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<瞳>
Ryoとの食事会はたのしく和やかに終わり、ラインの交換をして終了した。
会社に戻って最終的にデザインをまとめる。
Ryoである三島亮二の印象は何となく捉えどころのない人ではあるが決して悪い意味ではない。ただ、可愛らしいイラストのイメージとはちょっと違っていた。
バレンタインが終わればホワイトデー、新学期を迎えて春が来て夏がくる。
イベントは目白押しで商戦が変わってくる。
新商品に関するコンペなどやることがたくさんあるが、忙しいけど好きなことを集中してできるのは嬉しい。
そう思えば、正人との離婚もそれはそれでよかったのかも知れないと最近はおもうようになった。
でも、不倫に気づかなければ今も一緒にいたんだろうか、そうなると気づいたときは、預金は0円になっていたかもしれない。
”もしも”は無しだ。
椅子に座ったまま組んだ手を頭の上に持って行って伸びをする。
背筋がすーっと伸びて気持ちがいい。
作業用に持ってきていた資料を資料室に戻しに行く途中で里中君とすれ違い、資料を抱えたまま手首だけ上げて挨拶をした。
棚にそれぞれのファイルをしまってから、おまけ玩具の資料を見ながら子供の頃におまけが欲しくてお菓子を買ったことなんかを思い出していると、ドアの開く音のあとにカチリとロックがかかる音がしてとっさに陰に隠れた。
普段、鍵をかけることは無いし時間的にも違和感がある。
一瞬、恋愛小説や漫画を思い出してリアルオフィスラブとかあるのかしら?と、思ったが耳を澄ましても足音は一つしかない。
さぼり?
って、言っても就業時間はすぎているからさぼりにならないし、頭をひねりつつ音のするあたりをそっと覗いてみるとおなか回りが良い言い方をすると恰幅のよいスーツ姿の男性でそのスーツには見覚えがあった。
毎日のようにハラスメントをしてくる上司だ。
なんで?
てか、どうして鍵をかけた?
嫌な予感がして、ポケットに入れてあるボイスレコーダーのスイッチを入れた。
「奥山」
返事をしないほうがいいと本能が働き、一瞬声が出そうなのを掌で抑える
カメラがありますよと言ってからは、リフレッシュルームでのボディタッチは無くなった、いい加減止めてくれたんだと思ったがここでセクハラをする気なんだろうか?
見つからないように扉に行くことが出来れば、そのあとは知らん顔をしてやりすごす事ができる。
「奥山、いるんだろ?」
ダメだ、これは私がいることを確信している。
話をしながらドアに近づいてダッシュするしかないと、身をひそめていたスチール棚の後ろから出た。
「課長?どうされたんですか?なにか資料をお探しですか?」
「よかったよ、探しているものがあるから一緒に探してくれ」
そう言いながら書籍ラックをはさんで向かい合わせになった状態で笑っている。
「たぶん奥の棚だと思うんだ」
「一旦、デスクに戻って来ていいですか?」
すこしづつドアに近づこうとしたが、課長が先にドアの近くに行ってしまった。
「すぐに見つかると思うから」
そう言いながら、後ろ手で近づいてくる。
「ほら、奥に行って。奥に書類の山があると思うんだがそこにあるんだよ」
書類の山?そんなのあったっけ?
どちらにしても、にやにやしているのが気持ち悪いし、変なセクハラをするんじゃないかと恐怖が襲ってくる。
しかも、後ろに何かを持っているみたいで、それも気になるので目を離さずにゆっくりと後ずさる
「何をお探しですか?言っていただければ私が持っていくので課長はデスクで待っていてください」
そう答えた時に、一気に距離を詰められキャビネットに押し付けられると共に口を押えられた。
恐怖でガクガクと体が震える。
「奥に居る奥山だよ」
体ごと押し付けられているため身動きができない。
ふさいでいた手が離れても、恐怖が最大になるとのどが詰まって声がまったく出ない。
逃げようと課長の体を手で押し返そうとしたときに両腕をつかまれ、持っていたガムテープでぐるぐるとまかれ床に倒されると、さらに奥に引きずられる。
足をバタつかせても力の差でなすすべもなく引っ張られ閲覧用に置いてある3人掛けのラウンジソファまで引きずられていくとガムテープでまかれた腕をラウンジソファの足に固定された。
「こんなこと犯罪」です、言い切らないうちにいつの間にか外していたネクタイを口にねじ込まれガムテープを貼られてしまった。
この人、慣れてる。
そう思った時、ブラウスをブラジャーと共にたくし上げられスマホで写真を撮られた。
「訴えられなければ犯罪にならないんだよ」
宇座課長はニヤニヤとしながら、胸をもみ始める。
「大丈夫、避妊はしてやるから。妊娠なんかしたら問題になるだろ」
怖い怖い怖い
足で蹴ろうとすると右足を折りたたむようにガムテープでまかれてしまい動くことができない。
「澄ました女が怖がった末によがる姿は最高なんだよ。お前が腰を振って喜ぶ姿を何度想像したか。生意気な女を犯して写真を撮りまくるのが趣味なんだ。お前のエロい姿をたくさん撮ってやる。その写真をネットに流されたくなければ、あとはときどきヤラしてくれればいい。俺が飽きたらそれで終了だ」
声も出ず、涙だけしか出ない。
なんで、なんで私ばかり。
「旦那に浮気された挙句、捨てられたクセに何でもないような風を装っているのも鼻につく」
課長はそう言い放つとスカートを捲り上げるとショーツに手をかける。
必死に足を閉じようとするが片足を固定されうまくいかない。
んんんんっ
怖い助けて
凌太
声に出ない叫びを上げた時
「誰かいますか」
と言う声と共に足音が聞こえた。