コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ねぇ、ドス君愛情って何?」
遠い昔、青二才な私へ彼は問い掛けた
しくじった
察しの良い我が親友から私の事を嫌っている3歳児まで、どんな人間でもこの一言で理解出来るだろう
いつも通り敵に乗り込んで、情報を盗んで敵を皆殺しして帰る。それだけなのに
嗚呼、僕は道化師失格だ
異能を使っていつも通り逃げようとしたが、その前に利き手を拳銃で撃たれてしまった
更にそっちへ意識が向いてる内に後からも敵が来ていたのか電気ショックを受ける
ああ、こんな事になるくらいなら、
目が醒めると私は椅子に裸で縛られ、動けなくなっていた
「へぇ、こんな趣味なんだぁ」
私の監視であろう男へ上目遣いで睨み付ける
男は私が起きた事に気付いたのかこっちを見る
「ニコライ・ゴーゴリ。天人五衰の情報を吐け」
な~んだ、テンプレか
「嫌だね」
私がそう声色変えず返すと男は激昂した様子で私の頬を殴り付ける
殴られた頬はボキッという音を立てヒリヒリとした痛みが走る
「痛ッ、、、、」
より反抗期的に男を睨み付けると調子に乗ったのか私の顎を掴み無理矢理上を向かされる
「今から、拷問を始める。吐くなら今のうちだ」
そんな事しても私は吐かないのに憐れだなぁ
そのうちシグマ君あたりが助けに来てくれるさ、きっと
「だから吐くわけ無いじゃん。脳筋過ぎて脳みそ無くなっちゃった?」
男に唾を飛ばし、そうまた不貞腐れる
男は怒り狂い、注射を私に打ち込んだ意識がまた、遠のく。
もう、あえなくなるのかな
どんなに背けたくなるような現実でも、夢にも限界がある案の定、私は目覚めるとコンクリートで出来た台の上で手足を固定されていた。口は塞がれていないのがなんとも悪趣味だ
男は何処からかナタのような刃物を取り出し、私の小指へ当てがう
「ふーん、脅し?でも、そんなの効かなッッ!!???」
男はあえて関節から狙いを外し、骨のある位置へと切り込みを入れた
酷く血の気が引き、冷や汗が出る。しかし、それを男に悟られてはいけない、平静を装わなればならない
男は私がまだ吐かないのを良い事にあと少しで骨にまで到達する小指を放置し、何やら針を取り出した
どくどくと脈打つ小指は助けを求める。が、誰も来ずただただ血液を垂れ流すだけだった。
男は私の人差し指の爪の間へと、針を突き刺した
「いっッッッッッッッ!?!?」
男は余りにも酷い苦痛に喘ぐ私へと嘲笑した
「ッ、、、!」
針を左右上下に動かされ、更に痛みが増す
メリメリメリとえげつない音がコンクリートの部屋に鳴り響く
すっかり浮いてしまった爪を男にペンチで剥がされてしまったのだ
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」
流石に何度か死にかけた事のある私でもこれは感じた事の無い程の激痛だった
これがあと何時間、何日続くのだろうか。
幼少期に見た悪夢をまた見ているようだ
誰かの囁やきが聞こえてくる。
誰かがこっちを見て嘲笑う
あの人と一緒にいて浮かれていたが、結局どう足掻いても変われはしないんだ
嗚呼、煩い。
「ゴーゴリが敵に捕まった?そんな事、ある訳無いだろう」
ゴーゴリが囚われた事を知った天人五衰の最年少の彼がそう返す
なんせあいつは道化師なのだから
どんな手も使い、味方までも騙す。その道で言えば彼よりも優れていた
そんな奴がミス如きで捕まるなんて、
何かが
「なら、僕が取り返しに行きます」
各々が思考を連ねる中、
秀才と呼ばれる様な面々の中でもぶっちぎりの天才。ドストエフスキーが声を上げた
