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拓「るっくん〜、お風呂入ろ。」
そう言ったのは拓実だったのに。
いざ入ろうとした瞬間、拓実は耳まで真っ赤にして困った顔をした。
拓「やっぱ今日は、恥ずかしいからさ。……また、一緒のときに。」
瑠「そっか。」
それだけ。怒らない。責めない。でも、ちょっと胸の奥だけが、
すこし沈んだみたいに重たくなる。
拓実はタオルを持って風呂場へ入っていった。扉が閉まる音は、やけに大きく聞こえた。
瑠姫はリビングに戻って、ソファに座った。
スマホを触ってみても、頭には何も入ってこない。
“恥ずかしい”の意味は分かってる。一緒に入ったらきっと、可愛がられすぎるか、
逆に拓実が照れすぎて何も出来なくなるか。
分かってるのに、それでも。
胸が、寂しい。気づいたら目元がじんと熱くなってた。
瑠「俺、ほんと……拓実のこと好きすぎ。」
声にしたら、余計に滲んだ。腕で目元を雑に拭うけど、涙ってそう簡単に止まらない。
照明のあたたかい光の中で、
瑠姫は小さく丸くなって、
ただ“待つ”ことにした。
ーお風呂が終わるー
シャワーが止まる気配。脱衣所のドアが開いて、足音がゆっくり近づいてくる。
拓「るっ〜くん?」
声は柔らかかった。ソファ越しに覗き込んで、瑠姫の目が潤んでいることに気づいた瞬間——
拓実の表情は一気にほどけた。
拓「寂しかったの?」
瑠姫は言葉にできない。ほんの少し唇を噛んで、子供みたいに下を向いたまま小さく頷く。
拓実はそのまま瑠姫の膝の間にしゃがみこんで、
視線を合わせる高さまで下がった。濡れた髪から、まだ湯気がゆっくり漂っている。
拓「かわいい」
指でそっと頬を拭って、目元に残る涙をやさしくすくい取る。
拓「ねぇ、なんで泣いてん?俺いないと寂しいん?」
瑠姫は息が詰まって、声が細くなった。
瑠「……うん。」
その瞬間、拓実の顔がほどけた。もう全部受け止める、って顔。
拓「おいで。」
言い終わるより早く、抱きしめられてた。胸に顔を押し付けられるみたいに、ぎゅうって。
拓「るっくん、泣かんといて?」
背中に手を回して、ゆっくり、ゆっくり、抱く強さが深くなる。
瑠「俺、、拓実のこと好きすぎ。」
拓「知ってるよ。俺もだよ、るっくんのことだけ。」
声がやさしい。落ちていくくらい甘い。拓実は瑠姫の頭を撫でながら、
口調が完全に甘やかしモードに変わる。
拓「よしよし。寂しかったねー。えらいね待ってて。」
瑠「っ、やめ、、恥ずかしい」
拓「やめへんで?」
瑠姫は胸に顔を押しつけて誤魔化すしかない。心臓がうるさい。
拓実は肩に顎をのせて、小さく笑う。
拓「次、一緒に入ろ。絶対。」
瑠「約束。」
拓「うん、約束。」
そのまま、二人はほどけるみたいに抱き合っていた。
END
つづく