テラーノベル
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赫:ねぇ、桃くん!!
桃:ん?
赫:今学校では何やってるの?
桃:いや、別に普通だよ普通
赫:普通じゃわかんないよぉ
桃:ただ毎日授業受けてテストに向けて勉強するだけ。俺は別に部活とか入ってないし
赫:そっかぁ、普通かぁ…
そう呟いたのを聞いて気がついた。赫は高校に行ったことがない。俺の“普通”を知らない。
傷つけてしまっただろうか。そう思い、ロビーのソファに座っていた俺は後ろで俺の髪をいじくってる赫を見上げた。
赫:ん?どうかした?
桃:なんでも、
思ったほか赫はにこにことしていた。
赫:俺の“普通”はね病院のベットの上で薬を飲んで検査して、本を読んで音楽を聞いて寝るの。皆が思ってるよりもずっと楽しいんだよ?
自慢げに笑う赫の声はとても優しいものだった。まるで子どもに言い聞かせるように。あたたかくてふわふわ。
桃:で、俺の髪で何してんの?
赫:んふふ,三つ編みっ!!笑笑
けらけらと笑う赫からは病気なんて感じられなくて俺と同じ“普通”の高校生。まあ、普通よりはちっちゃいけどな笑
赫:俺も学校行きたい。ライブも行きたい。海外でも宇宙でもやりたいことぜーんぶしたい!!
桃:いいじゃん笑
赫:本で見た、映像で見たあの綺麗な世界をこの小さい白い病室から飛び出して見に行くんだ。そこの空気をめいっぱいに吸い込んで、土に水に自然に触れるの。
桃:そこまで行ったら俺だって見たことないよ。
赫:うん!誰も見たことのない景色を俺は見つけたいんだ。まだまだ世界は広くて未知だって知ってるから。
目を輝かせて言う赫の顔は生気に満ち満ちていて俺なんかより希望で溢れていた。
桃:赫ならすぐにできそうだけどな笑笑
赫:えぇ…//そうかな笑
桃:記録に、写真に残せばいい
赫:写真に?
なんとなく、声に出していた。父親の仕事が忙しくなってからというものほとんどカメラには触っていなかった。赫は俺の言ってる意図が伝わらずきょとんとした顔でこちらを見た。
桃:俺からしたらさ、どんな本にもテレビにも乗ってない赫の過ごす毎日の方が何よりも見たことのない世界なんだよ。赫もさ、人の知らない未知の世界の楽しいこと誰かに教えてあげたらどうだ?
赫:たしかに…俺みたいにずっと病院にいる子達は当たり前だけど皆にとっては当たり前じゃない。すごい!!桃くん天才だよ~!!
桃:天才は言い過ぎw
赫:でも、カメラどうしよ…
桃:俺家に使ってない一眼レフあるしお前のこと撮ってやるよ
赫:えー!いいの?!
桃:お前ができること全部やろうぜ
赫:…うんっ!!
病室
赫:あ、桃くん!
赫はベットに座って片耳だけイヤホンをしていた。病室のベットに横たわる姿はいつもより一層、赫を病人らしくした。元気に病院内を歩き回り、いろんな人に話しかける赫とは全く違う。
桃:あぁ、別に起き上がらなくてもいいよ
赫:へへ、今日はちょっと検査だったから…
桃:検査頑張ったんだな、
赫:痛みとかはないんだけどね
桃:これ、カメラ
赫:おおおおぉぉ!!!すごー!!めっちゃかっこいい~!!!!
桃:だろ?今から一旦母さんのところ行ってくるから待っててくれ、すぐ戻ってくる
赫:うん、ゆっくり話してきなよ。お母さんきっと毎日来てくれて喜んでるよ
桃:あー、はいはい笑
赫:あ、でもちゃんと戻ってきてね!!
