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あっっ……めちゃくちゃ心に刺さる…🥲🥲好きです(((
性行描写有り
「ねぇ春ちゃーん」
「いきなり近づくな!
距離ちけぇんだよ!」
「春ー、今日暇?」
「暇じゃねぇ。
てか御前仕事しろよ。」
いつもこんな感じで話す。
灰谷と俺は半年前ほどにお付き合いをし始めた。アイツらから告白してきて、俺も灰谷の事が好きだったし、嬉しかったから告白を了承した。しかし、対応は全く変わらず、進展すら微塵もない。キスですら、触れる程度の軽いキスのみ。夜の営みなんてやるわけがない。
そして今、俺は頑張って行動に起こそうと思う。あんな態度をとっているがちゃんと好きだし、何か進展もしたいと思っている。しかし、俺がアイツらに冷たいと言うかキツイ態度をとっているから何も進展しない。ならば、俺が行動を起こすのみ。俺は久しぶりに三人でご飯を食べようと飯に誘おうとした。
「おい、灰谷。」
「んー、なぁに?」
「珍しいじゃん、春から話しかけてくるなんて。」
二人はスマホに向けていた目線を俺に向けてきた。二人は街に出たら絶対に声を掛けられるほどの顔面の持ち主。そんな顔に見つめられたら俺でも少し目を逸らしてしまう。俺は首を少し横に振って口を開いた。
「この後、暇か?
暇なら飯行こうぜ。」
「「…え?」」
流石兄弟と言ったところか、顔を見合わせてほぼ同じような顔をしていた。俺もその反応を見て、やはりダメだったか?と不安が小さく芽生えてくる。すると二人は嬉しそうな笑顔で再び俺を見つめてきた。
「行こ!
俺、春ちゃんと一緒に行きたかった所あるんだー!」
「春と飯とかいつぶりだろ、めっちゃ楽しみ!」
二人は無邪気な笑顔で俺に抱きついてきた。急に抱きつかれて俺は抵抗する。離れろ、近づくなと意思が伝わるように。…いや、ダメだ。今日は行動を改めるんだ。俺は抵抗した手をぴたりと止めて二人の綺麗なスーツを握る。二人はその行動を見て、先程よりも強く抱きしめてきて、俺は窒息してしまいそうになる。
「あーごめんごめん。
あまりにも可愛くて」
「うん、めっちゃ可愛い春が悪い」
「あーもう、分かったから早く行くぞ!」
俺はあまりの恥ずかしさで無意識に突き放し、寒さ対策として上着を着て二人よりも先に外に出た。二人はマフラーを急いで首に巻いて、後ろから慌ててついてくる。ここから歩いてまあまあ近い場所なため、足早に目的地に向かう。先程、やっと日が落ちた頃なため、時間は時計で表すと短針が床と垂直になっていた。寒い冬、息を一つ吐くと白くなるほど空気は冷えていた。
目的の場所に着き、俺は直ぐに中に入った。店内は暖房が効いてて外と違って暖かく、ホッと一安心をする。蘭と竜胆も続いて入って、首に巻いてたマフラーを取った。
「まじ寒かったー」
「凍えるー…」
二人はスーツを挟んで自分の腕を摩り、そう呟いていた。俺はその間に店員に人数を伝えて部屋を案内させられる。ここは個室があって人目を気にしないで飲み食いできる為気に入っている。一つの個室に案内させられ、俺らは着ていたスーツをハンガーにかけて、座布団に座る。店内は和風な感じで、少々高級感のある内装。俺らはメニューを見て、各々今食べたいものを注文する。後は疲れを癒してくれる飲み物、お酒だ。好きな酒を注文して、数分雑談して待つと、店員が酒をお盆の上に置いて持ってくる。コップいっぱいに入ったお酒同士を当ててガラス音を一つ鳴らし、俺らは喉に酒を通した。
「うま、ここ春ちゃんのお気に?」
「おう。」
「へぇー、春にしてはセンス良いじゃん。」
「まるで俺がセンスねぇみたいなこと言ってんじゃねぇよ!」
お酒を進めながらワイワイと雑談をする。次々に刺身、煮物などと和食が出てきた。一口、刺身を喉に受け入れると俺は無意識に口角を緩めてしまう。
「美味しいの春。」
「ん?
