テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
自分達が猿に支配されているという現実を受け入れられず、独特の「猿神信仰」を生み出したこの村は、その後どうなったか?
猿たちは、イケニエを要求するようになった。特に若い女性を好んだ。性的にもてあそぶためである。村は、最初自分たちの村からイケニエを差し出していたが、小さな村のこと、すぐにふさわしい女性がいなくなった。
では、どうしたか?
ある日の暮れ方――
「はぁ、すっかり遅くなってしまった……」
一人の若い女性が、夕暮れに染まる山道を歩いていた。女性は、実家の母親が病に倒れたので見舞いに行っていたのだ。本当なら夫もついて来るはずだったが、出発前、急な腹痛を起こしねこんでしまったため、しかたなく女性一人で出かけることにしたのだ。
そんなわけで出発が遅れてしまい、明るいうちに森を抜けるはずだったのが、すっかり日が暮れかけてしまっていた。と、そのとき――
ガサッ
という音が近くで聞こえた。獣、だろうか? 女性が警戒していると――
「おっと、人がいたのかい。驚かしちまってすまねぇな」
道の脇の木々のから一人の男が姿を現した。
「俺は、この近くの村のもんだが、お嬢さん、こんな時間にどこへ?」
「あ、あの、私、実家の母が病気で倒れたので、お見舞いに……」
女性はそう答えながら、男の出で立ちをいぶかしんだ。男はここで何をしていたのだろう?
「そうかい。そりゃあ大変だな。……そうだ! 俺が森を抜けるまで送ろう」
「え? そんな、ご迷惑では?」
「なに、ちょうど俺も村に帰るとこだ。それにこんな暗い中を女一人で帰らせるわけにゃいかねぇ。幸い、俺は提灯も持っている。ほら、早く来ないと、日が暮れきっちまうぜ?」
「……じゃあ……お願いします」
男は「さぁ、行こう」と歩き出した。女性も後に続く。
(気のせいかな? この人、なんか変……)
女性は男に対して一抹の不安を覚えたが、男の好意をむげにするわけにもいかず、そのまま一緒に歩くことにした。
「あんた、実家に帰るっていったが、ここら辺の道は詳しいのかい?」
「いえ、何度か通ったことがあるくらいで、そんなには……」
「そうかい。なら、近道を教えよう。この道を行けば確実に森を抜けるが、少々遠いのでな。地元の人間しか知らないけもの道があるので、そちらを行こう」
「あっ、はい……」
しかし、男はどんどん森の奥へ向かっているようだった。
「あの、もし……」
「ん? ああ、この道は森の奥を突き抜ける道だ。使えるのは日があるうちだけだ。完全に夜になっては、さすがに危ないのでな。森の奥に向かうので、変なところに連れて行かれるのではないかと、不安になったかな?」
「ああ、いえ」
男の言い分はもっともらしく聞こえた。女性は、とりあえずこのまま進むことにした。だが、やがて道が途絶え、森の中の開けた場所に出た。一瞬森を抜けたのかと思ったが、そこも森の中のようだった。
「あ、あの……」
「猿神様、イケニエをお連れしました」
その言葉に女性がぎょっとしていると、木の影から、数匹の猿が現れた。
「こ、これは……いったい……」
(続く)