朝。
台所に差し込む柔らかい光の中で、2人は向かい合ってパンを食べていた。
でも、どちらも食べる速度が明らかに遅い。
瑠姫はフォークを持ったまま、ちら、と純喜を見る。
拓実はすぐ視線に気づいて、ふわっと笑う。
拓「なに?」
瑠「別に……なんでもない。」
けど、ほんとは分かってる。離れたくない、っていう気持ちがお互いの間にずっと漂ってる。
食器を片付け終えたあと、靴を履くまでの時間が、やけに重くて。
玄関。
靴を履く拓実の後ろ姿を見ていたら、胸がきゅっとした。
瑠「拓実。」
呼んだ瞬間には、腕が勝手に伸びてた。後ろから抱きつく。
瑠「行かないで。」
拓実の肩が小さく揺れる。
拓「俺も、、行きたくない。」
声が震えていた。ゆっくり振り向いて、瑠姫の腰に腕を回す。
距離なんて、もうなかった。
唇が触れる。一瞬じゃなくて、吸い寄せられるみたいに、
離れられないまま深くなるキス。
瑠姫が息を吐きながら、震える声で囁く。
瑠「……まだ、離れたくない。」
拓実は瑠姫の頬に手を添えて、そっと額を重ねる。
拓「離れたくないやんか……俺も。ずっとくっついてたい。」
瑠「じゃあ……もう一回。」
唇がまた重なる。今度はゆっくり、溶けるみたいに甘くて、くすぐったくて。
拓実はキスの途中で、名前を呼ぶみたいに声を漏らす。
拓「るっくん、、」
瑠姫の胸がぎゅっとなる。呼ばれるだけで、泣きたくなるほど愛しい。
瑠「帰ってきたら、またくっつこ。」
拓実は目を潤ませたまま、笑う。
拓「絶対。もう離れへん。」
離れたくなくて、またキス。ドアを開けてからも、手は離れない。
拓実は靴を履いたまま、もう一度抱きしめる。
拓「行ってきます、って言うの、こんなにしんどいんやな。」
瑠姫は拓実の頬に指を滑らせて、優しく微笑んだ。
瑠「行かないでほしいけど、、いってらっしゃい。俺ここにいるから。絶対。」
拓実は泣きそうな笑いで頷く。
拓「ただいまって言うからな。」
瑠「うん。俺、待ってる。」
ドアが閉まる。静かになった玄関。なのに、胸の奥はちゃんとあたたかい。
「離れても、ちゃんと繋がってる。」
そう思える朝だった。
END
次回は最終話!!(共愛はまだ終わらないよー(^O^))
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