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ライアーミル
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ーーー御門周視点ーーー
いつからこの力を疎ましく思っただろう
僕の母親はピアニストだ。それも、日本で割と名が広まっているピアニスト。
そんなだから母は僕に小さい頃からピアノをさせようとした。強制的に始まったピアノのレッスンだったけど、僕はそこまで嫌じゃなかった。
僕はピアノの才能があったらしい。母は嬉しそうに「流石、私の子!」といつも嬉しそうにそう褒めてくれるから、僕も嬉しかった。
褒められることが嬉しくて、褒めてもらいたくて僕は一生懸命ピアノを練習した。
だから無意識に能力を使っていたんだろうな。最初は違和感くらいだったのが段々と目眩や軽い頭痛などと体に支障が出てきたから僕は母に言ったんだ。
「ねぇ、おかあさん。きょうね、あたまいたくて…」
「あら、そうなの?…熱は?」
「ううん、ねつはなかったけど…」
「じゃあ大丈夫よ!ほら、レッスン始めるから準備して」
その時は僕も熱はないなら大丈夫なのかと思ったんだけど、小学校に入ってからそんなことはないってことに気づいたんだ。
ある日、具合が悪くて早退した同級生がいた。熱は無いらしいけど先生も他の同級生たちも心配そうにしてるのを見てようやく僕は母の言っていたことは違うんじゃないかと思った。
そして僕が母を異常なんだと思ったのは小学4年生くらいだったと思う。
度重なる能力の使用による体調不良で上手くピアノが引けなくなったことが続いて、母はヒステリックになってしまった。
僕の父親は大手企業で働いていて、しかも結構上の立場の人だったから、仕事が忙しくあんまり帰ってこない日が続いていたんだ。だから僕の体調のことは全然わかってなかったと思う。
そんな父が帰ってきた日、父さんは母と夜中に言い争っていた。僕はたまたま目が覚めて声が聞こえてきたから静かに聞いていたんだ。まあ、静かにしていなくても聞こえてたんだけど。
「どうして周にピアノを強制的にやらせているんだ。周が楽しそうにしてるなら俺も止めはしないが、明らかに体調が悪かっただろ!俺が止めていなければ倒れるところだったんだぞ…!」
「周は私の子よ!私と同じように世界で活躍するべきなの、邪魔しないで!
それに、体調悪いのはいつもの事よ!お陰で全然ピアノのレッスンは捗らないし、どんどん下手になっていって…!!……あーもう、私はどうしたらいいの!!? 」
「…は?いつもだと?病院には行ったのか!?いつからなんだ!?」
「知らないわよ。ていうか覚えてないわ、いつ頃かなんて。それに病院に行く時間があったらピアノをさせる方がいいに決まってるでしょ?」
「……お前は、自分の息子をなんだと思って…!ああ、そうか…お前は自分の事ばかりで周のことなんて何も考えてないんだな。…離婚だ、離婚。お前と周を一緒にいさせるわけにはいかない…! 」
「…なっ!あなただってずっと仕事ばっかりだったじゃない!!
…ええ、いいわよ、離婚しましょう。あんな子…あなたにあげるわよ、私の子じゃないわ!」
…ああ、やっぱり僕の母親は僕のことなんて見てなかった。
褒めてもらいたくて頑張ったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう……。
母が扉を乱暴に開けて部屋を出ていく音を聞きながら僕は自分のベットに戻り布団を頭から被った。
何となく気づいていたけど、いざそうなると心にぽっかり穴が空いたような感じになって苦しい。
枕は僕が流した涙を吸い込んで染みになっていた。
「……っ…うぅ…お、かぁ…さっ……!」
翌日父親にやんわりと伝えられ、僕は夜に枯れるほど泣いたにも関わらずまた泣いた。
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あの後病院に行って医者に「君はセンチネルだから、能力の使い過ぎで体に支障が出ているんだ」と言われた。
センチネルってなんだ?
