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こんにちはおはぎ猫です。
新しい物語です。
それではどうぞ!
「……は?」
目を開けた瞬間、間の抜けた声が出た。
視界に入ったのは、見慣れた教室。 整然と並んだ机と椅子、黒板、窓から差し込む光。
どこにでもある、普通の高校の教室 ーーのはずなのに。
「いや、ちょっと待って」
上体を起こして、周りを見渡す。
違和感があった。
見たことがある。どころじゃない。
“知っている”
それも、細かいところまで。
「……なんで」
机に手を置く。
指先に伝わる感触が妙にリアルで、夢とは思えない。
窓の外を見る。
校庭の位置、木の配置、遠くのフェンス。
全部、覚えている。
「ってこれ……」
喉がひくつく。
「俺の漫画じゃん……!」
思わず立ち上がる。
昨日まで描いていた背景、そのままだ。
いや、背景どころか――
世界そのものが一致している。
「いやいやいや、そんなわけあるか」
両手で顔をこする。
夢だ。どう考えても夢。
そうじゃなきゃ説明がつかない。
「にしてもリアルすぎだろ……」
机を軽く叩く。
コン、と乾いた音が返ってくる。
夢にしては、出来すぎてる気もするけど……
そのとき、
ガラッ――
教室のドアが開いた。
「おーい、何してんだよ」
軽い声。
反射的に振り向く。
そして
ーー固まった。
……は?
そこに立っていたのは、
見覚えなんてレベルじゃない。
見慣れすぎてる顔。
「授業始まるぞー」
少しだるそうに笑う、その仕草まで。
全部、知ってる。
だってそいつは――
瀬名……陽翔……
頭の中で、名前が自然と浮かぶ。
自分で考えたキャラだから。
何度も描いた顔だから。
「なに固まってんの?」
怪訝そうに眉をひそめて、瀬名が近づいてくる。
距離が縮まる。
ちょ、待て待て待て
近い近い近い
てか、なんでこんな自然に話しかけてきてんだよ!?
「おい、聞いてる?」
目の前で手を振られる。
反射的に肩が跳ねた。
「え、あ、いや……」
言葉が出てこない。
頭が追いついてない。
これ、夢じゃないのか?
いやでもーー
目の前の存在が、あまりにもリアルすぎる。
呼吸の音も、体温も、全部。
「……湊?」
名前を呼ばれる。
ドクン、と心臓が跳ねた。
なんで俺の名前……
そこで初めて気づく。
当たり前みたいに呼ばれたことに。
「お前、大丈夫か?」
瀬名が覗き込んでくる。
その顔が、やけに近い。
うわ、顔いいなこいつ……
ってそうじゃなくて!!
一歩引く。
でも視線は逸らせない。
「……あのさ」
絞り出すように声を出す。
「ここって、どこだっけ」
一瞬、沈黙。
次の瞬間ーー
「は?」
瀬名が思いっきり顔をしかめた。
「何言ってんの?」
当然の反応。
そりゃそうだ。
でもーー
確認しないと
喉が渇く。
それでも続ける。
「いや、その……」
「ちょっと、変な夢見てたみたいで」
苦し紛れの言い訳。
でも瀬名は、少しだけ様子を変えた。
「……あー、寝ぼけてんのか」
「多分な」
軽く笑う。
その自然さが、逆に怖い。
「ここは学校。いつも通り」
当たり前のことを言うみたいに。
「お前、ほんと大丈夫か?」
学校……
いつも通り……
頭の中で、言葉がぐるぐる回る。
でもその“いつも”はーー
自分が描いたものだ。
「……そっか」
小さく呟く。
納得したわけじゃない。
でも、今はそれしか言えなかった。
「ほら、行くぞ」
瀬名が腕を引く。
自然な動き。
まるでずっと前から、こうしていたみたいに。
なんだよ、それ……
廊下に出る。
見慣れた景色。
でもそれはやっぱり、
“描いたことがある景色”だった。
歩きながら、ふと思う。
これ……
もし、本当にーー
喉の奥で言葉が止まる。
考えたくない。
でも、頭から離れない。
俺……
一歩、また一歩。
現実みたいに続く世界の中で。
ようやく、その考えに名前がつく。
『俺、自分の漫画の中にいる……?』
〈登場人物紹介〉
朝霧 湊(あさぎり みなと)→主人公
瀬名 陽翔(せな はなと)→湊が転生したキャラの幼馴染
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