あー、美味いぜ。
食べるか?」
「ちょっとちょーだい!」
俺は竜胆の皿に刺身を置いてやる。竜胆は「ありがとう」と感謝を述べて醤油とわさびを少々付けて、口の中に入れた。どうやらお口にあったのか、見るからに美味しそうな顔をして、お酒をゴクリと飲む。俺もその顔を見て誘って良かったなと思いながらお酒を再びコップに注いで飲んだ。
「おーい、春ちゃーん。
大丈夫?」
「ん…だいじょぶだし。」
俺は酒を飲みすぎたせいか、頭が回らなくなっていた。実はというと俺はあまり酒が強くない方。いつもは一杯、二杯で満足してやめるのだ。しかし、今回はやめない。何故なら酒の力を借りる必要があったから。
俺は虚な目で蘭の姿を確認すると、甘えるように抱きついた。いつもなら絶対しない事、それは多分幾つかのプライドの一つだろう。しかし、今日の俺はそんなプライドは一旦お休み。と言っても酒がなければできなかった事だろうが。
「え、は、春ちゃん?」
「んぅ〜…蘭〜、すぅき…」
蘭のシャツをギュッと皺を作って握る。蘭は見ずとも分かるほどに焦っていた。多分、その場にいる竜胆も驚いているだろう。見てはいないが、時折言葉ではない声を小さく出していた。ならば…
「りんど…」
「え、あ…ど、どしたの?」
「こい…ギュってしろぉ…」
少々涙を浮ばせながら竜胆を見詰めて、此方に誘った。竜胆は口元に手を当てて「まじか…」と小さく呟く。そして、俺の近くに来て、俺を腕の中に招き入れてきた。暖かくてポカポカする。俺は竜胆の胸板にすりすりと顔を擦り埋めた。
「やば…何、今日の春可愛くない?」
「いつもよりも甘えただし…
春ちゃん、なんかあったの?」
「…だって、俺…毎回二人のこと、否定して、離しちゃうから…嫌われて、バイバイしたくない、から…正直になろって…思って」
「「……。」」
二人は口をポカーンと開けて目を丸くしていた。俺は二人の反応を見て、何故か無意識に「御免なさい」と謝ってしまう。すると蘭が一撫でしてきて、竜胆が俺を姫抱きして立ち上がる。視界がいきなり変わったものだから酔っている俺の頭は状況が把握出来ず、キョロキョロと辺りを見渡してしまった。
「これ、お金。
あ、おつりいらないです。
ご馳走様でした〜。」
蘭は秒で会計を済まして、外に出る。竜胆も俺を抱えたまま蘭に続いて外に出た。外は先程よりも冷えており、俺は身を出来るだけ丸くする。それに気づいた竜胆は巻いていたマフラーを俺に巻いてくれた。
「これしかないや。」
「…あ、ありがと」
俺は寒い冬にも関わらず、その時だけ異常に顔が熱くなった。
暫く運ばれていると、灰谷の住んでいるマンションに着き、お邪魔させてもらう。中はカリスマと言うだけあって、内装は高級感で溢れており、無駄に広い。俺は寝室のベッドでやっと降ろされて、ふぅっと一つ溜息を出した。二人は着ていた上着を脱いで、蘭はそこら辺に雑に置き、竜胆はハンガーにかけて、皺を伸ばす。ここは兄弟でも少々個性が出ている。すると蘭は此方に向かってきて、いきなり押し倒してきた。
「な、なんだよ…。」
「ん〜?
