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サンフラワー
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くじら島を離れて、街へ向かって移動している最中。乗り込んだ列車の座席は、思っていたより狭かった。
「うわ、ぎゅうぎゅうだなあ…」
ゴンがそう言いながら空いている席に腰を下ろすと、お互いの肩と肩が触れ合った。一瞬だけ体を強張らせたが、何も言わなかった。
「まあ、すぐ着くし!到着いつだっけ?」
「そうだな、
あと数分すれば着くだろ」
ゴンは気にした様子もなく笑って、窓の外を眺め始める。そのうち、列車の揺れに合わせるように体重が少しずつこちらに寄ってきた。
「おい」
呼びかける前に、ゴンの頭がオレの肩に軽く当たって、寄りかかる。
「寝るなよ」
そう言ったはずなのに、ゴンはすでに眠っていた。呼吸は規則正しく、いくらなんでも無防備すぎるほどだ。
(ったく、ちくしょう… 動けねー…)
視線を逸らし、じっと前を向く。肩に伝わる体温が、やけに意識に残る。列車がガタガタと揺れる度、 オレの肩から何度か、カクンッと頭が落ちそうになる。ゴンの手が、無意識にオレの服の裾を掴んだ。引き剥がすこともできた。だけど不思議とイヤじゃなかった。
(これ、オレだけが意識してんだろ)
とっくに分かってる。分かってるのに、胸の奥が勝手に重くなる。なぜだか情けなくて、妙に落ち着かない。こんなのはうんざりだ。列車に乗っている間、別のことを考えようと窓の外を眺めて、気を紛らわせた。列車が駅に着くと、ゴンはパッと目を覚ました。
「わあっ、もう着いた!?」
肩から離れ、裾を掴んでいた手も離れる。
「よし、行こ!」
何事もなかったように立ち上がる背中を見て、小さく息を吐いた。肩の力が抜けてやっと、ほっと一安心したような、やりきれないような。
(……いつも通り、か)
*街に着くと、 ゴンは相変わらずだった。*見ず知らずの人とも、店の人とも、すぐに打ち解ける。その隣でオレは少しだけ距離を取って歩いていた。
「キルア、こっち!」
人混みの中で、ゴンがこちらへ振り返る。次の瞬間、手首を掴まれた。そして手から指へと移動させる。
「はぐれちゃうよ」
当たり前みたいな顔で言う。
「バカっ、やめろよ…離せ」
「え?でも人多いし…」
「いや…いいって、ガキじゃねーし」
「照れてる?」
「っ、うっせー!文句あるかよ!」
恥ずかしさでバツが悪くなってすぐに腕を振り払おうとした。しかし、ゴンは掴んだ手を離そうとしなかった。少しの間だけ、沈黙が流れる。
「ほら、行こ!」
「おわっ、ゴン!引っ張んな!あぶねーだろ!」
「えへへ」
いきなりグイッと腕を引っ張られる。オレはズンズンと進んで行くゴンの歩く速度に、歩幅を合わせるので精一杯だった。結局、掴まれたまま。
昼食。たまたま店の前を通りかかっただけのレストランに入って、ウェイトレスにメニューを出されてから順番に注文した。食事のときも同じだった。ゴンは平然として、自分の皿を差し出してくる。
「これ半分こしよ?」
「いらねー」
「えー、おいしいのに。あ、見て。これも食べたい!でも全部食べきれるかなぁ」
「自分で食えよ」
迷わず断ると少し残念そうな顔をしてしょぼくれていた。
「あー…まあ…ちょっとなら食ってやってもいいぜ」
「ほんと?じゃあ、はいどーぞ!」
「ぶっ!げほっ、げほっ!ごほっ!」
「?」
(…なんの真似だよッ……!!!)
そこまでいうなら、 と思ったら今度はフォークを直接、オレの口元まで運んで渡してきた。唐突な出来事に思わず派手にむせてしまった。ゴンはキョトンとした顔を向けて、大丈夫?と首を傾げている。こいつ、全くもって無自覚だ。頓着なのか、鈍感なのか。
「ちょっと、早くしてくれないと落っこちちゃうよ〜?」
「ん」
「美味しい?」
「まあまあ」
「なにそれ」
…ゴンにとってはこんなこと、全然大した事じゃない。
(そういうところが余計ムカつく。 誰にでもこうなのかよ)
昼間に話していた奴らの顔が頭に浮かぶ。きっと、あいつにも同じように笑って、同じ距離で。いつしか、そう思うようになっていた。