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ニキシド
少し官能的
リビングに響くのは、動画編集ソフトのカチカチという音だけ。
窓の外からは激しい雨音が混ざり込み、ニキはため息をついた。
「……あいつ、傘持って行ってないじゃん」
昨日撮った企画動画の編集に集中しようとしても、頭の片隅にはシードのことが引っかかって仕方ない。大雨の中、あの能天気な幼馴染がどう帰ってくるか想像して、苦笑を漏らす。
数分後。
玄関の扉が乱暴に開き、「ただいまー」と気の抜けた声が響いた。
ニキが顔を上げると、買い物袋を抱えたシードが濡れ鼠のように立っていた。
「シード、びしょ濡れじゃん」
「しゃーないじゃろ、この雨よ。傘ないんじゃけん」
ふてぶてしく笑うその姿に、ニキの視線はふと止まる。
白のロンTが肌に張り付き、透けた布越しに形のはっきり浮かぶ胸の突起。
瞬間、編集ソフトの音も雨音も遠のいて、心臓の鼓動だけが耳に響いた。
「……お前、何見せつけてんだよ」
「は?見せつけとらんわ。勝手に透けただけじゃろ」
「言い訳になってないって」
顔を真っ赤にしたニキが立ち上がり、濡れた髪をくしゃりと掴む。
シードは「うわ、冷てぇ」と笑いながらも、嫌がる素振りはない。
「……風邪引くから脱いで」
「うわ。ニキの変態」
「アホかよ。…笑」
ニキの声は少し掠れていた。
濡れたロンTを引き上げると、肌にまとわりついた布が抵抗なく剥がれ、白い胸元が現れる。
その瞬間、二人の距離は自然と近づいていた。
「……ニキ」
「なんだよ」
「そんな真っ赤な顔しといて、シラ切んなや」
シードの方から抱きついてきて、冷たい身体を押し付けてくる。
「冷てぇ……」と呟きながらも、ニキは腕を回して離さなかった。
濡れたシードの体温がニキの胸に移って、シャツ越しにじんわり広がる。
「……冷たいくせに、くっついてくんな」
「ええじゃろ。…ニキの方があったけぇ」
拗ねたように頬を擦り寄せてくる姿に、ニキの喉がつまる。
濡れた髪の間から覗く首筋は白くて、そこに滴る水滴がいやに艶っぽい。
「シード」
「ん?」
呼ぶだけで胸が詰まる。
次の瞬間、ニキは堪えきれずに唇を重ねた。
冷たさと温かさが入り混じる感触に、思わず力がこもる。
「んっ、…ニキ、急にすんなや」
「嫌じゃないくせに」
強く抱き寄せ、濡れた布越しに背中を撫でると、シードの身体が小さく震えた。
白いロンTはすでに半分脱がされ、胸元はさらけ出されている。
透けていた突起に指先が触れると、シードは小さく息を呑んだ。
「……お前、わざと濡れて帰ってきたんじゃねぇの」
「アホ言うな。…でも、ニキがこんな顔するんは、好きじゃけん」
挑発するような目に、理性が崩れる。
唇から顎、首筋へと辿っていくと、シードは小さな声を洩らし、指先で必死にニキの服を掴んでいた。
「……ニキ」
「んー」
「続きは……ベッドでしてくれん?」
その甘え混じりの声に、ニキの心は完全に落ちた。
編集ソフトの光が放置されたまま、二人は濡れた買い物袋も忘れて、重なり合うように寝室へと消えていく。
外ではまだ激しい雨が降り続いていたが、部屋の中はそれを掻き消すほどの熱で満たされていた。
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