桃:分かってるよwww
母病院
桃:母さん、
母:あら、桃
髪は抜けて、顔がやつれている。肺炎と癌。元々身体が弱い母にはきつすぎるダブルコンボだ。肺炎のせいで喘息が酷くなる。発作が出るといつも命懸けだった。抗がん剤治療は末期になる前にでき、今は後遺症とも格闘中。
母:あんなに綺麗に整えてた髪の毛も少なくなっちゃったよぉ笑
桃:入院する前にちゃんと短く切っただろ?
母:そうだけどね、いざなってみると気持ちは追いつけないのよ
桃:大丈夫だよ。今頑張ればしっかり治るってお医者さん言ってたし。母さんの主治医はすげぇやつなんだろ?
母:そうよぉ。ある難病を抱えた子のために研究の為でもあるそうだけど海外から戻って来たんだって。
桃:へー。
この病院は田舎の山の上にしては病床数が多い。入院患者を受け入れる設備や難しい病気を患った患者への治療も滞っていると思う。
コンコンッ
ノックの男。
「美山さん入りますよ。」
母:はぁーい
?:あ、息子さんもいらっしゃるんですね
俺は小さく頭を下げる。
蒼:僕はお母様の主治医をしております蒼と申します。
桃:息子の桃です。
蒼先生も会釈をした。
蒼:さっそくですが問診と検査の時間です。
桃:じゃあ俺出ますね
母:またねぇ、桃。
桃:ん。
俺は振り返らず手を振った。
赫病室
病室に帰ると赫は机の上にカメラを置いて、少し体制を起こしたベットで眠っていた。それを見た瞬間、なんだか無性に抱きしめてしまいたくなる様なこの世からすっと消えてしまいそうなそんな衝動に駆られていた。
カシャッ
思わずカメラを手に取り、眠っている赫を撮った。今まで撮ってきたどんな植物、生物、景色のどれよりも美しく感じた。
しばらく眠る彼を眺めていた。窓の外には少し葉が混じった桜が咲いていて美しさを際立たせていた。
赫:んぅ…あれ、、寝ちゃってた。
桃:赫、おはよ
赫:あれ桃くん?!
桃:母さんのとこから帰ってきたらお前が寝てるからここに座って待ってたんだよw
赫:わー!!ごめんッ!!なんかすごい眠くって、
桃:それ薬の副作用じゃないのか?眠くなるのはよくある事だろ
赫:うん、そうだね。すぐ眠くなっちゃうんだ、俺
桃:じゃあしょうがないだろ?自分のことあんまり責めんなよ
赫:ありがとう、
桃:そういえば蒼先生に会ったぞ
赫:おー!会ったんだ!!かっこよかったでしょ?
桃:そうだな、背は思ってたより低かったけど赫より何倍も大人な雰囲気あったわ
赫:はぁー?!その最後の文余計なんだけど!
桃:事実だろ?www
赫:ぐぬぬッ…たしかに、蒼ちゃんは大人っぽいけど
桃:でもあの先生若いんだな
赫:そうだよ、まだ27歳だってさ。海外の大学に進学して2年間の病院勤務で有名になったらしいよ。
桃:すごいな
赫:桃くんも病気なったらここの病院で見てもらいなよ!
桃:俺は元気だし蒼先生は風邪くらいじゃ診察しない人だろ?
赫:んーまぁそうだけど!すごい人に見てもらえば早く治りそうじゃない?
桃:そうかもな笑
そこからも面会時間が終わるまで、他愛もない話を続けた。
#おりきゃら
玲💚🍀 .🌳🩵
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コメント
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第2話、じんわり心に沁みました……。赫くんが「誰も見たことのない景色を見つけたい」と目を輝かせるシーン、あの純粋な希望に胸が熱くなりました。桃くんが眠る赫を無意識に撮る場面も、その瞬間がどれだけ美しくて儚いか、ひしひし伝わってきました。蒼先生も登場して、これからどう関わっていくのか気になります。続きが楽しみです🌷