さっきの可愛い春ちゃんはもういないの?」
俺は外の寒さで少々酔いが覚めていた。だから蘭はこんな事を言っているのだ。先程の甘えたな俺はもう出てこないだろう。俺は見下ろしてくるような蘭と目を合わせるのが気まずくなり、目を逸らしてしまった。
「あー、逸らしたー」
「春、こっち見て。」
竜胆が俺の頬を優しく触ってきてそう言ってきた。誰にも言ったことはないが、実は俺は二人の手がめちゃくちゃ好きだ。蘭は骨張っていて指が細く長い。指輪が付いてる手で触られると金属の冷たさと蘭の体温の暖かさが絶妙にマッチして気持ちが良い。竜胆は蘭と同じく骨張っていて、筋肉質なのか指はゴツくて、だけど触り方が本当に優しい。まるで赤子を触ってるかのようにいつも触ってくる。そしてこれは何方も共通で二人とも触り方がいやらしい。なんというか、普通に触ってこない。手の甲で最初触って、滑るように手の平でぴたっと俺の頬に触れてくる。そんな手に俺は何度も狂わされてきた。
そして今回もそう。頬に触れてきた後、顎に手を置いてきて、唇を親指でふにっと開けてほしいかのように触ってくる。そんな事をされたらもっとお前らの事なんか見たくなくなるだろ。
「春ちゃん、今日は甘えたデーじゃないの? 」
蘭がニコニコと楽しそうな顔で訪ねてきた。だからそれは酒が入ってたらの話だ。素面なら俺の謎のプライドが許してくれない。そもそも人に甘えるなんて俺にとっては難題なのだ。甘えた事なんて一度もないし、甘えられた事ですらない。強いて言うなら小さい頃、俺の妹と一緒に遊んだ時に「おんぶして」とお願いされた事くらいだ。
しかし、今蘭と竜胆が求めているのは「甘えてくる三途春千夜」だ。だが、俺は甘えるのを拒む。それは蘭と竜胆の願いに反している事になる。つまり、二人は甘える俺が必要としていて、甘えない俺は今は必要としていないのだ。もしかしたら違うかもしれないが、今の俺は悪い方向に考える事しか出来なかった。そう思うと何故か心の奥底から「嫌われたくない」という感情が溢れてくる。今にも口から何か出てきそうなほど。俺はいつの間にか目元を濡らして、一滴涙を白いシーツに落とした。
「え、ちょっ、春ちゃん!?」
「春どうしたの?
大丈夫?」
「…だ、だいじょ、ぶ…」
俺は近くにあった布団で顔を隠す。こんな情けない顔二人には見せたくない。しかし、啜り泣く音は俺の意思とは関係なく出てしまう。涙が止まらない。止め方を忘れてしまった。蘭と竜胆は心配の言葉を出しながら俺の頭と背中を撫でてくれた。優しい手。大好きな手。今にも抱きつきたいのに、またもや俺の中の意味のわからない意志が邪魔をしてくる。
暫くすると、涙は止まり、目を擦る。二人も止まったことに気づいたのか、俺を優しく起き上がらせた。
「春、何があったの?
どうして泣いちゃったの?」
「……。」
「言ってくれないと俺ら分からないよ。
恋人なんだからなんでも言って。」
竜胆は可愛く首を傾げて、蘭は眉毛をハの字にして言ってきた。俺は二人を困らせている。恋人が、俺のせいで困っているのだ。迷惑極まりない。俺はまたもや泣きそうになって下を向いてしまった。しかし、言わないと多分この話は終わってくれないのだろう。そんな雰囲気がした。俺は心臓の音を大きく、速く鳴らしながら震えた口を開けた。
「二人は、甘える俺が、好きで…で、でも、今の俺、は…甘えない、奴で……二人が好きな俺、じゃない、から…甘えない俺は、嫌いなんだ、て思って……辛くて、悲しくて…二人の事、好きなのに、愛してる、のに…迷惑かけて…」
一度話した言葉はもう止まってくれない。それが震えた口でも。しかし、蘭はそんな俺の口を大きく、細い手で覆って止めた。もう話すなと。俺は再び涙が出てきて、蘭の手に涙を垂らす。竜胆は俺の頭を慰めるかのように撫でてくる。
「確かに甘える春ちゃんは可愛かったし、めっちゃ好き。
でも甘えない春ちゃんも可愛いし、愛してるよ。」
「俺らはどんな春でも愛してるし、可愛がるよ。 」
甘い言葉が囁かれる。俺は鏡なんて見ずとも自分の顔の体温が急上昇しているのが分かった。多分それは、触れている二人も気づいているだろう。だって求めた言葉なのだ。誰でも嬉しくなるし、恥ずかしくもなる。
「春ちゃんは俺らに迷惑なんてかけてないよ。」
「もし迷惑だとしても、春は俺らの事好きなんでしょ?
