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「カラスバさ〜ん!!今日も可愛いですねっ!」
「…………はぁ。」
サビ組のボスに全く恐れることもなく、毎日毎日付きまとう女
紫色の髪を綺麗に巻いて、ピンク色の特徴的な瞳をしている少女
猫のような黒色のワンピースを揺らして、カラスバに軽快な足取りで近寄る姿は可愛らしい
「ジプソ、コイツ追い出して」
「えっ!?わ!諦めないから〜!!」
今日もカラスバに冷たくあしらわれても、明日にはまたカラスバの元へ行く
明日も明後日も────
とある日の夕方
「ちょっと見回り行ってくるわ。アイツら事務所前にはおらんな?」
「はい、大丈夫です。」
「ほな少し行ってくるわ」
「お気をつけて」
サビ組を出て、ミアレを見回る
夜は特に悪さをする人間が出てくる
そう思いながら見回っていた時だったワイルドゾーン5の前で見覚えのある人物を見掛ける
「(アイツ!?…って、なんしとんやあいつ)」
元々怪しい人間ではあったが、ワイルドゾーンの入口付近からワイルドゾーンには入らず、中を見つめている
その表情はどこか悩んでいるような焦っているような顔をしていた
いつもニコニコ笑っている為、ああいう顔は物珍しく感じて見入ってしまう
するといきなり意を決したような表情になり、静かにワイルドゾーンの中へ入る
興味本位からカラスバも少しして後に続くようにワイルドゾーンの中へはいる
ワイルドゾーンに入るなり、身をかがめながらゆっくりどこかへ歩くシオン
そんなシオンの後を追うカラスバ
しばらくするとシオンは何かをみつけ立ち止まったかと思うと、なにか決意をしたような目をし草むらから出てある場所めがけ走り出す
「!?なんやいきなり…」
驚くが慌ててシオンを目で追い上げる
するとしばらくすると激しいポケモンの攻撃音と共に、シオンが傷まみれのオンバットを手にして走ってくる
「なにし───」
不思議に思い立ち上がった瞬間ゼラを追いかけるようにオンバーンやオンバットが攻撃をシオンに目掛け放つ
「っ!!ひぃっ!?」
「なんしとんやあいつ…!」
何故かポケモンを出さずにワイルドゾーンを逃げ回るシオンに驚きつつ、ペンドラーを出す
「ペンドラー!じしん!!」
「わっ!?え!?カ、カラスバさ───」
「なん座り込んどんや阿呆!!走るで!!」
「え!?あっ!は、はい!!」
じしんにより、足をつまずき転んだシオンの手を取り、ワイルドゾーンの入口まで走った
「はぁっ、はぁっ……」
「あ、すみません…カラスバさ──」
「ッ何しとんや!!ポケモン出さんか!!」
肩で呼吸をしながら、青筋を立てて怒るカラスバとそんなカラスバの怒声にビクッと肩を揺らしたあと少し気まずそうな顔をするシオン
「……え、とポケモン…持ってなくて……」
「…は…?持っとらんのか…?」
「実家が厳しい所だったので…」
そう言って笑うシオンに驚きつつ、ため息をつく
そしてシオンがずっと抱きしめているオンバットに目をやる
「コイツ助ける為にワイルドゾーン飛び込んだんか?」
「周りの子にいじめられてるようでちょっと見捨てられなくて…こういう場合はポケモンセンターに行ったんでいいんですよね?」
年齢も18そこらに見えるのに、今の今までそんな常識的な事を知らないシオンに違和感を抱きつつも頷き、シオンと共に近くのポケモンセンターへ行く
「傷も深なくてよかったな」
「はい!」
そう笑いオンバットに「よかったね〜」と話すシオンを見てこんな顔もするのかと少し見とれる
「(ってなんしとんや!ちゃっかり助けてしもたし、そもそも此奴オレのストーカーやぞ!?)」
「傷も治ったし…好きなとこ行きな」
〖キュ!?キュ〜!!!〗
「…そいつは離れたないらしいで。せっかくの機会や捕まえたらええやん。」
「……え、と…ボール持ってないです……」
「はぁ!?──はぁ…しゃーないわ、これあげるさかい、これで捕まえ」
そう言ってダークボールをシオンに渡す
そのダークボールを受けとり、嬉しそうに目を輝かしたあとオンバットにボールを近づけるとオンバットは頭を近づけ自分からボールに入る
その様子に目を見開いたあとカラスバの方に勢いよく振り向き、「見ました!?」と話す
「んな言わんでも見たわ。」
「凄い…モンスターボールって不思議ですね…
初めてのポケモン……!!へへ…」
「(んな風に笑うんや、コイツ)」
いつもは貼り付けたような媚びた笑みだったが、この時はシオンの素の笑顔を見れたような気がした
「…もう暗いさかい、家まで送ったる」
「えっ!?…し、心配してくれてるんですか〜?やだ〜!嬉し─」
「ちゃうわ阿呆。」
驚いたあと少し間を置き、いつものような媚びついた笑顔を浮かべキャピキャピとカラスバに近づくシオンに顔を背ける
「でも送りは大丈夫ですっ!」
「遠慮せんでええ」
「いやいや…」
「遠慮せんでええ、言うとるやろ??」
「はは………」
これを機にシオンの家を特定できると思い、ついて行くと言うがなかなかYESと言わないシオン
そんなシオンに対し、肩を強く掴み圧をかけると引きつった笑みを浮かべたあと諦めたように溜息をつき「分かりました」と頷いた