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「……25! 終わったーーー!」


サーシャへの愛と、愛のマッサージのおかげで腕立て腹筋スクワットは楽々クリアだ。

愛のマッサージ……今までのマッサージとは全くの別物。

すごく気持ちいいのは当然だけど、サーシャの幸せそうな笑顔が効果抜群だった。

気持ちいいよって言ってあげると、笑顔の破壊力が増して世界一の美少女になる。

そんな人がわたしの為だけにマッサージをしてくれてる……感動しすぎて、何度も愛してるって言ってしまった。その度に頬を赤らめて、「私も愛してる」って言ってくれる……天国ってここにあったんだと感動したよ。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「お疲れ様、よく頑張ったよ。拭いてあげるね」

「う、うん……」


気持ちいいよー……、すごく幸せー……、愛してるよー……。


「あとはお風呂掃除だよね。アリアがお風呂掃除をしてる間に、私は自分のノルマをこなしてくるよ」

「そっか、サーシャは50kmだもんね……」

「うん。じゃあ、行ってくるね」

「あ、これ持ってって。氷……。はい」


水筒に普通の魔術氷を10個出してあげる。


「ありがとう。元気100倍だよ」

「うん」


サーシャは水筒を肩から下げ、氷を1個食べてから自分のノルマに出かけた。

わたしは罰のお風呂掃除1日目だ。


キュ、キュ、キュ……。 ゴシ、ゴシ、ゴシ……。


「暑い、すごく暑い……ノルマで疲れた身体には余計に効く……」


これを、あと2日?

サーシャが家族になれば少しは解放されると思ったのに、まさかの初日3連続……。理由も半分は理不尽だし、ありえないよ……。


「お風呂掃除の魔術とかあれば便利なのに……」


……そうだよ、魔術がある。種類は無限大の魔術が。

思いついてもすぐには使えないけど、考えておく分には自由だよね。

実際に出来るかどうかは感覚でなんとなくわかるし、あとでじっくり考えておこう。


「終わったよー」

「はい、お疲れ様」


お母さんが晩御飯の準備をしてる。

今日はわたしとサーシャの結婚記念日なんだから、ものすごい豪華な晩御飯が出るかと期待してたんだけど、普通の晩御飯に見える。

……昨日が豪華だったもんね。流石に二日連続でサーシャ用のフルコースは出ないか……。茄子のフルコースも見当たらないので、プラスマイナスゼロかな……。

あれ? そういえば理想のお義母さんがいない。帰ったの?


「お母さん、理想のお義母さんはどこにいったの?」

「あんたの目の前にいるじゃない」

「お母さんのことじゃないよ、サーシャのお母さんのことだよ。帰ったの?」

「あんたね……。はぁ……フーシャさんは用事があるから一度帰ったわ。晩御飯はさっちゃんのご両親も一緒にとるからそのつもりでね」

「うん」


うちの家族とサーシャの家族が一緒に食事……ひさしぶりな気がするよ。

こういう話をすると、サーシャと夫婦になったのをすごく実感する。

夫婦、か……。

サーシャと夫婦、さっちゃんと夫婦……。昔から大好きだったけど、まさか結婚するとは思わなかったな……。

愛をしった今は結婚して当然だと感じるけど、今日の朝まではただ一緒にいることしか考えてなかった。サーシャは6年前からわたしを愛していてくれていて、ずっと結婚したい、一緒に住みたいと思って準備をしていたんだよね……。

ちゃんと、幸せに出来るのかな……愛の重みが違いすぎる気がする……。


「お風呂に入らないんだったら晩御飯の準備ができるまで勉強でもしてなさい。テストで赤点なんか取ったら、さっちゃんに笑われるわよ」

「うん……」


お風呂はサーシャと一緒に入りたいから、タイミング的に晩御飯のあとになるかな。

勉強しよう……サーシャは6年間努力してきて今も努力してる。このままじゃ差は開くばかりでサーシャが不幸になる。

一緒にいる為に、守る為に、サーシャを幸せにする為に、遊んでる暇はないよね。

お姉ちゃんが言っていた、「全てを修行の時間にあてる」って意味が少しはわかった気がする。サーシャは何でもこなす天才の努力家で、わたしは運動神経と魔力だけが取り柄の不器用なバカ。サーシャ以上の努力をしないと横に並ぶことなんて出来ない。


「よし! 頑張ろう!」


気合を入れて勉強を始める。

サーシャの成績は全教科ほぼ満点。比べて、わたしの成績は平均30点前後。社会学に関してはいつも0点で、こないだ初めて5点を取ったくらいひどい。

まずは社会学だね。社会学で満点を目指す。愛に比べれば社会学なんて簡単なんだから出来るはず。

愛を覚えたわたしに苦手科目はない!


「……ま、そんなに甘くないよね……」


図書室では簡単に感じたのに、ちょっと進めたら難しい単語がいっぱい出てきて頭が痛くなった。


「んー、ちょっと休憩……」


はぁ、わかりやすい参考書とか買ってくる?

