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「やはり帰った方がいいのでは……。顔色が赤くなったり青くなったりしているように見えるが」
やぁーもう私ってば、そんなに顔に出てたなんて〜。
「えーっと……」と、どう反応すべきかを困って、胸にパンフ入りのカバンを抱える。
「カバンを持ったと言うことは、帰るのか?」
無言でふるふると首を振りつつ、ここは個室だしどうにかパンフレットを出せたりしないかな……と、頭を巡らす。
いつまでも悩んでばかりいてもと、ままよとばかりにカバンの中に手を突っ込み封筒を掴んだところで、
「では、行こうか」
と、彼が席を立とうとした。
「あっ、待ってください!」
とっさに引き留めようと椅子を立ち上がりかけた拍子に、膝からカバンが転げ落ちて、中身がぶちまけられた。
床に当たった反動で、取り出そうとしていた封筒から、ブライダルフェアのパンフレットが飛び出す。
真っ赤になって拾おうとすると、「これは?」と、私より先に彼が拾い上げた。
「え、えーっと……、それは……」
もはや逃げ場もなく目が泳ぐ、私──。
「うん? ブライダル……?」
一方の彼は、それが何なのか気づいたようだった。
「ああいえ、その……」
これじゃあ、絶対に急かしてるみたいじゃない……。もう〜お父さんのせいでー……。
頭のてっぺんから湯気でも出そうになり、赤くのぼせ上がった顔をうつむかせていると、
「ブライダルフェアか、行ってみようか」
私の気がかりなど微塵も気にはしていない風で、彼がそう口を開いた。
「えっ、今行ってみようかって……?」
あ然として聞き返した私に、
「ああ、そう言ったが」
と、彼がこともなげに頷いた。