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「真っ暗…それに電波がぁ…」
先ほどの突然の地面の揺れで灯りは消えてしまうし、なにより、電波も通じない。他のみんなと離れてしまった甘愛彩は、途方に暮れていた。
「暗いよぉ…怖いよぉ…水梨ちゃん…都月様ぁ……ん?あれ?みんなの持ち場にいけば誰かしらと会えるのでは?あ、でも何も見えないし…どうしよう…」
真っ暗で、自分の手すら見えない中、途方に暮れていると、ふと遠くに明かりが見えた。
「あれは…何かしら…」
よくわからないけれど、彩は明かりの方向へ進んでいこうとー…
「とりあえず誰かいるかもしれないし!行ってみよう!!」
彩は、そこに行くことを決意した。
…何かの罠かもしれないけれど。
「エイジ…なんで私またアンタと組まなきゃいけないわけ…?」
「いや、同じ科ですし…しょうがないでしょう。いちいち言ってられませんよ」
「あっそ…?」
彩が目指した明かりの方では、イポクリジーアの静野魅麗とエイジが座っていた。
周辺は煌々と明るく、とても目立っていた。
「というか、こんなんで本当に誰か来るわけ?馬鹿馬鹿しいじゃない…」
「いや、きっとあっちの馬鹿な奴が1人くらいは来るんじゃ?」
「そうかしらねぇ…」
魅麗が呆れていると…
「やっと明るいところに出れたー!やったー!って…あーっ!!」
「いたわね…引っかかった奴…」
「あ、これ罠だったのか…い、イポクリジーア!今宵成敗してくれるわ!」
「時代劇…?まあいいわ。エイジ、やっちゃって」
「私がですか?まあ別にいいですけど…」
「自分で手を出さないなんて卑怯じゃない!これだから…」
「はぁー?でも残念。アンタたちに勝ち目はもうないわ。もうこの闇に埋もれているアンタたちは…私たちの手の中なのよ!」
「…」
彩はすこし黙り込み、考え始めた。
(…確かにここは結界で守られているけれど…町はほぼ破壊寸前。どう手を打てば…)
「あと、アンタの弟子だっけ?の結界も、一体いつまで持つかしらねぇ〜?ほんと、都月の予知能力も大したことないのね。あいつも今頃、あの頃アンタじゃなくて私を身請けすればよかったのにねぇ?」
「…」
魅麗はあからさまに彩を煽る。
「…確かに私は、上手く戦えないし、料理も家事もできなくて、任務もいつも無理矢理だけど…都月様はそんなこと言ったりしない。…たぶん」
「たぶん…?」
「でも、私は信じてる。予知通り、私たちが勝つことを。…あれでもそこまでは言ってない気がする…?」
「相変わらず馬鹿ねアンタ。…そろそろ時間は潰せたかしら…ねえ、エイジ」
「はい。もうすぐ」
「…?何の話…」
彩が首を傾げているところを見て、エイジはにやりと口角を上げる。魅麗もすでに勝ち誇ったような顔をし、口角を上げる。
「怖いなぁ、2人してそんな顔…ぐっ!」
ごほっごほっ、と彩は咳き込みながら血を吐く。手が真っ赤…いや真っ黒に染まってゆく。彩はさらに咳き込みながら血を吐く。
「この前盛ったのは睡眠薬ですけれど…今回盛ったのは、毒ですよ。致死量を遥かに超えた。明かりを通じてあなたに盛りました」
「へぇ…?痛いなぁ…私頭悪いから毒の仕組みとかわかんないけど…これはやばいってのだけはわかるなぁ…」
少しずつ息が苦しく、地面が血に染まってゆく。頭もくらくらし始めて、貧血の感覚がした。
もう全てがよくわからなくなって、視界がぐるぐるして…
「もう駄目かなぁ…悪魔って…けっこう脆いんだね…知らなかった…」
「…エイジ。もう十分でしょう?次行くわよ」
「はい」
明かりが過ぎ去り、再び真っ暗なところで独りぼっちになった彩は、少しずつ自分が消えゆくのを感じた。
だらんと垂れ下がってしまった尻尾はもう再び動くことはなく、羽を隠せる力も無くなり…少しずつ意識も薄れていった。