかしヒカルにとって、ここで過ごす一日一日が“生きている証”だった。


「日向巡査部長、おはようございます!」


若い後輩警察官・吉沢が元気よく挨拶してくる。


ヒカルは柔らかく微笑み返す。


「おはよう。今日もよろしくね」


腕にはまだ薄い手術痕が残り、体力も完全ではない。


それでも、交番の勤務は彼女にちょうど良いペースだった。


アキトは放課後デイサービスでの仕事と、ヒカルのサポートを両立している。


毎日のように「無理するなよ」とメッセージをくれる彼の存在が、ヒカルをそっと支えていた。


不穏な無線


昼過ぎ。

穏やかだった交番の空気が、突然鳴り響く無線で一変する。


『至急、◯◯通りの商店街で銃声の可能性あり!付近に複数の暴力団関係者の姿を確認』


吉沢が顔を青ざめさせた。


「銃声…? 交番管内で?」


ヒカルの胸がざわつく。


この胸騒ぎは、SAT在任中、幾度となく命を救ってきた“予感”だった。


「行くよ。吉沢、バックアップは本部に要請して」


「日向さん、無理しないでください!」


「大丈夫。無茶はしない」


そう言いながらも、ヒカルは自転車を飛ばし、現場へ向かった。



商店街の封鎖


現場はパニック状態だった。

店の前に倒れ込む男性、泣き叫ぶ子ども、逃げまどう人々。


その奥、細い路地に

銃を持った二人組の男が、女性を人質に取っていた。


ヒカルの呼吸が一瞬止まる。


(銃!まさか、交番勤務でこんな事態に)


しかし足は止まらない。

むしろ、身体の奥底に眠っていた“SATの直感”が鋭く覚醒していく。


ヒカルは周囲の人々を安全な場所へ誘導しながら、冷静に状況を分析した。


(犯人2人。拳銃は改造銃。視線は常に逃走方向……焦っている)


その瞬間、犯人の一人が気づいて銃口をこちらに向けた。


咄嗟の判断


「動くな!近づくな!!」


ヒカルは両手を挙げて一歩ずつ近づく。


「私は日向巡査部長、警視庁の警察官だ、少し話をしよう。」


「黙れ!こっちは本気なんだ!」


犯人が引き金に指をかける――

その一瞬、ヒカルの視界がスローモーションになった。


(撃たれるでも)


ヒカルは床に転がっていた“反射鏡付き看板”に瞬時に目を留めた。


それを蹴り上げ、犯人の視界を一瞬だけ奪う。


反射した光に目を眩ませた犯人の腕が僅かに下がる。


「今だ!!」


ヒカルは飛び込んで腕を捻り上げ、拳銃を奪い取った。


もう一人の犯人も吉沢と応援に来た仲間によって制圧される。


現場はわずか数十秒で沈静化した。


「日向巡査部長…すごい。」


吉沢が震える声で呟く。 


ヒカルは息を荒げながらも、落ち着いた声で答えた。


「人質は無事。救急を呼んで」


胸の奥で痛む古傷を押さえながら、ヒカルは深く息を吐いた。



アキトの涙


事件後、アキトが交番に駆け込んできた。


「ヒカルさん!!ニュース見て

倒れたって!」


「大丈夫。少し痛むけど、問題ないよ」


そう言った瞬間

アキトはヒカルを強く抱きしめた。


「大丈夫じゃない!死ぬかと思ったんだぞ!! そんな無茶…。」


「無茶はしていないよ。人質を守っただけ」


「でも

俺、心臓止まるかと思った。」


アキトの震えが、ヒカルの胸の奥まで響いた。


その温もりに触れ、ヒカルは改めて“生きて帰る”ことの重さを知る。



表彰式の日


事件から二週間後。

都庁の大ホールで、ヒカルは正式に表彰されることになった。


「日向ヒカル巡査部長

人質救出および迅速な犯人制圧により、多数の市民の生命を救った功労を称し、ここに表彰する」


会場に拍手が響き渡る。

SAT時代の仲間たちも、交番の同僚も、そしてロジンと白石、アキトも

最前列で見守っていた。


ヒカルは壇上で、震えそうになる心を押しとどめながら言った。


「私は一度、絶望の中で死にかけました。でも、人に支えられて、こうしてまた警察官として立てています。


守りたい人がいる。それだけで、私は何度でも立ち上がれます」


ロジンは涙を浮かべ、白石は静かに頷き、アキトは胸に手を当てながら目を細めた。


ヒカルの未来へ


式が終わると、アキトがそっと手を握る。


「すごかったよ、ヒカルさん。誇りだ。」


ヒカルは照れながらも微笑む。


「ありがとう。アキトのおかげで、私は立ち直れたんだよ」


二人の距離はもう、かつてないほど近かった。


外は春の風が吹き、桜が舞っていた。


その風の中で、ヒカルは思う。


(私はまだ、ここで生きていい)


そして、

(これからの人生、誰かと共に歩いていける)


その“誰か”がアキトであることを、ヒカルはもう疑わなかった。






砂漠の星空 第2部

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