でも、もう時間も遅いし、ノルマで体力もほぼ使い切ってるから商店街まで行ける気がしない。

近くに売ってれば楽なのに……。


「……サーシャの部屋にないかな……」


6年間、いつでも住めるように準備してたんなら、勉強道具も揃えてる可能性が高い。サーシャのことだから、すごく役立つ参考書とかありそう。6年生のサーシャが4年生の参考書を持ってるかわからないけど、覗いてみる価値はあると思う。目の前の部屋だし、あっという間だ。


「……お邪魔しまーす……」


うーん、ホントにすごい。そのまんまサーシャの部屋だよね。

ベッドもタンスも棚も勉強机も化粧台も、全部が同じだ。

……中も同じものが入ってるのかな?

自宅とこっち、両方に同じものを揃えてると想像してたけど、もしかしたら全く違う服が入ってるかもしれない。

サーシャの別の顔……明るくてイタズラッ子で甘えんぼのサーシャ。あの性格に合わせた服を揃えてる可能性もあると思う。

わたしみたいに、可愛い系の服とか下着とかありそう……。


「どれどれ……」


タンスを開けてみる。


「おー! 可愛い系だ! わたしと同じ趣味の服だよ!」


わたしが持ってる服と下着と同じ様な趣味の衣類がいっぱい入ってた。

うんうん、サーシャも可愛いものが大好きな女の子だったんだね。明るいサーシャにはピッタリだよ。


「これなんか、わたしが小さい頃に着てたものと同じものだよ。あ、こっちのパンツも懐かしいー、絵柄が可愛くてすごく大好きだったんだよ。これも懐かしい、あ、これも、これも、これも……ん?」

……これって全部、わたしが前に使ってたやつじゃない?

このパンツの染みとかはハッキリ覚えてる。4年生になったばかりの頃におねしょしてついた染みだ。4年生でおねしょしたのが恥ずかしくて、パンツを隠したんだっけ。あとで見つかってものすごく怒られた。洗っても汚れが落ちないって……なんでこれがあるの? てっきり捨てられたと思ってた。


「この服もそうだ……この染み、覚えてるよ……」


袖にフリルがついてるお気に入りだった服。

食事中にフリルの部分がお皿のスープに浸かってたけど気付かなかった。

完全に染みついちゃって、泣く泣く処分した服だ。


「これ全部、間違いなくわたしのだ……」


全部の服、下着が、わたしのお気に入りだったもの。

汚れたり、サイズが合わなくなって泣く泣く処分した物。

……おさがりで使ってたとか?

いやいや、年齢が逆だよ。わたしがサーシャのおさがりを使うならわかるけど、サーシャはわたしの服や下着は絶対に着れない。


「なんの為にとってあるんだろう……」

「アリア……何、してるの……」

「あ、サーシャお帰り」


ランニングから帰ってきたみたい。

顔が真っ赤で震えてるけど、そんなに疲れたのかな?


「それ……」

「これ? これってわたしの服だよね? このパンツも。なんでサーシャが持ってるの?」

「……軽蔑、した?」

「え? なんで?」

「それ全部、私の、宝物……」

「宝物?」


この汚れた古着が宝物? なんで? 全く価値のないゴミだよ。

古着屋に持って行っても、ゴミ判定間違いなしの汚れたものだよ。


「アリアの近くでアリアを感じたかったの……。だから、クレア母さんにお願いして、アリアのお気に入りの処分品を全部もらってた。それに囲まれてると、アリアをすごく近くに感じられて幸せだったの。ここで……宝物を抱きしめて匂いを嗅ぐことが、私の楽しみだったの……。気持ちを我慢できなくなった時の私の楽しみ……アリアを感じられる楽しみ……」


泣いてる……なんで?

わたしの物を大切にしてくれて、それでサーシャが楽しいなら満足だよ。


「泣かないで、サーシャ。わたしは嬉しいよ。こんなに大切にしてくれてありがとう。わたしのお気に入りも、ただ処分されるより、サーシャに抱きしめてもらって匂いをかいでもらった方が幸せだよ」

「アリア……」

「でも、今日からはお気に入りじゃなくて、わたし本人を抱きしめて匂いをかいでね。その方が両方幸せになれるよね」

「うん……。ありがとう、アリア、愛してる」

「わたしも愛してるよ」


サーシャを抱きしめると、すごくハッキリわかるくらい匂いをかいできた。

……今まで我慢してたんだね。いいよ、いっぱい匂いをかいでいいからね……。

……わたしも匂いをかいであげよう。

お互いに抱き合いながら匂いをかぎ合うのって、すごく獣人っぽい。


「スーハー、スーハー、スーハー……。いい匂いだよー、落ち着くよー」


ぎゅっが強くなった。

ちょっと痛い。なんで力を込めるの?


「アリア、嬉しいよ……。もっとぎゅっとして、いっぱい匂いを嗅いでいいからね」

「うん。スーハー、スーハー、スーハー……」


……あれ? 逆になってない?


