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私専用のアクアリウム。
この部屋にはそんな大層なものがある。
水龍である彼が自ら製作してくれたのだ。
「……」
アクアリウムは好きだ。水はまるで彼の髪色のようだし、静かなところも彼に似ている。
「早く帰ってこないかな」
手元に存在する、水で作られた手錠に触れる。
これもヌヴィが作ってくれたもの。水で作られたから実態があるようには思えないがこれから手を抜くことはできないし何かすれば彼に気付かれてしまうのだから不思議な代物だ。
今日も、私は2人で寝ているベッドの上で帰りを待つ。
お腹が空いたと言えばご飯が来るし甘いものが食べたいと言えばお菓子が来る、お風呂もトイレもこの部屋の中にあるし……正直言ってダメ人間になっている気はするが、この生活をやめようとはとてもじゃないが思えなくなっていた。
布団に入るとヌヴィの匂いがして、まるでヌヴィに包まれているような感覚になって眠くなってきた。
私は睡魔に抗うことなく眠りについた。
「____、」
さらっ、と頭を撫でられる感覚で目が覚める。
「ヌヴィ…?お帰りなさい」
今日はお出迎えを忘れてしまったな、と落ち込んでいるとヌヴィは私の頭を優しく撫でてくれた。
「あぁ、ただいま帰った。今日もいい子で待てたんだな」
「ん、」
最初はいきなり連れてこられて軟禁されてつい抵抗してしまうのも仕方のないことだろう。まぁ、今では考えられないけど。
「ヌヴィのせいよ、」
「ふっ、私のせい?」
絵画のように美しく笑うヌヴィ。
そうだ、ヌヴィのせいで……
「私が、ヌヴィがいないと何にもできなくなったのは紛れもなくヌヴィのせいじゃない?」
1人でできることはここに連れてこられた時よりもずっと減ってしまったし、ヌヴィが側にいてくれないと寂しくなってしまうのも全部全部ヌヴィのせいだった。
「私をこんなダメにした責任、とってよ」
水龍であるヌヴィにそう言っても仕方がないか、なんて心のどこかで思いつつもヌヴィの答えを待つ。
「ならば、その責任は私の残りの人生全てで取らせてもらおう」
「え…??ぬ、ヌヴィ?」
「ずっと責任は取らねばと思っていたからな。君の……体をいじらせてもらった責任を」
「えっと???」
理解が追いつかない。いじらせてもらった??それはどう言うことなのだろうか、
「人間である君は私よりも寿命はずっと短い。勝手なことをしてしまって申し訳ないが……君を手放すのはどうしても嫌だったんだ」
「そ、れで、残りの人生全てで責任を取るってどう言う意味なの?」
いや、意味なんてわかっている。聞いたのはただの意地だ。絶対にヌヴィの口から言わせてやるって言う意地。
「君には真っ直ぐに伝えるべきだったか?……どうか、私と死ぬまで共にいてくれないか?君の残りの人生全てを独占する権利が欲しい。私と結婚してくれ」
まさかヌヴィの口から本当に聞けるとは思ってなかったため今の私は間抜けそうな顔をしているだろう。
「まぁ、返事は聞くまでもなさそうだがな」
全てバレていた。
いや、バレてしまうのも仕方がないか。正直ヌヴィに軟禁をされて抵抗したのはほんの数日。それ以降はヌヴィに絆されて、受け入れていた。
それが何よりの答えだろう。
今更伝えると言うのは中々に恥ずかしいものだ。そして目の前の龍はそれを知った上で私に言わせようとしている。
本当、いい性格をしているな。
「ずるい人、」
こちらを真っ直ぐ見つめるヌヴィの頬にキスを落とす。
「ここは誓いのキスをする場所だから、式まではとっておこう?」
ここ、とヌヴィの唇を指差す。
惚けたような顔をしたヌヴィを見て、してやったりと笑う。やられっぱなしなんて悔しいもの。
「これが私の答え、貴方ならわかってくれるでしょう?」
そんな挑発的に言った私が、ヌヴィに噛み付くようなキスをされる3秒前の話。