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「あぁーーーー、もうっ!!!!」
静寂を破るしゅんの大きな叫び声と共に、張り詰めていた空気が一気に弾けた。
と同時に、僕の身体は彼の強くて逞しい腕によって、壊れ物を引き寄せるように強く、強く抱きしめられた。
突然のことに、僕の口からは間抜けな声が零れ落ちる。
「!!! んぇ?? なに!?」
「もう……じゅう……っ」
消え入りそうな、泣き出しそうな彼の声。
僕の背中に回された手のひらに、ぐっと、骨がきしむほどの熱い力が込められていく。
「な、なに!? どうしたの……っ」
「もう、いやや。俺のそばにおってや……他の奴のところに行かんといてや……」
「……え?」
「俺じゃ、頼りない……?」
「……いや、そんなことないよ」
「……じゅうは、俺じゃなくて…はやちゃんが良いん……?」
……ん?
はやちゃん?
急に飛び出してきた名前に、僕は一瞬、頭の処理が追いつかなくて話が読めなかった。
「……なんで、ここで急にはやちゃんが出てくるの?」
「俺じゃ、だめなん……?」
「いや、だからなんで!? どういうこと!?」
「だって……っ」
しゅんは僕の肩に顔を埋めたまま、押し殺したような声で言葉を続けた。
「俺、何やってたんやろうって……。じゅうがあんなに、地獄みたいなところでひとりで苦しんでたっていうのに、俺はなんもできんかった……」
「いや、それは高校卒業して以来ずっと会ってなかったんだし、知らなくて当然だし、仕方のないことだろ?」
「そうなんやけど……そうじゃないやん……っ」
「うーん……」
そんなことを言われたって、もうそういう運命だったんだから仕方ないではないか。
でも、しゅんが眉をひそめて黙り込んでいた理由が、僕を拒絶するためではなく、僕を救えなかった自分への怒りと、はやちゃんへの嫉妬だったのだと理解して、胸の奥がじんわりと熱くなる。
それなら、……今なら、一番怖かった“あの質問”を、彼にぶつけてもいいのかもしれない。
「しゅんは……俺の過去、聞いてさ……俺のこと、どう思った?」
ふたりの運命の核心を突く質問を、僕は静かに投げかけてみた。
「俺に気を使わないで、しゅん。舜太が今、思ったままのことを教えてほしいんだよね……」
しゅんは一度、僕の肩から顔を離して俯いた。
それから、意を決したように顔を上げ、涙を湛えた瞳で僕の顔を真っ直ぐに見つめてきた。
「自分が、めちゃくちゃ憎いんよ。高校のころ、あの屋上でじゅうに救われてから、俺はじゅうのことずっと忘れられんでいたんさ。ずーっと、世界一好きだった。なのに……じゅうがそんなに苦しんでる時、俺はなんも知らんと、のうのうと生きていた。ほんま情けないわ。あの時俺がそばにいられたら、俺がこの手で助けられたのに……。でも、それも今更どうしようもないって、そんなん分かってる……っ」
「……しゅん……」
「やから! これからは絶対に俺が守る。じゅうのこれからの毎日が、幸せなことだけ、楽しいことだけで溢れるように、俺が……俺の命に代えてでも、じゅうをすべてから守りたいって、心から思ったんよ」
一文字一文字に血が通うような、しゅんの熱い思い。
嬉しくて胸が震える。
でも、だからこそ、僕は自分のなかに燻る最後の呪いを、言葉にして吐き出すしかなかった。
「……僕のこと、汚いとか、……そういう風に思わないの?」
男のくせに散々汚されてきた僕を…。
「思うわけないやろ!!!!」
しゅんの声が、部屋中に響き渡るほど激しく轟いた。
あまりの気迫に、僕はハッと顔を上げて彼の顔を見つめる。
彼もまた、僕から一瞬たりとも目を逸らさない。
その表情は、僕の過去の穢れをすべて消し去ってしまうほどに、あまりにも優しくて、温かくて――。
「な、なんで……? なんでそうやって言い切れるの?」
「なんでって……じゅうは、まず心が誰よりも綺麗やろ? それに……」
しゅんは僕の頬を両手で優しく包み込み、宝物を愛おしむようにその親指で肌を撫ぜた。
「それに、俺にはどうしようもなく美しく見えるんさ。じゅうの全てが。……俺なんかが触れるのも、烏滸がましいくらいに、綺麗で、尊いんよ」
「……どうしてそんな風に思えるの?」
「そんなん好きやからやん。じゅうの過去も、傷も、不器用なところも、全部まるっと愛してるから。理由なんて、それ以外に何もないわ」
……。
僕は何も言えなくなって、ただ、彼の宇宙のように深い目を見つめ返すことしかできなかった。
しゅんはトドメを刺すように、僕の耳元に顔を寄せ、熱い吐息と共に、極上の愛を次から次へと紡いでいく。
「じゅうは、俺の全てや」
「じゅうの全てが、どうしようもなく愛おしいんさ」
「…愛してる」
「世界で一番、誰よりも」
「も、もぅ……っ! もうわかったから……っ!!///」
心臓のバクバクが限界突破して、頭のてっぺんから火が出そうだった。
これ以上聞いたら本当に脳みそが融けてしまう。
僕はしゅんの手を振り払うようにして、両手で自分の真っ赤に染まった顔を、大慌てで覆い隠した。
to be continued…….
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