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地雷さんは回れ右
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普段エデンで生活をしているおれが会議室へ訪れることはそう多いほうではない。
そんなおれにすぐに会議室に来てほしいと連絡が来たのは十八歳の時。もうすぐで高校を卒業する二月のことだった。大学にも行かず、にじさんじに残るためおれはこの時期は結構暇だった。そんなある日のことだった。
「どーも。珍しいね。レオスからの呼び出しなんて」
「ああ、ローレン。悪いね、急に」
「いえいえ。それで、何かあったんですか?」
よいしょ、と腰を下ろす。部屋には樋口さんと叶さん。そしておれを呼び出したレオスの姿があり、樋口さんとレオスはいつも通りに見えたが叶さんは難しそうな表情をしていて機嫌が悪そうだ。珍しい。
「突然で申し訳ないんだけど、ある人がローレンと食事をしたいと申し出て来てね」
「食事?」
「ああ。相手は最近事務所に懇意にしている出資者なんだ。まだ付き合いも浅いし断ってもいいのだけど、まあまあな額を頂戴していてね。どうするべきかと話していたんだよ」
「俺は反対。」
レオスの話を遮るように腕を組んで叶さんが意見を口にする。
「俺らを共に、そこにローレンが同席するのならまだ分かる。しかし先方は“必ず”ローレンを一人で寄越せと言っているのだろう? 何か他の意図があるとしか思えない」
「…君はどう思う? ローレン」
叶さんは今回の件を反対していて、レオスと樋口さんは当事者であるおれに意見を求めているようだ。
確かに裏がありそうな話だ。だが どうとでもなるだろうと結論付けておれは返答する。
「別にいいですよ、食事くらい」
「ローレン!」
「大丈夫だって叶さん。最悪は回避出来ると思うよ」
ね? と得意気に言えば叶さんは言葉を詰まらせる。事務所にはいくら金があっても足りない。資金はあればあるほど良いのは分かりきっている。それは叶さんの言葉を詰まらせるには十分すぎる理由だった。
その出資者とやらが何を考えているのかは分からないが、相手を見ることが出来れば様々なことに対応が出来るだろう。
「じゃあローレン。場所はこのホテルのレストランになる。何事もなく問題を起こさないように。何かあったら叶さんが飛んで行くからね」
「了解。ま、適当に話でもしてくるよ」
「ローレン」
樋口さんに呼び止められ何? と答えれば樋口さんはいつもと変わらない表情で、しかしおれの身を案じた言葉を投げかけてくれる。
「レオスの言うこともそうだけど、何かあればすぐに助けを呼んでいい。私たちに遠慮することはない。そうでしょ、レオス」
「勿論。何よりも最優先にすべきは君自身だよ、ローレン」
「分かったよレオス、樋口さん。ありがとね。叶さんにもよろしく」
最後まで微妙に納得していなかった叶さんを思い出し、笑いが漏れてしまう。優しい人だと思うし、甘やかされているなとむず痒くなってしまう。
そんな叶さん達の力に少しでもなれればいいなと思い、おれは手を振って会議室を後にして指定されたホテルへと向かうことにした。
(そういえば、今日はくっさん、スタジオにいるんだろうな…)
同じスタジオであれば顔を合わせることはもちろんあったけれど、お互い忙しくなってから葛葉と個人的に顔を合わせることはなかった。
はぁ。理由の分からない溜息を吐いておれは足を急がせる。事務所からこのホテルはまあまあ距離がある。
ホテルに着けば観光客や一階のレストランを利用する客の姿が目に入る。一階のレストランを確認すると、おれの指定されたレストランとは違う名前だった。
ボーイに声をかけて、指定されたレストランは何処かと尋ねれば十階になります。と丁寧に返され、お礼を言ってエレベーターで十階まで上がることにした。
なんというか、居心地が悪い。こういう場所で食事なんてしたこともないし、したいとも思わない。断っていれば今頃は皆と一緒にご飯を食べれていただろうと思えば溜息が漏れた。
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コメント
1件
愛読させていただいてます! もう葛葉の嫉妬が見たすぎてやばいです! これからも頑張ってくだい