テラーノベル
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誰かに追われているかのように逃げるようフラフラした後、俺はラブホテルに入りデリヘル嬢を呼んだ。
どこにも感情の行くあてがない時に俺は風俗を利用する。こんな生活だから頻繁には使えないのだけれど、 不思議となんでも話していいような、ほんの少し日常から離れた感覚になれる空間が気楽で好きだ。
何回か呼んだことのある風俗嬢がきて、一緒にシャワーを浴びてベッドに座る。
「ごめんなんだけど、今日はこれでお願いできないかな。」
俺はテーブルに置かれた通常の料金の上にさらに2万円を重ねた。
嬢は一瞬考えて、でもなんでもなかったようにその札をカバンにしまった。
「まぁいいけど。 君がそんなこと言ってくるの珍しいね。 なんか、嫌なことでもあった。」
嬢は俺の隣に座り、太ももに置いてある俺の手に手を重ねて置いてくる。
本来なら手間暇かけて深い関係を築かないとできない行為の時間を金で買う、後腐れない気楽な関係、それが妙に今の俺には必要だった。
「いや、嫌なことはないんだけどさ」
俺は何回か会ったことのあるだけの風俗嬢の
ホテルの薄黄色い照明に照らされた白い肌にじんわりキスをして、ほんの少し色が変わるのを見てわずかに俺が今ここに居ることを確認する。
嬢は演技なのかわからないくらいには、吐息を漏らしてくれる。微かに濡れた嬢に少しホッとしながら、ベッドの側に嬢が置いたであろうローションを手にとって嬢の秘部に垂らしてあげる。そして、 自分の気持ちいいように腰ゆっくりとあてがう。
嬢は俺の動きに合わせて身体をくねらせ吐息を少しずつ大きくする。もちろん嬢はこちらなど見ていない。それでも嬢の身体がほんの微かに湿度を帯びてきたのを、全身で感じるために加減しながら嬢を抱き締める。ヌルヌルと摩擦をなくしてくれるはずのローションが嬢と俺の間で起こる摩擦で泡立っていく音と耳元で漏れる嬢の吐息にだけに没頭しながらひたすらに腰を打ちつける。
気持ち良さと心地良さの波がきて、俺はわがままに気持ち良さだけに没頭する。嬢の喘ぎ声が耳元で次第に大きくなると同時にローションの白い泡でぐちゃぐちゃになった嬢の秘部に
俺はぐちゃぐちゃな自分の感情を解き放った。後頭部がビリビリと痺れて真っ白になる。このほんの一瞬だけ俺は世界の何もかも忘れていられる。
一回目のプレイで重だるく疲れ切った頭をなんとか起こしておくために、なんとなくさっき聞いたおじさんの話を嬢に話してしまっていた。
「ふーん、救いだって言ったんでしょ?本人が。だったら本当に救いなんじゃない。」
嬢はタバコの煙を吐き出しながら、言った。
「そうなのかなぁ。」
「私はこの法案嫌いじゃないけど。」
「えっ。そうなの。」
思いがけない言葉にほんの少し声が裏返ってしまった。そんな俺に少しだけ気を緩めたのか嬢が身体ごとをこちらに向けてくる。
「まぁ、この仕事って良くも悪くも人のエゴに触れちゃうからさ。良く言われるんだよ、救ってあげたい。とか、人生が良くなるように応援してる。とか。
まぁ、お客さんなりの優しさなんだろうなぁとは思ってはいるけど、私はいつもその言葉を聞くたびに惨めになってた。」
嬢は俺の頬にそっと触れて、ひと撫ですると、すぐに手を自分の髪の毛に持って行った。
「惨め?」
「だってそうでしょ。救いたいってことはお前は悪いところにいるって言われてるみたいで。でも、そう言うお客さんに限って、無理矢理本番をしたがったり、中出ししてきたりしてさ。救いってなんなんだろうって思ってたよ。まぁ、お金をもらって確かに私は救われるから抱かれるんだけどね。私は選べやしないし。」
俺は嬢の二の腕を撫でながら、あぁ今日はもう2回目をお願いするのはやめておこうと思った。ただ、嬢の話を聞いてみる日になりそうだなと雑に被せていた布団を微かに掛け直した。
「お客さんが言ういわゆる“普通”の仕事も、自分なりに頑張ってはみたこともあるんだよ。仕事はそれなりに、自分なりには頑張ってやってて。
mogyumogyuGemi
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古流斬
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でもどこからか風俗嬢として働いたことがバラされたり、影で噂になって、職場で声かけられたり。仕事じゃないとこで、指摘される時間のほうが増えた。気にしない。今の私は悪いことなんてしてないんだからって、たぶん自分が1番思えなかったんだろうね。どんどん抗えば抗うほど自分は普通じゃないんだって自分で認めることになって余計に惨めに思えて、じゃあ異常が普通のままでいれるこの夜の仕事のほうがよっぽど私にとっては救いじゃんって思ったよ。選べる立場に居ないんだよ。」
タバコの火を灰皿に押し付けて消して、嬢は再び俺 のほうに身体ごと向き直して言った。
「でも尊厳死法は違うじゃん。消えたいと本人が選んだ時に消えれるの。自分でちゃんと決められる。今もこの仕事きついなぁって思うことはあるけど、まぁいつでも自分で選んで消えれるならまだ生きれるのかもって思えた。自分で選んでるから選ばされてる訳じゃないというか。
その男の子の死んだ後日談を知ってるのは生きてる側の人間で、可哀想なんて思うのも生きている側の人間で、でもその子自身は消えたいほど恥ずかしい場面から即座に消えれたんだから救いだったでしょ。16年も消えたいと思い続けてこれからも思いつづけるよりは。」
「まぁ、確かにそう言われてみればそうだけど。でもなんかもっと復讐になる方法とかさ、結局のところイジメっ子には何も響いてない訳で。」
不本意というか、救われないというか、犬死にとはまさにこのことをいうのではないかと俺は思っていた。 嬢はそんな俺に不思議そうに言った。
「復讐、したかった訳じゃないと思うけどなぁ。
ま、これも本人にしかわからないけど。」
そろそろシャワー浴びる?と言って、嬢は返答も待たずに勝手にベッドから出て行った。
俺は重だるくも軽くもなった身体を起こして、
言われるがまま嬢の後ろについて行って、されるがまま身体を洗ってもらった。
復讐でもない、 尊厳死法がただ救いだと思う人もいるのか。そんなことをぼんやり考えながら、シャワーのお湯で上から温まった分、足先だけがほんのり冷たく感じた。
コメント
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ふみさん、第3話読ませていただきました。 風俗嬢と主人公が「救い」について交わす会話がすごく印象的でした。特に「自分で選んで消えれるならまだ生きれる」っていう彼女の言葉、重かったです…。お互いがお互いを“選べない立場”として生きているからこそ、あの空間でだけ素の言葉が交わせるんだなと。 ラストの「足先だけが冷たい」っていう温度感が、なんとも言えない読後感を残してくれました。続きも楽しみにしています🌷