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莉乃ちゃん
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したいことも、行きたいところもたくさんある。
敦のケーキだって、敦の手料理だって食べたい
敦の隣が他の人になるなんて嫌だ。
敦ともっと一緒にいたかった。
病気になって、泣いたときですら
敦は〝ひろは俺の恋人で、未来の婚約者でしょ?〟と慰めてくれたのに
きっと、今はそんなこと思ってくれない。
僕のせいだ。僕が敦を怒らせちゃったから、僕と一緒にいたくなくなっちゃったんだ。
だから昨日も僕じゃない誰かとお酒を飲んで帰ってきたんだ…僕と一緒の空間にいたくないから…
もはや闇堕ち状態。そんなことを俯瞰で考えてしまうぐらいに滅入っていた。
敦が帰ってきたら、全てが終わるんだ、と。
思考回路はまさに地獄絵図。
敦の帰宅時間が死へのカウントダウンのようだった。
おかげで、なにも手につかない。スマホの画面もノイズがかかったみたいにぼやけてしまう。
昼ごはんを食べても、苦味しか感じなくて。
「しゅんと別れたくない」なんて祈ったところで叶うわけないのに、そう願わずにはいられなかった。
◆◇◆◇
結局、そのまま敦の帰宅時間を迎え
「ただいま~」
敦の声が聞こえてきて、身構える。
リビングに入ってきた敦は、リビングの椅子に腰掛けて固まっている僕に声をかけた。
「ひろ、ただいま」
「っ、おかえり…」
かろうじて絞り出した声すら、少し震えていた。
敦が一歩、一歩と近付いてくる。
そのまま僕の向かいの椅子に座るように思えた、そのとき
「ひろ、目元赤いけど…大丈夫?」
敦は椅子ではなく、僕の隣まで歩いてきて止まると、頬に触れながら聞いてきた。
敦が触れてくれた。それだけで、苦しくて仕方なかった。
最後だから、前みたいに優しくしてくれるんだ。
そう思った途端、情けなくて、恥ずかしくて、堰を切ったように涙が溢れた。
「…え、ひろ……っ?」
戸惑う敦をよそに、僕は気が付くと敦の大きな両手をガシッと掴んでいた。まるで、藁にもすがる思いで。
「…っ、いや……だ…っ。しゅんと……別れたく、ない」
「え…?」
今まで我慢していたものが溢れて、敦の手を握ったまま子どものように号泣した。
もう醜態を晒してでも縋りたかった。
敦が離れていくぐらいなら。
「ご、ごめ…なさぃ……っ。僕、ちゃんと、謝るから……っ、お願い…」
「…ひ、ひろ?別れるって…」
「いやなの…っ、お願い…!しゅんのこと、傷つけちゃったの…ごめんなさいするから……っ、僕……ちゃんとする、から…」
「……っ」
「まだ…っ、まだ一緒にいたいよ……っ。ひっ…う、ぅ……っ、まだ……しゅんの隣に、いたいよ…っ」
嗚咽を漏らしながら引き止める中、敦は落ち着いた口調で言った。