コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
コンサートが引けて、楽屋に戻りメイクを落としていたあたしは、
受付でまとめられた、たくさんの贈り物にふと目を落として、藤カゴ入りのブーケを「かわいい」と何気なく手に取った。
すると、中からひらりとこぼれ落ちたものがあった。
何だろうと拾ったあたしは、それを見た瞬間、ゾッとした。
体が小刻みに震え出して、止まらなかった。
そのメッセージカードの1枚に書かれていた文字は──
濡れ女
ツアーのラストを、明日に控えて、あたしはもう、歌えないとさえ思った。
メイクを落としかけていたことも忘れて、体が小刻みに震え出して止まらなかった。
あの会場のどこかに、高校生のあたしを知っている人がいた。
歓声が響くさ中で、誰かが「濡れ女のくせに」と、ひとりほくそ笑んでいた。
整形をして、年齢を偽って、本名は非公開になってる七瀬リオの正体が、バレることはないと思ってた。
もう誰にも、あの頃のあたしは、探し出せないだろうと思ってた。
なのに、見つかった。
知られてしまったんだ。