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「――美桜! ミヤち! こんなところにいたのか!」
突然、先に帰ったはずのトモヤが駆け込んできて、あたしたちは驚いた。目を丸くして口々に尋ねる。
「え? トモヤ? 先に帰ったんじゃなかったの?」
「どうしたの? そんなに慌てて――」
「それどころじゃねえよ、これ見ろこれ!」
トモヤは相当焦っているようで、息を切らせたまま震える手を突き出してきた。その手に握られているのはスマホ、そしてそこに映し出されているのは、あるサイトの画面だ。
どきっとした。
――和菓子・立花屋の外観が表示され、コメントがいくつも書き込まれている。
「これ、陸太朗のうちの……、へえ、知らないうちに開店してたんだ……」
ということは、陸太朗のおばあさんは店を続ける気になったのだろう。だとしたら、陸太朗の願いは叶ったことになる。
素直にうれしいと思う。しかし、もろ手を挙げて喜べないのは、どこか釈然としないからだ。
コンテストは落選した。陸太朗は料理部をやめた。それなのに、なぜおばあさんはやる気を取り戻したのだろう。
「いや、それよりこっちだこっち!」
トモヤがスマホを操作して画面をスクロールする。そこに映っていたものを見て、あたしは目を疑った。
「なっ……、なにこれ――!?」
あたしはスマホの画面を凝視すると、踵を返して走り出した。