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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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古流斬
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なんとなく晴れ間がもやもやしている空を見上げて、 家に帰るまでにアイスでも買おうかとコンビニまで歩いていた。
「我が子を返して下さい。
生命はそんなに軽く扱っていいものではない。
国は生命を軽く見過ぎている。失ったものは2度とは帰らない。死を等しく平等になんて間違えている。そんなもの尊厳でもなんでもない。今すぐ遺伝子を元に戻すべきだ。」
「生命に重みを」と赤い文字で書かれたプラカードを持った50代くらいのおじさんが街頭演説車の上に乗って演説している。斜め後ろにはハンカチ片手に涙を堪えている様子の50代の女性がいる。
反アポトーシス派のデモ隊だ。
「息子は自分の意志なんかで死んだのではない。国だ。国と人に殺されたのだ。政府が遺伝子組み換えなど行わなければ、息子は死ぬことなどなかった。まだ、32歳だったのに。人生はこれからだったのに。今すぐ遺伝子を元に戻せ。」
おじさんの掛け声と共に下に集まっていた「生命を返せ」「国は人殺し」など大小さまざまなプラカードを持った人が一斉に「元に戻せ」と復唱した。
尊厳死法が施行されてから時折デモ隊に遭遇することは有ったが、なんとなく風景のように眺めては素通りすることが多く演説など気にも止めてなかったのに、 俺は思わず立ち止まってしまった。
我が子というから幼い子かと思っていたが、
自分とそんなに歳の変わらないくらいの息子が尊厳死したのか。
ゆっくり演説車のほうに近づいていくと
さきほど演説していたおじさんが、くたびれたタオルで汗を拭きながら車から降りてきた。おじさんに代わって違うおじさんが演説を続けている。
普段俺は人に自分から話しかけようとは思わないタイプだが、何故か声をかけてしまった。
「あの、すみません。息子さん、その、ご自分で」
自分から積極的に話しかけることが少なかったのでなんとも歯切れの悪い感じになってしまった。
おじさんは俺を一瞥すると、
「いいや、息子は自分でなんかじゃない。国だ。国があんな馬鹿な法を施行しなければ。息子はまだ生きていたはずだ。…君は息子くらいの歳頃だね。」
そう言ってほんの少しおじさんの顔が泣きそうになった。
俺はどうしていいかわからずに、でも抑えきれずに聞いてしまった。
「その、なんていうか、その、聞き辛いのですが、息子さんは、その、なんで尊厳死をしたのだと思いますか。」
おじさんは俺の目を見据えて、
「だからあれは尊厳死などではない。
…たしかに息子は、同世代の他の子よりも大人しく、動作もゆったりとしていて、1人で遊ぶのが好きな子だった。大勢の人と話すことがあまり得意ではないけれど、それでもゆっくり会話するのはできるんだ。
中学の時に学校の部活動に絶対入部しなくてはいけなくて、当時大人しかった息子はクラスの子に押し切られるようにバスケ部に入部した。でもそんなにチームで動くことを得意としていない息子は次第に馴染めなくなって、雑用係として、イジメを受けてしまっていたようだ。
ある日身体中にあざを作って帰ってきた息子は異常は消えろって言われたけど、消えれなかった。ごめんなさい。そう呟いて、 それからはずっと部屋にこもってしまった。
何をするでもなく息子は部屋でただ過ごしていた。時折話はするものの、外に連れ出そうとすると異様に泣きじゃくって震えて、部屋に戻るからどうしようもなかった。
学校側にイジメ被害について訴えても息子さんに直接伺った時には何も返答がなかったから証拠がないとの一点張りだった。
息子は極度に緊張すると何も言えなくなってしまう子なんだと訴えたが聞く耳を持ってもらえなかった。
私は傷を癒すには 時間が解決するだろうと思っていた、でも16年経っても息子は変わらなかった。
家内も私も頭を悩ませたよ。育て方を間違えたのか、働けない状態の息子をどこまで育てあげるべきなのか、俺が居なくなったあとどうしてあげるべきなのか。
そんな時に尊厳法が施行された。 息子はその辺りから変わり始めた。
お父さん中学の同窓会があるから行ってくるって急に言いだした。
私はそんなもの無理して行かなくていい。むしろ行くんじゃないと止めたんだ。
だけど息子は珍しくどうしても行きたいんだ、当時の同級生みんなが謝りたいって言ってくれてるって微かに笑いながら。久しぶりに息子が外に出たいと楽しそうに言うものだから不安はあれど会場まで見送った。
…その会場で息子は死んだ。
当時イジメていた主犯格の子に壇上に登らされてみんなの視線が集まる中、
何も成長していない、
お前は異常で社会のゴミだから居なくなるべきだ謝罪しろと言われたそうだ。
誰1人止めやしなかったし、みんな謝罪を煽ったそうだ。
壇上に登らされた息子の最期の言葉は、あぁ、16年前の消えたかったあの日と一緒だ。でも今日は、ちゃんと消えれる、今は不思議とあんまり怖くないな。これが救いなんだね。… アポトーシス。
…そう言ったらしい。
その後の同級生達は動画をネットにあげて笑い物にし、息子は壇上の隅に追いやって、普通に同窓会を続けた。」
おじさんの顔は話していくうちにどんどん赤く膨れてきて、今にも爆発してしまうのではないかと思った。怒りがおじさんの膨れ上がる血管を通して俺にも流れ込んできた。
「私は国に殺人罪を適用してくれと訴えた。イジメの主犯格の子達に罪の意識を持たせて欲しいと。
でも国の返答はあのAI機械とまったく同じだった。
あくまで自由意志だったから息子は死んだんだと。あのまま壇上の隅に追いやられて。
遺書なのかはわからないが部屋のノートの切れ端に僕は人と上手く話すことができない、異常な人間です。ずっと死にたいと思っていた。
でも、怖くてできなくて、 お父さんとお母さんを悲しませるだけの存在の僕がやっと救われます。だからどうかもう悲しまないで下さい。
そう書かれていたよ。
私は確かに悲しめなかった。ただ虚しさに押し潰されそうだったし、微かにホッとしてしまった自分もいた。でも息子のために代わりに怒ってやらなきゃいけない、そう思った。
いったい、 救いとはなんなんだ。本当に息子は救われたのか。この法が施行されてから若者は余計に死に慣れすぎてしまっている。恐れもしない。だから、 息子の死は結果的に誰の心も動かさないものになってしまった。ただ、ただ息子は死んだ。 生命は、息子は、そんなに軽いものではない。
私はこの法を施行した国を絶対に許さない。」
話終えたおじさんは急に空気の抜けた風船のように、うなだれた。絶対に許さないという強いはずの思いも虚しく空気のように抜けていった。
俺はどう言葉にしていいのかわからず、会釈をしてその場から離れた。
コメント
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ああ、このエピソード…胸がぎゅっとなりました。おじさんが語る息子さんの話、特に「16年前の消えたかったあの日と一緒だ。でも今日は、ちゃんと消えれる」っていう最後の言葉が、本当に重くてやりきれなかったです。いじめの構造と社会の無関心、そして「尊厳死」という制度が、どうしてこんな形で人の命を軽くしてしまうんだろうって考えさせられました。おじさんの怒りと虚しさがまっすぐ伝わってきて、読後もしばらく動けませんでした。続きが気になります…。