テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「第四章 赤月の魔女 ―第一戦・変異巨人」
裂け目から漏れ出した赤月の光は、巨人の全身を飲み込み、形を歪ませていった。
銀色の鎧は砕け、代わりに黒曜石のような装甲が芽吹くように張り付く。
その背からは、刃のように鋭い結晶翼が広がり、空を裂く音が響いた。
「……まずい。あれは“月喰(げっしょく)の形態”」
セレスティアの声がかすかに震える。
「封印時ですら、星の騎士団が半数以上……」
言葉の続きを聞く前に、巨人が動いた。
瞬きする間もなく距離を詰め、翼から放たれた結晶の刃が空を埋め尽くす。
あなたはセレスティアと同時に星剣を振るい、星屑の壁を展開して防ぐが、衝撃で膝が軋んだ。
その時、魔女がゆっくりと歩み出た。
赤月の光に照らされ、長い髪が揺れる。
「覚えてる? セレスティア。
私たちが初めて並んで戦った夜……同じ空を見上げて、同じ願いを抱いたはずよ」
セレスティアが息を呑む。
「……その願いを、あなたは歪めた」
魔女は首を傾げ、薄く笑った。
「いいえ。私は“正しくした”だけ。
星はもう人を守らない。なら、私たちが世界を作り直せばいい」
巨人が再び咆哮を上げ、翼の結晶が鋭く輝く。
あなたとセレスティアは視線を交わし、同時に走り出した。
巨人の刃をくぐり抜け、懐へ踏み込み、二人の剣が交差する――
しかし、次の瞬間、翼の一枚が閃き、あなたの腕を裂いた。
「っ……!」
熱い痛みが広がり、剣を握る手が震える。
巨人は一歩踏み出し、振り下ろす拳が迫る――。
「まだ倒れないで!」
セレスティアの叫びと同時に、星剣が再び脈動した。
二人の意識が一つに重なり、刃の光が夜空を割るほどに強くなる。
その光の中で、魔女の声が静かに響いた。
「……やっぱり、あなたは私を殺せない」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!