なら迷惑なんてどんどんかけても俺らは怒らないよ。」
本当かなと少々疑心暗鬼もありながら恐る恐る二人の顔を見る。同じ顔だけど全く違う顔。それは俺にしか理解できないのだろう、いいや、俺にしか理解できないであってほしい。そう思うと勝手に口が開き、喉から精一杯の声を出した。
「二人の事、好き…顔が好き、手が好き…匂いが好き、性格も好き、俺だけ優しい所好き、あと…」
「ちょ、ちょっと待って春ちゃん…」
「一旦ストップ…!」
「え、あ、わりぃ…」
「「あのさ…」」
何か言われる。その先の言葉は良いのか悪いのか俺には判断の仕様がない。俺は咄嗟に目を瞑ってしまった。すると体に何か重たい物が乗った感じがした。暖かくて、大好きな匂い。恐る恐る目を開けてみると、二人とも俺を抱きしめてくれていた。
「マジ可愛いんだけど…世界一可愛い」
「ほんと好き、愛してる…春、俺らの事殺す気でしょ。」
二人とも俺の視野では顔がちょうど見えないが、甘い言葉が飛び交っているのは嫌ってほどに分かる。二人が俺に愛を伝えている間、俺はただ聞いてる事しか出来なかった。嬉しくて、恥ずかしくて…色んな感情が混ざり合って頭が可笑しくなりそうだった。いや、もう可笑しくなっている。二人の愛の薬は強力で、どんなに薬耐性がついてる俺でも薬の効果に溺れてしまうほど。しかし、自分はここから抜け出そうと思わない。むしろずっとこうしていたい。俺は二人のシャツを握る。それはいつものような拒む意志ではなく、受け入れる意志。それが伝わったのか蘭は微笑して、竜胆は抱いてる腕を少し強めた。
暫くして二人とも満足したのか俺から離れた。俺は気まずさと恥ずかしさで押し殺されそうになり、下を向いて、自分の手を弄り始める。すると竜胆が俺の手にそっと手を重ねてきた。そして蘭は俺の顎を持って半端無理矢理に目を合わさせられる。紫色のギラギラとした瞳と目が合う。この瞳は多分俺しか見られないのだろう。今にも喰われそうな、まるで獲物が目の前にある肉食獣のような鋭い目つきをしていた。
「春ちゃん…俺らの事どう思ってる? 」
「もう一回、春の口から聞きてぇんだけど。」
嗚呼、多分今から俺はコイツらを受け入れるのだろう。ならばそれ相応の心の準備と覚悟が必要だ。俺は唾をゴクリと喉に通して、両手を広げて受け入れる準備をした。
「蘭と竜胆の事…愛してる…♡」
ベッドに沈むのは直ぐだった。ここからはもう二人の事しか頭にない。仕事の事も、薬の事も…ましてやマイキーの事ですら頭に入ってこなかった。シャツは乱れて、髪は汗で肌につく。いつもなら嫌な汗はこの時だけは許してやれた。下半身に熱が帯びると俺はそれに反応するかのように酷く甘い声を出してしまう。それは灰谷にとっての興奮材料。俺が気持ちよくなると、灰谷も比例して興奮する。肌と肌が叩き合う音が冷えた部屋中に響き渡る。寒い冬。それなのに体温は熱いのは可笑しいのだろうか。シーツは時間が経つにつれてシミと皺が増えていく。大好き、愛してる。三人がいる部屋は愛の言葉が飛び交っていた。どうやら愛の薬はまだ効いてるらしい。…いや、これからもその効力は切れることはないのだろう。