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授業中。
黒板にチョークが当たる音が、やけに響く。
カツ、カツ、カツーー
……落ち着かねえ
頬杖をつきながら、ぼんやり前を見る。
教師が何か説明しているけど、ほとんど頭に入ってこない。
当たり前だ。
それどころじゃない。
なんなんだよ、これ……
さっきからずっと考えてる。
ここがどこなのか。
さっきの教室。廊下。窓の外。
全部、“知ってる”。
でもそれはーー
俺が描いたから知ってるんだろ
ペン先でノートをなぞる。
カリ、と乾いた音。
でも、それにしても一致しすぎてる
ただ似てるとかじゃない。
完全に同じだ。
「……朝霧」
びくっと肩が跳ねる。
「聞いてるのか」
顔を上げると、教師と目が合った。
「あ、すみません」
反射的に答える。
教室に小さく笑いが起きる。
うわ、やらかした……
「じゃあ今の問題、答えてみろ」
「え?」
無理無理無理!聞いてねえ!
焦って黒板を見る。
そこに書かれている問題を見た瞬間ーー
口が勝手に動いた。
「……えっと、答えはCです」
一瞬の静寂。
「正解だ」
教師が頷く。
ざわっと教室が揺れる。
「おー、やるじゃん」
後ろから瀬名の声。
でもーー
……なんで分かった?
自分が一番わからない。
いや、違う
思い出す。
このシーン。
この授業、この問題。
ネームで描いた。
「……はは」
乾いた笑いが漏れる。
まじかよ……
休み時間。
机に突っ伏しながら、考える。
さっきの、完全に一致してた
偶然じゃない。
そう思った瞬間、ぞわっとする。
じゃあ、このあと……
顔を上げる。
教室のドアに目を向ける。
確か、ここでーー
ガラッ
タイミングぴったりにドアが開く。
「失礼します」
静かな声。
空気が一瞬で変わる。
……出た
教室に入ってきたのは、長身の男子生徒。
整った顔立ち。無駄のない動き。
視線が自然と集まる。
神代……
名前が浮かぶ。
この物語の“中心”にいる存在。
本来なら、ここから別の人物と関わっていくはずの――
あれ?
違和感。
こんな席だったっけ
神代はまっすぐ歩いてくる。
そしてーー
なぜか、湊の前で止まった。
「……なに見てる」
低い声。
は?
心臓が跳ねる。
いやいやいやいや
ここ、お前が来る位置じゃないだろ!?
「いや、別に……」
慌てて目を逸らす。
でも、視線が刺さる。
じっと見られている。
なんでこっち見てんの
おかしいだろ、これ……
やっと神代が離れる。
自分の席へ向かう。
でもーー
今の、完全に違った
ネームにはなかった動き。
描いてない行動。
『……ズレてる』
その言葉が、頭の中に落ちる。
放課後。
人が少なくなった教室で、ひとり座る。
窓の外は、夕焼け。
赤い光が差し込む。
確認しないと
深く息を吐く。
そして、思い出す。
この後の展開。
確か、この時間……
カバンを持って、廊下に出る。
階段を降りて、曲がってーー
その先。
ここで、あの二人が会うはず
物陰に身を隠す。
自分でも何してるのか分からない。
でも、確かめたかった。
本当に一致するのか。
それともーー
足音。
二人分。
近づいてくる。
来た……
息を止める。
視線の先。
現れたのはーー
……違う
そこにいたのは、確かに“そのキャラ”だった。
でも。
隣にいるはずの人物が、いない。
代わりにーー
「……なんで、お前がここにいる」
低い声。
顔を上げる。
神代が、こっちを見ていた。
は?
いやいやいやいや
完全に違うんだけど!?
本来ならここで始まるはずの出会いが、
成立していない。
代わりに、成立しているのはーー
自分と、神代の対面。
「……なにしてる」
近づいてくる。
逃げられない。
「いや、その……」
言葉が出ない。
頭が真っ白になる。
違う
これ、もうーー
一歩、後ずさる。
俺が知ってる展開じゃない
心臓がうるさい。
俺の描いた物語じゃない
そこで、ようやく確信する。
『……変わってる』
小さく呟く。
「……なんでだよ」
答えるやつなんていないのに。
でも、その問いはーー
確実に、この世界の核心に触れていた。
〈登場人物紹介〉
神代 恒一(かみしろ こういち)→湊が描いていた漫画の主人公と付き合う予定だったキャラ