「真っ暗で何も見えませんね…先程まで窓に明かりが見えていたのに…それもどこかにいってしまったし…」
マジカルシークレット拷問科教官薔薇園鶫は、建物周辺を警備していた。
けれど、辺りは真っ暗で何も見えず、警備がうまくできない状況であった。電波も通じないため、生存確認もできない。
「…貴女。今お暇かしら?」
「…え?」
急に後方から金糸雀のような声が聞こえたため、鶫は少し驚いた。ゆっくりと振り向くと、かすかに紫色のお面を被った少女が佇んでいた。
「…誰?」
「…私は乙女剣鬼と呼ばれるイポクリジーア拷問科雅と申します」
「敵か…奇遇ね。私も拷問科なの。しかも教官…」
「そうですか。…私は別に貴女に興味は1ミリもないので。すぐに黄泉まで連れていってあげましょう」
「そううまくいくのかしら雅さん?」
「どうでしょうね。…では、一発で終わらせて見せましょう」
2人は、瞬時に戦闘体制に入る。雅は刀を鞘から抜き、また鶫もナイフを出す。
ひゅん…、と少し風が吹いたとき、2人は…
「…。相打ちかしら…?」
雅の胸元には鶫のナイフがぐさりと刺さり、反対に、鶫には雅の長い刀がぐさりと刺さっていた。
どちらとも血が滴り、重症だった。
「ぐ…っ…や、やるじゃないイポクリジーア…の、拷問科教官…」
「そちらこそ…」
相打ちでどちらとも深傷を負っているため、もう戦うことはできない。
今宵のうちに命が尽きるだろう。
「残、念…斗癸…あとは頼んだ…から…」
鶫は、自身の血液が体の外に溢れ出す感覚を長く感じたのち、ゆっくりと瞼を閉じた。
数分後。拷問科の斗癸が鶫の場所に到着した。地面が濡れていて、鉄の匂いがしたことで、すぐに誰かが命を落としたことに気がついた。
「鶫…教官…嘘だろ…」
また、反対方向に倒れている雅も見つけ、彼女の心臓に鶫のナイフが刺さっていることに気がついた。
「そうか…相打ちに…くそっ…必ずイポクリジーアをぶっ潰してやる!」
斗癸は溢れ出る涙を無理矢理引っ込ませ、かすかに見える明かりの方へと駆け出した。
「くそ…教官ともあろう私が、迷ってしまった…どうすればいいんだぁー!」
一方、別の持ち場ではマジカルシークレット掃除科教官、岸が迷っていた。
「そういえばあのアホ教官、彩の声が聞こえないな…死んだのか?あいつ…いや、あいつはそんな安易死ぬやつじゃないし…きっとどこかにいるんだろう」
彼女もまた、何も見えない夜道をとぼとぼと歩きながら敵を探していた。
「いつもなら瞬足で敵を倒していく私なのに…今日は1人も見つけてない…やっぱり暗いからか?…いや、もしかしたら今はかなりまずい状況かもしれない。一回都月さんのところへ行ったほうがいいんじゃ…」
そう思いつき、岸は本部の方へと入っていった。
次の瞬間に後ろの植物が少し動き出したことに、彼女は気がついていない。
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