そう思って父を見ると、父もよくわかっていない顔をしていて、その顔を見た医者は吃驚した顔で説明された。
普通は能力が発現された時点で医者に見せに行くんだと。
まあ、あのピアノ一筋の母親が能力の発現に気づくわけないか……。
そして、精神、身体の不調が出てきたら『ガイド』にガイディングをしてもらうらしい。
最悪の場合死ぬってことを聞いた父がすごい顔をしていたのを覚えてる。
「はっ…はぁっ…!…はっ…ぅ…っ」
中学生になって僕はますます体調を崩すようになった。
酷い時には起き上がることすら出来なくて、目が回り頭がズキズキと痛む。
いつもガイディングをしてくれる人に頼んだけど、今日何故か失敗した。
「………ぅあ、あ”あ”あ”あ”っ!!!!…っは、かひゅっ…」
ガイドは泣き叫んで過呼吸になっていた。
僕は何が起こったのかよくわからなくて呆然としていただけだった。
父が新しくガイドを連れてきても失敗ばっかりだ。
…僕のせいで過呼吸になるガイドを見たくない。
新しいガイドが僕とガイディングする度に壊れていく。
ガイドは僕のせいでおかしくなって、全部僕のせいじゃないか……!!
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…っ!!!」
謝り続けても意味がないことはわかってる。自分の声にも頭がぐるぐるする。
……誰か助けて欲しい
…この気持ち悪さから解放して…っ
…でも、僕に助けてもらう価値なんかあるのだろうか。
母さんも結局僕は要らなかった。僕はなんのために生きている…?
わからないわからない……!
僕はどうしたらいいんだろう。
「 い”っ…!」
頭を鈍器で殴られたような痛みに襲われ目の前が真っ暗になった。
体が動かない。返事だってまともに出来やしない。
高校生になったのに学校にはもちろん行けていない。
息も浅くしか呼吸ができなくて苦しい……
混濁する意識の中、僕は考える。
僕はもうすぐ死ぬのかな…。最悪の場合死ぬって言ってたし、そうか…死んじゃうのか
いい人生だったとは思えないけど、もう僕のせいで壊れる人はいなくなるから良かったな
僕が死んだら母さんは僕を見てくれるだろうか
…それなら死ぬのも悪くないかも…!
……っいやだ、死にたくない。本当は死にたくない…っ!
こんな能力なんていらないっ!なんで僕はこんな能力を持ったんだ!
僕は普通に学校に通って…友達と話して遊んで……っそんなことしたかったのに……
僕はいるかも分からない神様に祈った。
”お願い、僕を助けて” って
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声が聞こえた。父さんと聞き覚えのない2人の声。
もしかしたら父さんが新しく依頼したガイドかもしれない。
また壊れる姿を見るのが怖かったけど僕は動くことも、目を開けることもできない。
しばらくして若い男の声が聞こえた。おそらくガイド、しかも同い年のような感じがする
男が手を握ったり頭を撫でている感覚がして、ずっと重かった身体がどんどん楽になっていく心地がした。ズキズキと痛んだ頭やグルグルとしていた視界がスっと解けていく感じ
初めての感覚に驚いたと同時に胸がいっぱいになる。
…ああ、やっと叶えてくれた。 やっぱり神様はいたんだ…!
涙で目の前の人物がぼやけて見える。
苦しくて空っぽだった胸がどんどん満たされていく。
涙を拭って改めて目の前の人物を見る。
心配するような目で僕を見ていて僕は嬉しくなった。僕を見てくれていることが…
「調子はどうですか?」と耳のことを気にしているのか、すごく小さい声で問われた。
そんな気遣いが嬉しくて、心地いい
途中で止まっていた頭の上にある手を動かすように言ったらまた優しく撫でてくれた
胸がドキドキするような、ポカポカするような感じがする
君の名前を知りたい
声をもっと聞きたい
君に触れたい
抱きしめたい
そんな欲がどんどん湧き上がっていくのに、身体は眠りにつこうとしていて、僕は抗えなかった。
僕を助けてくれたのは君だけ…
僕は君だけしかいないんだよ
ああ、僕の神様…!!
____ずっと僕のそばにいて……♡
《end》
読んでくださりありがとうございましたm(*_ _)m