テラーノベル
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最終話:光と影の共鳴、伝説の始まり
「……あー。……衣装、重い。……これ、鉄板入ってる?」
「入ってないわよ! アンタのやる気がマイナスなだけ!!」
国立競技場のバックステージ。
ウタゲがユズルの背中をバシバシ叩きながら、気合を入れ直しています。
客席からは、地鳴りのような歓声が聞こえてきます。
シキの正体がF/ACEの後輩・ユズルだと公表されてから初めての、全世界同時生中継ライブ。
「ユズルくん、準備はいい? ……手が震えてるね」
多聞がそっとユズルの手を握りました。
でも、その手は以前の合宿の時のように冷たくはありません。
「……多聞くん。……震えてるのは。……武者震い、じゃない。……お腹空いた、だけ。……終わったら、特上カルビ、10人前ね」
「あはは、わかったよ。僕が全部焼いてあげる」
「おい、多聞! 甘やかすな! ユズル、お前は俺の隣で最高に吠えろ! 逃げんじゃねぇぞ!」
桜利がユズルの頭を乱暴に、けれど愛おしそうに撫で回します。
「……桜利さん。……髪、セットしたのに。……まあ、いいや。……適当に、やる」
ブザーが鳴り、ステージがせり上がります。
数万本のペンライトが、海のように揺れる光景。
ユズルは一瞬だけ眩しそうに目を細めましたが、マイクを握りしめると、その瞳に「シキ」としての絶対的なカリスマが宿りました。
「……『……聴こえる? ……僕たちの。……はじまりの、音……』」
ユズルの気だるくも美しい第一声が響いた瞬間、会場は水を打ったように静まり返り、次の瞬間、爆発的な熱狂に包まれました。
多聞の透明感のある歌声、桜利の力強いシャウト。
それら全てを、ユズルの歌声が優しく、かつ鋭く繋いでいく。
光を背負うF/ACEと、影を抱くシキ。
相反する二つの要素が混ざり合い、音楽の歴史が塗り替えられた瞬間でした。
ライブ終了後。楽屋に戻るなり、ユズルは廊下で力尽きて倒れ込みました。
「……ふぅ。……もう、無理。……一生、寝る。……引退、していい?」
「ダメに決まってるだろ!! これから世界ツアーだぞ!!」
桜利の怒鳴り声が響きますが、ユズルは既に多聞の膝を枕にして、スースーと寝息を立て始めています。
「ユズル……! あんた、本当にかっこよかった……! 姉さんはもう、思い残すことはないわ……!」
号泣するウタゲの横で、多聞はユズルの寝顔を見つめ、静かに微笑みました。
「……ユズルくん。君をこの世界に引き摺り出したのは、僕たちのわがままだ。……だから、一生かけて、君を甘やかして守り抜くよ」
無気力な天才歌い手と、彼を溺愛するアイドルたち。
そして、その光景をカメラに収め続ける最強の姉。
木下ユズルの「めんどくさくて、最高に眩しい」アイドル人生は、まだ始まったばかり。
【完】
ご視聴ありがとうございます!
少しずつですが活動をしていこうと思います。
ノベルかチャトノベルかは分かりませんが、
1話ずつではなく1作品ずつの投稿にしようと思います。
それでは!またの機会でお会いしましょう!!
コメント
1件
もぅ最高最高!!!