元貴 side …
「…若井、会いたいよ」
口から出た言葉は想像以上に冷たくて、震えた声だった。水が腰辺りを超え始めた。これ以上先に行くのは危険だろう。服に水が染み込んで体が重い。こんな真冬に海の中に服を着たまま入るとか本当に馬鹿げてるよな。
でもね、それでも若井に会いたくて。ここに若井が居ると思うから、だから俺は冷たい海を彷徨う。
だんだん目が霞んでくる。俺、死ぬのかな。立っているのが辛くなり足が震える。怖いよ。
「若井、どこッ…?」
名前を呼んでも呼んでも、彼の姿はない。俺、結局若井に会えないみたい。もう立つことが出来なくなり、波で倒れかけたその時だった。
海の奥に人影が見えた。
目が霞んでよく見えない。でも、背の高さや雰囲気がどこか”貴方”に似ている気がした。だんだん視界が慣れてきて、少しだけ人影がよく見えるようになる。その時、今からちょうど1年前の若井の姿を思い出した。
あれ?あの髪色、あのコート。1年前の若井と一緒だ。
あれ、若井だ。
「若井!!!!」
目の前にいる君に手を伸ばした。届きそうで届かなくて足掻いた。ふらつく足取りで君の元へ歩んだ。今にも倒れてしまいそうだった。
あと少しで君に触れれる。あと少しで。
「若井!!若井!!」
何度も名前を呼ぶ、何度も手を伸ばす。すると、だんだん君の表情が見えてきた。なんでだろう、ものすごく安心する。
「名前ッ!呼んでよッ!!泣」
いつの間にか頬には涙が伝っていた。1回だけでいい。君に触れさせて。名前を呼んで。視界がぼやけて、倒れそうになったその時だった。
君が呟いた。
「元貴」
少し低くて落ち着いた俺の大好きな声。
ああ。やっと聞けた。
その時、指先が、手が、君に触れた。
俺は迷わず君を抱きしめた。
「若井ッ!!!!泣」
若井は暖かくて、あの頃の若井そのものだった。
「元貴、会いに来てくれたんだね」
若井が優しく俺を抱きしめる。久しぶりに君の体温を感じた。今までの思いや感情が溢れ出す。
「わ゛かい゛ッ泣わ゛かいッ泣」
若井は俺の背中を優しくさする。触れ方も、抱きしめ方も、全部若井そのものだ。若井を抱きしめていると、あることを思い出した。
そうだ、俺、若井にまだ伝えてないや。
「わかいッ、あのねッ」
もう迷わない。もう怖くなんてない。
君に伝えるよ。
「俺、若井が好きだよ」
この時だけは、波の音や風の音は消え、俺の声だけが響いていた。
若井は驚いたような、嬉しそうな表情をしていた。少しだけ、若井の目が赤くなっているように見えた。
「俺もだよ、元貴」
今度はちゃんと聞けた。
名前も、君の声も、君の思いも。
俺たちは冷たい海の中で抱き合いながら、大きな波に飲み込まれた。
「Part of me」これにて
完結させてもらいます…!!!
ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました😭✨✨
読者の皆様からの暖かいコメントが
作者の励みになりました。
本当に、本当にありがとうございました!
聞きたいことや感想等、
ぜひぜひコメントで
作者に聞かせてください👀💘
ちなみに、明日は番外編で1話だけ
とあるお話を公開させてもらいます!
お話の内容は見てのお楽しみで…
ちなみに次作ももう決定しておりますよ😏
次作の題名などの詳しいことは
明日の番外編でちょこっと
お話させてもらいますね🙌🏻
では!また次のお話で^^
コメント
9件
どぉぉしよめっちゃ泣いちゃった、 神作でしたっ!
最高でした〜!!終わり方も良かったです!次作も楽しみにしてます!
だいすきすぎます