「ところで、なんで私の部屋にいるの?」

「あ、そうだ、参考書」

「参考書?」

「社会学で難しい単語がいっぱい出て来たから、もっとわかりやすい物がほしくて。サーシャの部屋だったら、すごい参考書とかあると思ったんだ」

「あるよ。4年生の参考書もとってあるから安心してね」

「やっぱりあるんだ……」


流石サーシャだよ。期待を裏切らない。これで難しくなってきた社会学も何とかなりそう。


「でも、一番役立つ参考書は目の前にいるよ」

「え?」


サーシャの自信に満ちた笑顔……。

そうだよ、全てを教えてくれる一番大切な人、サーシャがいた。

社会学だけじゃなくて全科目に対応していて、愛も幸せも教えてくれる、わたし専用の最高の参考書。


「さっそくだけど、教えてもらっていい?」

「その前に、ちょっと汗を拭きたいな」


そうだ、サーシャはランニング50kmから帰って来たばかりだった。

お風呂はまだだし、汗くらいは拭きたいよね。


「アリアが拭いてくれるとすごく嬉しいんだけど……いい?」

「うん、もちろんいいよ」


わたしが何度も拭いてもらってるし、お風呂上りでも拭き合いっこしてるから全然OKだよ。


「これで拭いてね、はい」

「ん? これって……」


このタオルの模様、見覚えがあるような……。


「これも秘密だったんだけど、宝物がバレちゃったから教えるね。これはアリアの古着をタオルにしたものなんだ。自宅にもいっぱいあるんだよ。これで身体を拭くと、アリアに拭いてもらってる感じがして落ち着くんだ」

「そうなんだ……」


ムズムズするよ……。わたしの知らない感情を感じた時のムズムズ……。この感情は何なんだろ?

……とりあえず、拭いてあげようかな。全裸のサーシャを待たせるのは可哀そうだし。


「……幸せだよ。アリアが二人で拭いてくれてるみたい……」

「……そっか、よかったよ……」


ムズムズするけど、サーシャが喜んでくれて幸せならわたしも嬉しいよ!


「はい! 終わり!」

「ありがとう、さっぱりしたよ。次は服を着させてくれると嬉しいな」

「うん」


わたしのお世話が夢だったサーシャ。だからきっと、わたしにお世話される夢も持ってると思ってた。お泊り会の時もお願いしてきたからね。

気持ちを隠さず、我慢しなくなった今なら、ちゃんと言ってくれると思ってたよ。

……全部やってあげるから何でも言ってね。サーシャに喜んでもらうこと、幸せになってもらうことがわたしの幸せだから。


「……はい。下はこれでいいけど、上は届かないから……」

「じゃあ、これでどう?」


サーシャがベッドの上に座り手をあげてる。


「これなら出来るね。ありがとう」

「こっちこそ、着替えさせてもらってありがとう。私の夢がどんどん叶っていくよ」

「うん、よかったよ」

「……迷惑じゃないかな?」

「え?」

「結婚してから、アリアにお願いばかりしてるから迷惑かなって……。今日一日だけで沢山の夢がかなってるけど……私、我儘過ぎない?」


また、我慢しようとしてる?

ダメだよ。6年間も我慢してきて、やっと自由になれたのに……。

もっと沢山お願いしてきてもいいと思ってるけど、サーシャはお願いを我儘だと思ってて、わたしに迷惑だと思ってる。迷惑じゃないって言っても、優しいサーシャはきっと我慢しちゃう……だったら……。


「……わたしは迷惑をかける、サーシャは我儘になる、これでやっとおあいこだよ。いっぱい我儘を言ってくれてありがとう。これからも、わたしの為にいっぱい我儘を言ってね、愛してるよ、サーシャ」

「……アリアは優しすぎるよ……。愛してる、愛してるよ、アリア……」


服を着させてあげた後はベッドでしばらく抱き合った。

サーシャは嬉し泣きしてたけど、今日だけで何回嬉し泣きしたかな……。

それだけ6年間の想いが強かったってことなんだろうけど、わたしはこの想いにちゃんと答えられてるのかな?

……もっと我儘を、お願いを言ってほしいな。

そうしないと、サーシャの想いに答えられてる気がしない。なんでもいいからサーシャの夢を叶えてあげたい、その気持ちが溢れてくる。なにか、なにか、なにか……あ。


「……トイレ、行きたいな。お願いしていい?」

「うん……」


サーシャにトイレのお世話をしてもらった。

トイレから出た時のサーシャのキラキラ笑顔は一生忘れないと思う。

その後はわたしの部屋で一緒に勉強をした。

サーシャは自分の勉強とわたしの勉強を同時進行していたのでビックリだ。脳が二つあるとしか思えない。天才ってホントにすごいと思う。


『ご飯よー』


お母さんが呼んでる。晩御飯の準備が出来たみたい。

みんなが家族になってからの初めての食事会……楽しみだよ!

永遠のフィリアンシェヌ ~わたしと私の物語~

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