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kzlr
モブ(茂部)にひどいことされるろれ
地雷さんは回れ右
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ポンっ、という音と共にエレベーターの扉が開く。一階とは違って人の気配がほとんどなく、身構えてしまう。階を聞き間違えただろうか。
そんな不安を抱えたまま、奥へと進めば確かに指定された名前のレストランがあり、レストランの前にはかなり体格の良いウェイターが立っている。妙な威圧感に足を止めると、おれに気付いたウェイターはその見た目に反してお待ちしてました。と礼儀正しくお辞儀をしてくる。
そのアンバランスさに更に居心地は悪くなった。
案内された席は窓際で、綺麗な夜景を眺めることの出来る席だった。そして、そこにはおそらくレオスが言っていた出資者の姿が既にあった。
「やあ、ローレンくんだね。待っていたよ」
「…はじめまして。茂部さん、ですか?」
「ああ、私が茂部だ。さあ、座ってくれ」
レオスから聞いていた名前を尋ねればどうやら当たりらしい。茂部と名乗った出資者はどこか品性を感じさせる小太りな男性だ。着ているものや身につけているものから相当な金持ちであることは間違いないだろう。
そんな茂部さんにおれはなんとか笑みを作る。苦笑いになっていないことを願うしかない。何故なら、
(うーん…これは“はずれ”だよなぁ…)
茂部さんを初めて見た時、思ってしまった。スラム育ちのおれは自分に危害を加える人間かどうかを判別できる。この人はおれをホテルの一室に連れ込む気なんだろうな、と。そんなドラマでしか見たことのないことをこの人は望んでいる。
最悪の場合は正当防衛として気絶させて逃げるのもありかもしれない。しかし、叶さん達に迷惑をかけるのも気が引けるためそれは本当に最終手段だ。
そうならないように、何が起こっても対応出来るようこの男を警戒しなければ。
おれがそんなことを考えているなんて知らずに茂部さんはそれはもう楽しそうに話を続ける。あなたの事務所は素晴らしい。茂部さんはおれの機嫌をとるように身内を褒めちぎる。本来なら嬉しいはずだが下心が見えてしまっていては全て無駄だ。
帰りたい。切にそう願うもののコース料理というものは時間がかかるものだとこの時初めて知った。運ばれてくる料理はどれもオシャレで、確かに美味しい。
どうやらおれが席を立った隙に茂部さんは薬を盛るつもりらしい。どこまでも古典的な手口に呆れてしまう。残念だが、おれは手洗いに立つことはない。このまま席を立たずに食事を終えてしまえばその目論見も叶わないだろう。
メイン料理までは何事もなく食べ終え、残すはデザートのみ。それが終わったらとっとと帰ってしまおう。そんなおれを嘲笑うかのように茂部さんは嫌な目つきでおれを見つめてきた。
「君を一目見た時から、心奪われてね」
そう切り出すと茂部さんはおれの手をすり、と撫でてくる。嫌悪感から手を引っ込めれば茂部さんは気を悪くするどころか、更に楽しそうに続ける。
「いいね。ローレンくん。君、恋人はいるかい?」
「…やだなぁ茂部さん。それ、セクハラですよ」
「セックスの経験は? 男としたことはあるかな?」
…気持ちが悪い。
食事が終わりそうで焦っているのか、茂部さんは捲し立てるように気持ちの悪いことばかりを聞いてくる。あと少しだから。そう自分に言い聞かせてなんとか我慢していると、茂部さんがテーブルの上に何かを置いた。
「上に部屋を取ってあるんだよ。ローレンくん、わかるね?」
パチリッ
目の前の男越しにベッドに組み敷かれる自分の姿が視える。しかも鮮明に。
(──まずい!)
慌てて立ち上がると途端に視界が回る。立って
いることが出来ずに両膝をつくと、瞬間、感じたこともない嫌悪感に鳥肌が立った。
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