周囲はそれに異常に驚いた、なんせ彼は追われている身。そんな人間が敵対組織にのこのこと乗り込むなんて敵からしたら万々歳だ
そんな事、誰もが理解していた
しかし行けなかったのだ
気付くと彼は何処かへ行ってしまった様だ
まるで全てが解っているかの如く
会議から抜け出し、僕が敵陣へと乗り込むと一勢に襲い掛かって来た
「質より量。まさに此れですね」
わりと弱かったので銃で軽くいなしゴーゴリが囚えられているであろう地下へと向う
本当に、何故あの彼が囚われたのだろうか
地下室の一番奥、コンクリートで出来た唯一の部屋まで来てみたが、中から異臭がする。一瞬嫌な想像が頭を過る
「やぁ、この子の彼女さんw?」
男が厚かましく僕に話し掛けてくる
「彼氏ですけど」
適当に受け流しているとコンクリートで出来たであろう台の上に血塗れになり蹲るゴーゴリがいた
目的が済みそうなので、男に銃口を向ける
「彼女さんの処女、美味しかったよ
抵抗してたけど情報と脅しをチラせつかせたら、ね?」
男はニチャリと微笑んだ
男の左肩へ弾丸を打ち込む
外で待機している車へと180センチ超えの男を引き摺って行くのは少し恥ずかしいが無理矢理車へと彼を投げ入れた
「どういう事ですか?コーリャ」
目覚めるとドス君と同棲している家の寝室で寝ていて、呆然としていると私が起きた事に感付いたドス君が此方へ顔を見せず問い掛ける
「え?」
突然の出来事に頭が追い付かず、言葉が詰まる
ドス君は何時に無く怒っていた
「答えて下さい」
何時も冷静なドス君が初めて上げた怒鳴り声だった
仏の顔も三度までというが、まさに此処は修羅場だった
ドストエフスキーはその激情に任せて、ゴーゴリの首を締めるような形で押し倒した。
僕の気持ちが解らないのなら、身体に教え込めば良い
そう思っていた
「やめろ!!!!!!」
ゴーゴリはドストエフスキーを突き飛ばし、そう叫んだ誰よりも愛してる彼の姿を、何処か自分を襲った輩の姿に重ねてしまった事に気付き呼吸が出来なくなる
不意を付かれたドストエフスキーは床に尻もちを付き、ゴーゴリは自分のした事に気付き涙ぐんでいた
「いやっ、ヒュ、違ッ、カヒュ、」
余りにも声を張り上げた物で唾が器官に入り込みむせるゴーゴリを尻目にドストエフスキーは重い腰を上げ、部屋を出て行こうとした、、、、、それを阻んだのはニコライ・ゴーゴリ、先程ドストエフスキーを拒んだその人だった。
「、、、、、、、、、、、、、何ですか、止めて欲しいのでしょう?」
靡くドストエフスキーの羽織の片隅を抱き締めた彼は
ドストエフスキーの羽織へとシミを作ってゆく
「嫌だッ、いかないで、、だいて、ほしい、
ねぇ、抱いて、、?」
ドストエフスキーは表情一つ変えず無言でゴーゴリの方へと振り向く
ドカッ
彼は、ゴーゴリを力の限り殴り付けた
いくら病弱な彼でも成人男性だ。そんな彼に殴り付けられたゴーゴリの腹部は赤色に腫れ上がっていた
「うぇ゙っッ、」
腹を殴られ、えずいてしまったのだろうか
当然、数日間何も食べられていない彼から出るのはただの胃液で、喉を、食道をヒリヒリと燃やすだけだった
「まだ気付かないんですか?
貴方は自分の身体を売ったんですよ
あの小汚い虫螻の様な男に。
それが、何を意味するか分かっていないんですか?
恋人の僕ですら、貴方と関係を持った事等無いのに!
なんであんな男が!僕の恋人で、初恋で、狂おしい程愛している貴方を!!」
ドストエフスキーは狂った様に頭を抱え込み叫んだ
「、、、、、、でも、ドス君は僕の事、愛してないから、
僕は、愛が何かわからないんだ」
「は?そんな事、有る訳無いじゃないですか、
僕は、貴方の幼少期からずっと貴方を愛していますよ
本当はコーリャの事、親にさえ触れられたく無かったんですよ?
