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1年生が入部して1週間が経った。
みんなこの環境には慣れたのか、すごく生き生きして見える。
ただひとつだけ気になるのは … 入部してから1度も月島裙とお話してないことだ。
なんでか分からないけど、避けられている気がする。
私何かしちゃったかな … 。
「 じゃんけんぽんっ! 」
ボ ー っとしていて、気がついたら選手たちでジャンケンをしていた。
マネ ー ジャ ー 抜きでジャンケンをして、負けた人は体育館のネットとボ ー ルのお片付けらしい。
あれを1人でするのってすごく大変なのに。
なぜだか真面目な澤村さんは不思議と面白がって参加していた。
潔子さんは呆れて帰ってるし … 仁花ちゃんは困惑しながら潔子さんについて行っている。
みんな「 今日だけ 」と念を押すようにしてジャンケンをやっていた。
呆気なく負けてしまったのは新部員の影山裙だった。
分かりやすく悔しがる顔を見てみんな笑っていた。
お、男の子のノリってああいう感じなんだ … 。
よく分からないなぁ。
帰ろうとしない私を見た田中裙は不思議そうに見つめていた。
「 は、はな … はなし ….. っ、花城 」
顔を真っ赤に染めてオドオドしながら話しかけてきた。
「 どうしたの? 」
「 あ、えと、帰らな … いんですか? 」
「 う、うんっ、帰るけど … 教室に忘れ物しちゃったみたいで … 」
「 そ、そぅ … なのか、ですか … 」
ぎこちない話し方のまま納得してくれたのか、みんな帰っていった。
体育館には私と影山裙の2人きりで、みんなが体育館から出ていくとすぐにネットを片付けていた。
忘れ物をしたというのは実は嘘だった。
影山裙のお手伝いをするためについた嘘。
みんな、嘘ついてごめんなさい … っ。
私はすかさず影山裙のところに行ってお手伝いすると、影山裙は驚愕して手が止まっていた。
「 影山裙 … ? 」
声を掛けると、ハッとしたように再び作業を続けた。
私たちは体育館倉庫に入ってボ ー ルを拭いて片付ける作業をしていた。
ふと、影山裙がこっちをじっと見ているのに気づいて自分のお顔を触った。
「 え、えっと、何か付いてるかな … 」
照れくさくなった私はお顔が赤いことを誤魔化すようにして目を逸らす。
「 あのっ 」
俄然声を掛けてきた影山裙に思わずびっくりしてしまった。
チラッと見ると、影山裙と目が合った。
その目はどこか凛としていて、なんだか真剣そうにしていた。
「 どうして … 手伝ってくれるんすか? 」
不思議そうに首を傾げてそう言った。
か、影山裙って、近くで見るとお顔整ってるんだ … っ。
長いまつ毛と切れ長な目が真剣そうに見える原因だった。
「 わ、私は … お片付け1人でするの大変だからお手伝いしてるだけっ、迷惑だったかな … っ? 」
慌ててそう言うと影山裙は目を見開き、視線を下げた。
どこか悲しそうな顔をしている。
「 俺 … は … 」
影山裙は何か話そうとして話すのを辞めた。
何を話そうとしたのか気になったけど、人のことにズカズカと踏み入れたくはない。
そう思った私は、これ以上何も聞かないようにした __ 。
☆.*゚•*¨*•.¸♡o。+ ☆.*゚•*¨*•.¸♡o。
翌日。朝の部活が始まる30分前に着いてしまった。
この時間はまだ人が来ていないと思った私は、職員室に鍵を取りに行くと、もう既に鍵は無かった。
誰かいるのかな … ?
1度澤村さん達が早めに来たことがあったことを思い出し、私は急いで体育館へと足を運んだ。
体育館の扉の前に着くと、あかりは漏れている上にボ ー ルを打つ音が聞こえていた。
1人だけ … ??
状況を呑み込めない私は、ゆっくりと扉を開けた。
そこに居たのは __ 紛れもなく昨日の放課後に一緒にお片付けをした影山裙だった。
私には気がついていないが、ずっとひたすらにサ ー ブとサ ー ブトスの練習をしているのが見えた。
よく見ると、微かに汗ばんでいる。
きっとずっと前からひとりで練習していたんだろう。
「 … くそっ、こんなんじゃ全然ダメだ。もっと、もっと強くならないと … ! 」
自分にそう言い聞かせていたのが聞こえた。
何度も何度も「 強くならないと 」「 これじゃダメだ 」と呪文のように唱える影山裙を見ていると、ギュッと胸が締め付けられるような感覚に陥る。
私じゃないのに、あたかも私が苦しいような、そんな感覚。
練習の邪魔は極力したくないけど、じっとしていられなくなった私は、いつの間にか扉を開けていた。
「 __ 花城 … さん、? 」
こっちを見た影山裙はどこか悲しそうな、苦しそうな声色と表情をしていた。
「 … っ、 」
その表情が「 助けて 」とでも言っているような表情をしていた。
私は、胸の苦しさを抑えるようにして口を開いた。
「 か、影山 … 裙。何してるの? 」
そう聞くと、影山裙は平静を装うようにしてできるだけ真顔にしようとしていた。
頑張って真顔を保っているつもりかもしれないけど、私から見たらすごくすごく … 無理しているようにしか見えない。
そんな影山裙を見ることさえも辛い。
「 練習です。上手くなりたくて … 」
あはは … と乾いた笑みを浮かべてそう言う影山裙を見ていると助けたいと思ってしまう。
ほんとに … こういうのは部外者の私には関係ないから踏み入れちゃいけないけど … でも … 。
「 ねぇ。影山裙 」
影山裙は今すごく。
「 何かあったの、? 」
すごく苦しそうだから。
「 … っ、なん … っで、 」
今にも泣き出しそうな顔。
お願い、影山裙。話して。 少しでも楽になって。
影山裙を、救いたいの。
「 … 俺は … 強くなって … それで、そしたら … みんな、離れて … 」
… そっか、そういう事だったんだ。
『 俺 … は …』
昨日話そうとしてくれたのは、この事だったんだね。
気づいてあげられなくてごめんね。
こういう時、どう声を掛けてあげればいいか分からない。
影山裙、すごく我慢してるように見える。
泣いてないけど … 心は雨模様だよ。
なんて言ったらいいのかな。
ううん。言葉なんていらない。
こういう時は … 。
「 花城 … さん … ? 」
気づいたら私は影山裙をギュッと抱きしめていた。
今にも消えちゃいそうな声で名前を呼ぶ影山裙を力強く抱きしめる。
そして、ポンポンと頭を撫でる。
「 もう大丈夫。大丈夫だよ。影山裙 」
「 … っ、 」
「 強くなくたとしても、影山裙は影山裙だよ 」
「 はな … しろさっ、 」
「 頑張ったね。話してくれてありがとう 」
私は「 泣いていいんだよ 」と言って壊れ物のように優しく影山裙を抱きしめた。
顔は見えないけど、肩が少しずつ暖かくなっていくと同時にズズッと鼻をすするような音も聞こえて、影山裙が涙を流しているんだと痛感する。
これで少しでも影山裙を救えてたらな。
少ししてから影山裙はスッと私から離れた。
ふふっ、目も鼻も赤くなっちゃってる。
これじゃあ練習するの恥ずかしいかもね。
影山裙は初め見た時より顔色も良くなっててなんだか表情も柔らかくなっていた。
良かった。少しでも楽になって。
影山裙は少ししてから口を開いた。
「 ありがと … ございます 」
… あ、笑った。
影山裙の笑顔はこんなにもキラキラしてて、素敵な笑顔だったんだ __ 。