学校には通わせない、幽閉はする、暴力は振るう。
でも!、そんな親でも!僕と一緒に抜け出す事ではなく、親を選んだ!!僕の何が駄目なんですか!
僕は、一体、どうしたら良いんですか、
どう、貴方を愛せばいいんですか、」
ゴーゴリは珍しく感情を表へと出す彼に酷く驚いた
しかし、そこまで愛を語られても、ゴーゴリは何も感じない信じれないのだ。ゴーゴリは自分が求められていると感じた事等無い、
何故なら、彼は幼少期親からの虐待に苦しんでいた。暴力、幽閉、ネグレクト。幼子には耐え難い苦痛と他人への羨望。それらによって、彼は壊れてしまった
常に他人に嫌われ無いよう道化を演じ。狂気を奏でる
正に孤独な役者だった
幼少期の幻覚と幻聴、自己嫌悪。それを癒やしたのはただ一人、恋人のドストエフスキーだったのである。
それでも、彼は壊れて行った
愛情を受けた事がなく、ドストエフスキーから本当に愛されているのかも解らなかったからだ
「ニコライ・ゴーゴリ」彼にとって暴力だけが愛情だったから、暴力が愛情と狂信する事で脆い彼の心は歪に繋がれた。暴力と性でしか、彼を満たす事は出来なかったのだ
「もういいです
どうせこうなるのであれば、強硬手段に出ます」
ヒョードル・ドストエフスキー。彼はリビングからシルバーに輝くフルーツナイフを持ち出した
そして、ゴーゴリの踵の上、アキレス腱を切り裂いてしまった
出来る血溜まりの中。カチャリと鳴る南京錠の中、紫色の瞳の片隅。ゴーゴリは俯き、うっすら微笑んでいた
それからゴーゴリは日々暴力を受けては、無理矢理犯されていた。自身に暴力を振るっては愛を囁くドストエフスキーがゴーゴリにとってこの世で一番と言って良い程愛おしい者だった。
自身が満たされるというのも有るが、完璧な彼が暴力でしか愛情を表現出来ないというのが。彼には自分しか居ないと夢を見られる唯一の時間だった。
そんな訳無いのに。
最近、ドス君の帰りが遅い
僕の分の仕事をやっているのだろうが、それにしても遅い。それに最近の彼からは咽る程甘ったるい蜂蜜の様な香水の香りがする、彼は香水なんて付けないのに
本来なら、なによりも先に彼を信じるべきなのだろう。
でも、急に心が痛くなって、苦しくなる。
彼に付けてもらった痣を辿るが、
もしかしたら僕はもうどうでも良いんじゃないか
ドス君は女性が好きで僕が邪魔なんじゃないか
そう死ぬ事しか考えられなくなる、
その衝動のまま、鍵を掛け忘れられていた扉から外へ行く
少し動く様に成った右脚で左脚を引き摺りながら歩道を歩く
「遠くに行かないと、」
目の前に輝く蒼を目指し、駆け足で横断歩道を渡った
「え?」
一歩足を踏み出した瞬間。誰か、男の人に突き飛ばされ、僕は向かいの歩道へと倒れ込んだ
「これが、僕の答えです。」
男の人からは何故かふんわりと嗅ぎ慣れた香りがした。息が詰まる
女性の叫び声、骨が折れ肉が潰れる音、去りゆく車
違う、コレはドス君じゃない
だって、だって、ドス君は、彼の愛情は、、、
ドス君はこんなのじゃない、
ねぇ、ドス君。暴力を愛情だと思い込む
僕って可笑しい存在なのかな
教えてよ、だって誰も教えてくれないんだもん
ドス君もさ、僕をどう愛せばいいか解んなかったんだよね。
僕も解らないよ。僕を愛してくれる人をどう愛すのか、でも僕はもう長くないからせめて好きな人に殺されたいな。